2023/09/21 18:00
名古屋を拠点に全国へと羽ばたく手羽先センセーションが、この夏、二大ワンマンのラストを飾った。
ホールならではの多彩な演出で観客を魅了した名古屋市公会堂での『TEBANAKA TO TEBASOTO』〜手羽中編〜。その興奮冷めやらぬなか、9/16に開催されたのが『TEBANAKA TO TEBASOTO』〜手羽外編〜。待ちに待った名古屋城二の丸広場での野外ライブだ。
足先から伸びる影が長くなり、日が傾き始めた午後6時。グッズを買い求めたり、推しの幟の前で記念写真を撮っていたりしていたファンも会場に移動し、迎える準備は整った。二の丸広場に組まれた野外ステージを前に期待値がマックスを超えようとした頃、静かに流れていたSEが大きくなった。
オープニングを飾ったのは手羽センではお馴染みの「ハロー、ブランニューミー」。スモークが噴射された広場の熱気は瞬殺で急上昇し、イントロからテンション爆上がり。前列で飛びまくる人、後方で踊り出す人、みな初っぱなからフルスロットルだ。
ステージに躍り出たメンバーは白いキラキラの衣装をまとい、いつも以上にまぶしい。「全力でかかってこいよ〜!」カワイが煽り、佐山も「夏の集大成、盛り上がっていくぞ〜!」会場を盛り立てる。
休む間もなく、「ウノウクノウカノウサノウ」「ハピピピパーリーナイト」「New stage」など楽しいナンバーを詰め込んだメドレーが始まる。いつの間にか辺りは夜のとばりがおりて、「オイ!オイ!」「ワッショイ!」メンバーと振りを合わせながら叫ぶコールが夜空に染み渡る。右真上にそびえ立つ名古屋城もライトアップされ、華を添えているのも心憎い。
名古屋城野外特設ステージでのライブは一年ぶり。日南遥、佐山すずか、カワイレナ、三好佑季、茉城奈那、現体制になって約2年、よりパワーアップした姿を見せにきた。
「いよいよ始まっちゃいましたよ〜! 1年ぶりに帰って来ました〜!」。進行役はもちろん佐山。自己紹介でそれぞれがこのステージにかける想いを語り、「この夏一番の笑顔で帰ってもらうのが目標」と三好が伝えると、「この一年の中で一番いい思い出にしたいと思っています」と日南。みんな熱いステージを届けようと気合い十分だ。
続くナンバーは今年リリースしたオリジナルアルバム『ハローニューワールド』から「証」。かろやかなステップで踊る彼女たちの前には大量のシャボン玉が宙を舞う。ライトに照らされ七色に光るシャボン玉がパフォーマンスとリンクし、会場の熱気に拍車をかける。そしてメンバーの伸びやかな歌声が発揮される「大好きだから大嫌い」。泥臭くゴリゴリハードな恋愛ソングを情熱的に歌い上げる。ファンとの一体感が加速して、「朝焼けのButterfly」「この空は続いてる」へ。日暮れとともに鮮明に浮かび上がったペンライトが、いっそうの彩りを添える。観衆のなかにはペンライトを振りながら声援を贈る小さな女の子もいて微笑ましい。
夜風が涼しくなってきた頃、「手羽先バンドの皆さん、どうぞ〜」カワイの紹介で手羽先バンドが登場。これは予告どおりで、バンド編成で贈るのは6月のZepp Nagoya以来だ。以前よりお互いの距離が縮まったというだけあり、前回の打ち上げをふり返るトークに仲睦まじさがうかがえる。ギター、ベース、ドラムを従えての1曲目は「夏情気性」。アグレッシブなナンバーでファンの掛け声がさらにヒートアップ。心強い仲間が加わったことで音の重厚感もアップし、楽曲そのものの良さが前面に押し出される。その勢いでノリノリの人気ナンバー「I'm Believer」「ノンフィクション」。まさに夏の締めに相応しい激アツのセトリだ。
そもそも手羽センの楽曲は踊り出したくなるようなキャッチーなナンバーが多い上に、パンチのある三好から丸く温かい日南まで声質の幅が広いのも魅力である。そこに輪をかけて体力の限界ギリギリをいく全力のダンス。茉城のツインテールがぴょんぴょん飛び跳ね、柔軟性のあるカワイのキレもカッコいい。ステージをまとめ上げ、メンバーや観客を刺激するのが曲の合間をつなぐ佐山のMC。得意なことがそれぞれあって、バラバラそうに見えてまとまりがある。絶妙な化学反応によってお互いを引き立てあい、個々が際立つ。
