2025/05/02 11:00

ヴォーカルのTakassy(タカシ/souljuice)・HIDEKiSM(ヒデキズム)、ダンサーのKamus(カミュ)のオネエ3人が繰り広げる総合エンターテイメントユニットENVii GABRIELLA(エンヴィ ガブリエラ)、略してエンガブ。
「どんなひとが聴いてもかならず踊れる」をテーマに本格的なダンス・ミュージックに取り組んだメジャー2ndフルアルバム『ENGABALL(エンガボール)』を4/16にリリースし、6/29(日)にZepp Nagoyaでのライブが決定。メンバー全員が11cmのピンヒールで魅せるパフォーマンスはきらびやかで妖艶でかっこよ!
うっとりするほど洗練されたサウンドと、クールでキャッチー、ときにはぷっと笑わせてくれる表情豊かなヴォーカルで楽しませてくれる『ENGABALL』は、時代とともに変わり続ける表現のあり方と向き合い、立ち止まり、だれかの痛みに寄り添いながらたどり着いた。アルバム制作過程やライブについて、リーダーのTakassyにインタビュー。
HIDEKiSMのヴォーカル、
最後にKamusのパフォーマンスが加わって
メンバー全員が共感できる1曲に仕上がる
――アルバム『ENGABALL』に込めた想いを聞かせてください
昨年5月にリリースしたミニアルバム『DVORAKKIA(ドヴォルザキア)』はマニアックなジャンルも入れて自由に作らせてもらっちゃったアルバムで、「好きなひとは好きになるだろう」っていう大衆向けではない感じのコンセプチュアルな作品だったから、次はどんなひとが聴いてもかならず踊れる曲が入ってる、自然にからだが動くものにしようって。最初はダンスをテーマにしたイージーリスニングを目指してた。家で聴いて自然にからだが動くみたいなイメージ。
――YouTube『スナックENVii GABRIELLA』で、制作途中で負のループにおちいってしまったようなことをおっしゃっていましたが……
一昔前だったら歌詞にあげ足を取ることってなかったと思うんです。アーティストが発信するメッセージに対して社会性とイコールにはしないというか。今ってちょっとした発言や歌詞、もっといえばMVのワンシーンを切り取って「これは失礼だ」「すごく傷つくひとがいる」「差別だ」って言われる。わたしが歌詞を書くとき、イメージというよりは実体験だったり、そのとき自分が思っていること感じていることをのせることが多い中で、1曲目に収録した「Love is Always Light of My Life」がかなり難航して。最終的には近しいひとや友だちへの純粋な愛がテーマになってるけど、はじめは親の愛はだれでも知ってるものだ……みたいなことを書こうとしたんです。決してだれかを悲しませるつもりで作ってるわけじゃないのに、「親がいないひとが聴いたら傷つくのかな」とか「みんながみんなそうでもないよね」って思うとドツボにはまっちゃった時期があって。多分、昔だったらさらっと書いてたと思う。
――「Love is Always Light of My Life」は数十回くらい書き直したそうで
YouTubeチャンネルの配信や、これまでリリースしたリード曲にキャッチーなテイストが多いこともあって、小さいお子さんとお母さんとか、ご家族で応援してくださる方が全国に増えて、うれしい反面「この歌詞を子どもたちが聴いたらどうなるんだろう」って意識しはじめちゃって。それを考えはじめたらきりがないんですけど……最終的に考えるのをやめたんですけどね。
――歌詞はぜったいご自身で書く?
