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「孤独感がすごいなくなって、これがバンドなのかなって思えた」

2020/04/01 17:00


3月18日にニューアルバム「噛む」をリリースした、MOSHIMO。今作はKOGA RECORDS内にプライベートレーベル「Noisy」を設立し、その新レーベルより発売している。MOSHIMOにとって大きな一歩となるこの決断は、メンバー脱退に伴い今後の動向に注目が集まる中で、東京・LIQUIDROOMで行われた全国ツアー「BARI BARI ROCK TOUR 2019-2020」の最終公演で発表された。岩淵紗貴(Vo&Gt)は、その場にいた観客からの大歓声を今でも忘れられないという。今回は岩淵にインタビューを行い、プライベートレーベルの設立やアルバムの制作過程について話を聞いた。彼女は様々な葛藤の中で生まれた今作について、素直な言葉で語ってくれた。



「絆をちゃんと深めて一緒に這い上がっていきたい」


――プライベートレーベルを設立した経緯を教えていただけますか?

メンバーの脱退という大きな転機があって自分の中でいろいろと考えていたら、“難しいこと考えずに自分たちでやるしかないな”という感覚が大きくなったんです。そんな時に、KEYTALKと仲良くしていたことでお世話になっていたKOGA RECORDSの古閑さんに“どうしたらいいですかね?ちょっとお話を聞いてください”と相談しに行って、Noisyを立ち上げることになりました。バンドを始めた時から自分たちでこうしたい、ああしたいというのは言いながらやってたんで今回も考えたんですけど、辞めるという選択肢が私の中にはなかった。辞めたくないなら自分たちで全部作っちゃえばいいじゃん、居場所がないなら作ればいいじゃんと思って立ち上げたんですよね。

――実際に立ちげてみてどうですか?

めっちゃいろんな人に助けてもらいました。これからもっと目指していきたいことに対して、どうしても力不足のところがたくさんあって。立ち上げの前は仲間やバンドの先輩に話し聞いてもらっていたんですけど、話を聞いてもらうだけで自分がどうしたかったのか、何をしなきゃいけないのか、ということが明確になっていきましたね。そうやっていろんな方が協力してくれたから、Noisyを立ち上げてMOSHIMOが活動できている。だからこそ、今までMOSHIMOを応援してきてくれたお客さんと絆をちゃんと深めて一緒に這い上がっていきたいし、チームとして強いものにして世の中に対して出ていけるNoisyでもMOSHIMOでありたいなと思っています。


「ここからMOSHIMOとして活動していくかの方が最優先だと考えられた」


――メンバーの脱退や自主レーベル設立ということから、今作はこれまでの制作とは全く違ったのではないですか?

実は正直、日常の中で刺激があまりなくて、Zepp DiverCity TOKYOでライブをやるって決めた時にそこに到達する刺激と呼べる新しい何かが欲しかったんですよね。ずっとイッチー(一瀬貴之/Gt.)と一緒にガツガツやってきて、その中で“新しい何かを生み出すものが出てこないな。つまんないな”と思ったタイミングで、大きな転機がやってきてしまったんです。

――これまでも刺激を受けてアウトプットしていく、というかたちが多かったんですか?

自分が興味を持ったことや知らない知識を入れることが楽しいんですよ。“え!なにそれ!どういうこと!?”っていうことを知るのがめちゃくちゃ好きで。制作しててもボキャブラリーだったり、自分が聴いてる音楽だけの世界で留まっちゃってる感じがするんです。周りのバンドや仲間のライブを見てると、そこまで行きたいなとか、かっこいいなって思う時がある。じゃあ、そこに負けないオリジナリティとしてMOSHIMOってなんだろう、MOSHIMO=私だと思っているからこそボーカルとして私が出せるものってなんだろうって考えた時に、それに対する刺激的なことがあまりなかったんですよね。思ってもない角度からきた刺激であり、望んでいたものではなかったんですけど、どうやったら見つけられるんだろうとグダグダやってたタイミングだったので、より自分と見つめ合う時間もできたかなと思っています。

――よりポジティブに捉えられたということもありませんか?