驚くのは今回、名古屋市公会堂の〜手羽中編〜とはまったく違う見せ方で勝負しているということ。コンセプチュアルだった前回のステージワークとは真逆、歌と踊りサウンドでシンプルに構築されているゆえ、あらためてその圧倒的なライブパフォーマンにぐいぐい引き込まれる。多角的なアプローチで攻められるというのは、それだけ引き出しがあるということ。ポテンシャルをぐっと高められたのは、今年たくさんのフェスに参加したのも大きいのではないか。六本木アイドルフェスティバル、@JAM EXPO、アイアラうるトラす、関ヶ原歌姫合戦…。数あるアイドルたちが切磋琢磨するなか、手羽センはしたたかに実力をつけその名を知らしめたはずだ。
「アイドルは夏が一番輝ける季節。今年はザ・アイドルって夏を過ごせた」と佐山。そして三好も「たくさんのフェスに出させてもらって、それは私たちの力だけじゃできなかった」だからその恩返しをしたいと語る。
後半戦は希望に満ちたナンバー「僕と君とポラリス」から疾走。「明日への鼓動」「LEGIT」とラストに向けてアップテンポの曲はまだまだ続き、容赦ないスピードで会場を渦に巻く。「夏、終わりです!」佐山の意味深な前フリのあと歌い上げたのは「夏、エンドロール」。新しい手羽センを見せる楽曲でもあった胸キュンソングで、夏をひとつの恋愛にたとえせつなくエモーショナルだ。
そしてラストを飾るのはメッセージソング「あしたのはなし」。茉城のアカペラで静かに始まり、「ラスト、行くよ〜!」で銀テープがパーン!と放射される。ステージで歌い踊りまくった5人は観客のボルテージをもう一段階高みへと誘う。
彼女たちがステージを去ると、「お前ら、盛り上がってるか〜!」どこからともなくファン同士鼓舞する声が上がる。ステージを創り上げているのは、ここにいるすべての一人ひとりなのだ。彼女たちに届けと激裂な「アンコ〜ル!」「手羽セ〜ン」コールの応酬が漆黒の空を突き抜けるなか、メンバーカラーのTシャツを着て彼女たちが再登場。披露したアンコールは「僕らの未来へ」。新体制手羽センのスタート曲でもあり、歌詞にはメンバーの声が反映され胸に突き刺さる。”全速前進で最大限本気目指す場所まで””強くなりたいと願った””こんな歌があなたの背中を押せたのなら 間違いじゃないと自信を持てる”。前向きなメッセージからは、彼女たちが歩んできた険しい道のりも想像できる。
今までの手羽センの意志を継ぎながらも、さらに進化していく。そんな熱い想いを心に秘め、厳しいレッスンを積み重ねてきた日々。それぞれが憧れていた手羽先センセーションというアイドルグループの一員になり、今は間違いなく憧れられる存在に成長している。きらびやかなステージから受け取ったのは、彼女たちの覚悟かもしれない。
ここに刻まれたかけがえのない時間、ここで見た美しい光景を忘れないよう「手羽外〜」の合図で写真を撮ったあと、来月からの全国ツアーに向けての意気込みと名古屋のファンへの熱い想いを佐山が語り出す。
「名古屋を拠点にしているのに名古屋にいないじゃん。名古屋っぽくないじゃんっていう声を聞くこともありますが、私たちはほんとに名古屋が好きだし、これからも名古屋を大事にしたい。ブレずにやっていくので安心して、信じて待っていてください」
アンコール2曲目は、手羽センにとって特別な曲だという「スターバーストエンパシー」。壮大な歌詞に負けないパワフルなダンスに目が離せない。まさにこうして出会えたのは奇跡のように思える。5人ともが身を乗り出して熱唱している姿は、なにかを訴えているようでもありどこまでも力強い。全身全霊でぶつかってくるから、観ているこちらも本気になるし元気をもらえる。思いっきりジャンプしたり、曲に合わせてペンライトを振ったり、練習してきたコールを叫んだり、ただただ見守るように歌とダンスに酔いしれたり。観客は思いおもいのやり方で宝物のような時間を楽しんだはずだ。
ファンへの感謝を伝え、名残惜しそうにステージをあとにした彼女たち。手羽センの夏が終わった。最後まで全力で駆け抜けた彼女たちのこれからを予感させるライブだった。まだ見ぬ景色に向かって走り出した彼女たちには、また新しい季節が待っている。
(TEXT・深見恵美子)