歌詞が自分じゃないとカヴァー曲を歌ってる感覚になっちゃう、経験上どうしても。メンバーが3人とも「この歌詞すごいいいね」ってなっても。自分の歌詞がいちばんすばらしいと思ってるわけでもなくて、さっき少し話したように、わたしが思っていることや、メンバーと長くいっしょに過ごしてきた中で3人が「そうだよね」って感じたことをもとに作った曲を、HIDEKiSM(ヒデキズム)のヴォーカル、最後にKamus(カミュ)のパフォーマンスが加わってメンバー全員が共感できる1曲に仕上がるから、もし、だれかに歌詞をお願いすることになっても3人の話を聞きながら書いてもらうことになる。それだったら自分で書いたほうが早くね?っていう感じなので、今後もわたしが書くと思います。
――サブスクで音楽を聴くことが主流になって、歌詞を見ないひとがほとんど。こんなにも苦労して作ったのに心がすさみませんか
以前から歌詞については質問されない限りあまり説明しないんです。説明しちゃうと歌詞がその意味しか持たなくなる。聴いたひとが受け取って感じたものが正解であってほしいから、「歌詞はよくわかんないけど曲が好き」って言われてもぜんぜんいやな気しない。アートもそうだけど、作者のエゴを押しつけるものではないので、そこにお金を払いたいか払いたくないか、聴きたいか聴きたくないか。「こういうシチュエーションで聴いてください」みたいなことは言いたくないなって。
――「誕生誕生Birthday」はMVやダンスが楽しいHAPPYな曲だけど、聴きながら号泣しました。ほんとうは祝ってもらいたいのに「年齢的に誕生日にこだわるってどうよ」的な感じで、ドライにふるまっていたことに気づいて
まさにそう思われてる方々に届けるための曲で、わたしも誕生日に限らず、記念日やお祝いごと、クリスマスとかお正月とかぜんぜん興味ない。だけどHIDEKiSMはどんどんアピールしていくタイプで、「わたし今月誕生日」「今週誕生日」「今日誕生日」「先週誕生日」「先月誕生日」みたいな永遠に誕生日でもっていくマインドなんですよ。それを間近で見ていて自分の気持ちを深掘りすると「やっぱり誕生日って内心浮かれてるよな」って。それでも当日に誕生日アピールはしないし、言われたら「あ、忘れてた」って言うけど、どんなに年齢重ねても「今日は誕生日なんだよな」っていうのはどこかにあるから、そこを発散させるのがテーマのひとつではありました。
――自分で自分を祝うシチュエーションも好き。誕生日の定番曲になりますね
そうなってくれたらうれしいです。テレビでは♪Happy Birthday to You〜かスティーヴィー・ワンダーの「ハッピー・バースデイ」が流れることが多いけど、キャッチーな「誕生誕生Birthday」を新たに使ってくれるんじゃね?みたいなのがちょっと見え隠れしてます。
――7曲目の「Divalicious(ディバリシャス)」は造語?
そうです。Diva(ディーバ)はスラングで使われることが多くって、高飛車なひと、プライドを持ってる女性、どっちの意味にもとれる。「あのひとちょっとDiva気質だよね」だと、わがままとか俺様的な意味で悪口っぽくなるし、純粋に「Divaだよね」って言うと気高かったり、洗練されてる感じ。どっちかっていうと洗練されてる、芯が1本とおったひとをイメージして作りました。
「それで売れなかったらいっしょにやってる意味ないし、
インディーズのときと変わらない」
――少し話しがずれますが、曲ごとにこだわったらきりがない制作過程で、最終的に納得して完成を決断するポイントってありますか
そこに関してはアレンジを担当してくれたCarlos K.(カルロス・ケー)さんがいてくれてよかったです。アレンジをおまかせすることとは別に、第三者の感覚や客観的な意見が入ることがすごい重要かなと思っていて。わたしがもっと「こうしたい」「ああしたい」って突き詰めたら止まらないし終わりがないから、第一線でご活躍されているカルロスさんが「もう完成でいいと思いますよ」「これがかっこいいですよ」っていい感じに打ち止めてくれる。
――アレンジャーさんにゆだねることで、自分では考えつかなかったミラクルに出合うのは楽しい?
表裏一体って感じがします。物理的に楽なのはすごくいいし、「おっ!」ていうおどろきもあるんですよ、「そういうふうにアレンジしなおしてくれたか!」って。それが大衆性だったりキャッチーさであるならば、正解なんだと思ってる。まずは売れるところにたどり着かないと意味がないので。わたしとHIDEKiSMはインディーズでさんざん好きなことをやってきて売れなかった時代を経てきた上で、「売れるために3人でやろう」ってENVii GABRIELLAを結成して、キングレコードさんと契約できて、うちの事務所があって、三者間で「がんばっていこう!」ってなってるところで最終的なそのエゴってすごくじゃまだしいらないなって割り切れてる。それで売れなかったらいっしょにやってる意味ないし、インディーズのときと変わらない。すごくいい意味での割り切りです。それにしてもこだわりが強すぎて衝突したりするんですけどね。今きれいに言い過ぎたなと思って修正しちゃった。いまだにわがまま言ってま〜す!
――「サイコダンス」も最初はしっくりこなかったそうで
そうです。カルロスさんからたくさんいただいたデモに入ってて「エンガブさんが歌ったら面白いと思う」っ推してくれた曲だったけど、ハロウィンのイベントでお披露目したときに「なんかこの曲よくなくなったね」ってメンバーで話してて。デモはすごいよかったけど、いい曲なのかも正直わからない感覚になって。事務所の社長とキングレコードのスタッフのみなさんからも「キャッチーだし、やったほうがいいよ」って強く推していただいたけど、アルバムに入れるつもりはなかったんですよね。「この曲をシングルにしましょう」ってなってもアルバムに入れるつもりはなくて。でも、「これ推し曲になるんで」って言われてすぐに「はい!入れます!」みたいな。リリースしてまだ数ヶ月なのにファンのみなさんもすごく気に入っていっしょに踊ってくれて、わたしたちも曲に馴染んで大好きになりました。アルバムに収録したことで締まる役目を果たしてくれてるし、入れてよかったです。
――アルバムはライブを想定して制作されていますか
ゴールがライブだとしたら、ゴールをイメージして曲を作っています。3人のパフォーマンスはこういう感じにして、照明はこういう色にして、こういうセットで、MV撮るんだったらこういう感じでって。3人でやる世界観が頭の中にある状態で作ってみて、「この曲のれなさそう」と思ったらもう使わない。
――レコーディングでの歌いかたの細かいニュアンスはHIDEKiSMさんにおまかせで?
わたしが細かくディレクションしていきます。世界観を共有するために映画をシェアしてふたりに観てもらったりとか。ふたりともアーティスティックで感受性が豊かなので、そうすることで曲に対しての解像度がぜんぜん変わってくる。一発で「あ、わかったこういう感じね」って伝わるので、とても必要なプロセスです。
6/29にZepp Nagoyaでライブ!
「サイコダンス」「誕生誕生Birthday」の振り付けは
各SNSで要チェック!今から練習しよ!
――話しは変わりますが、名古屋のファンの印象を
正直なところENVii GABRIELLAのファンのみなさんはどの地域も等しくすさまじく盛り上がってくれるんですよ。そこに地域性を見いだせないぐらいみんな盛り上がってくれる。だから、はじめて名古屋でライブをしたとき、もう何回もいっしょに楽しんでるかのように盛り上げてくださいました。「SAKAE SP-RING」に出させていただいたり、名古屋はほかの地域よりも来てる回数が多い。ほかの地域とのちがいを敢えて言うならホーム感が強い。回を重ねるごとに。だから、名古屋みなさんがわたしたちを「おかえり!」っていう感覚で1曲目を迎え入れてくれてるのをすごい感じます。
――心を許せる存在なんだと思います
そう言ってもらえるとうれしいです。
――6/29のZepp Nagoyaはどんなライブになりそう?
名古屋はゆかりのある地域のひとつ。今回は大きな会場なので「名古屋こんだけ盛り上がってんぞ!」ってアピールしていただけたらうれしいな。アルバム『ENGABALL』を引っ提げるからにはみんなで踊って盛り上がりたい想いが根底にあるので、巨大なダンスホール、移動式ダンスホールみたいなイメージで全力でみなさんと盛り上がりたい。まずはCDで聴いていただいて、聴いたらライブにぜったい行きたくなると思うので、そのままチケット買って来てください!
――最後にお聞きしたいのですが、時代が変わりはじめているのをみんなが感じている今、ご自身はどう受け止めていますか
それについて書いたのがアルバムの最後、10曲目の「(Life is Always Like a)Ball」。まさにご質問いただいた内容のことを考えたときに作りました。世界から日本を見ても、日本から世界を見ても、今いちばんネガティブな感じだったり、政治のことは置いといたとして、イメージ的に国民全員が希望を持てないというか。「じゃあどうやって生きていこうか」もわからない状態でいる時代かなって。でもそれって、ずっと繰り返されてきたことだと思うんですよね、世界で何度となく。同じことを繰り返してはだれかが傷ついて、ほとぼりが冷めたころに繰り返される……っていう人類の歴史みたいな。「そんな中でも生きていくしかない」っていう開き直り。「だってこの状況になったのはわたしたちのせいじゃなくない?」っていうマインド。もう何十年も前のひとたちのツケをわたしたちが支払わされてるみたいな感覚じゃないですかこの状況って。ってなったときに、「自分ではどうしようもないことに日々悩んで時間をむだにするんだったら、自分の人生好きに生きたほうがいいよね」みたいな。ちょっと言いかた強めだけど、まわりのひとや大きいことを気にしすぎてる気もするので、今の自分の人生にフォーカスして生きていきたいなって。
アルバム『ENGABALL』に収録された「HSP」は無価値観にさいなまれたときの処方箋になる。「(Life is Always Like a)Ball」を聴いているとスーパーモデル気分でまっすぐに前を見据えてランウェイを闊歩(かっぽ)するかっこいい自分になれる。エンガブの3人が履く11cmのピンヒールは、今を堂々と生きることを意図した潔さと美しさの象徴。ライブではピンヒールを身につけているマインドで、いっしょに踊ってバイブス上げてこ。
インタビュー・文/早川ひろみ