そうですね。昔の私だったら“どうしよう。ここでバンドを辞めようかな”って不安になったと思うんです。でも辞めるというネガティブな考え方が私の中で全然なかった。かなりショックは受けたんですけど、起こったことはどうにもできないから引っ張られていてもしょうがないし、ここからMOSHIMOとして活動していくかの方が最優先だと切り替えることがでましたね。ライブをやってきてMOSHIMOのどういうところが好きかと聞いたら、“ポチ(岩淵)さんの曝け出している部分好き”、“ライブも好き”、“歌詞に共感できるところが好き”、というように言ってくれてる人たちがいる。そんな人たちと信頼関係がある中で、私は簡単に裏切ることが絶対出来ないと思うんです。だからこそMOSHIMOをやりたい選択肢がありました。

――今作はtwitterの不定期連載では「葛藤の狭間でできた曲が詰まっています」とも記されていました。

葛藤は常にありますね。特に『噛む』を作った時期は“判断がこれで正しかったのかな?誰か傷つけてないかな?”とか、“でも何かを守りすぎて全然前に進めてなくない?”って思っちゃう時もあったりとか。それが不安だったりする時もありました。自分が転機だったと今は良いように言ってるけど、私にもかなり悪い面があって。それをなぜこうなったのか、ちゃんと自分の良かったところと悪かったところとどう直せばいいのか、どこまでのラインで自分を許せばいいのか、すごい行き詰まったんですよね。自信がなくなっていたし、でも自信がないものを発信するのはすげー失礼だし、超かっこ悪いから、じゃあ自分のいいとこって何だろうって探したりして。自分の気持ちが下がんないようにやってくにはどうしたらいいんだろうと、葛藤は多かったですね。


「いちボーカルとして私なりの信念が生まれた」


――今作の収録曲は新たな個性を見つけられたっていう感覚ですか?

サポートメンバーの2人が制作する時も一緒に入ってくれてたんですよね。“ここも思い切って転調したら?ライブもそっちの方が上がるんじゃない?”と自分にないアレンジのエッセンスがあったり、先のことを見越して一緒に制作してくれる仲間と一緒にやれました。なりたい自分に向けて第一歩を踏み出すための、次のステージへ向けて踏み出すためのきっかけになるアルバムになったんじゃないかなって思ってます。

――サポートメンバーの方がバンドの一員としてアイディアを出してくれたんですね。

めっちゃ小さいことなんですけど、一緒に制作していざレコーディングしますとなった時に、ドラムはタイに海外に行ったお土産を買ってきてくれたんです。さらにベースも地元・長崎にちょっと帰ってたからとカステラを持ってきてくれて。私もみんながうまくいけばいいなと思っていろいろと差し入れを買っていたりしていたら、いつの間にかお菓子が集まっていました(笑)。実は今までそういうことがなかったんです。作ってる側で悶々と戦っているような制作が多くて、みんなで一個をちゃんと作ろうというのが新鮮でした。自分の叩いたフレーズや弾いた音に対してもめちゃくちゃ責任を持ってくれて、ずっとレコーディングのことも気にしてくれていたんですよね。弾き終わった後も“このギターいいね”、“ベースとの音色のマッチいいね”、“もっとこうしたら?”という会話もあって、よりバンドをやっている感覚がありました。もしかすると今までで一番バンドしてるなと自分の中で感じているかもしれません。

――歌詞への向き合い方に変化はありましたか?

音だけでなく、言葉においても自分の言葉で歌わないとロックじゃないと思っていて。私はそんなにいいヤツじゃなくて、めっちゃ口も悪い。極力前向きには伝えるけど、そんなにずっと前向きでもない。ずっと一生ハッピーみたいなんでもないから、こいつマジでムカつくと思う時もある。女の子だから言葉遣いが悪くてダメというんじゃなくて、ちゃんと自分の思ってることをちゃんと言葉にするっていうのも大切だと思うんです。なんでも歌える人になろうとするんじゃなくて、全部を自分の色に変えられる人になりたいって、いちボーカルとして私なりの信念が生まれた瞬間でした。だからレコーディングする時も、前まではコンデンサーマイクに向かってピッチやリズムをめちゃくちゃ気にしながら歌ってたんですけど、ライブの私はそうじゃないなって思うようになったんです。

――レコーディングでの歌い方にも変化があったんですね。

よく“音源とライブでこんなに違うの?ライブの方が好き”って言われていたんです。嬉しいんですけど、ライブと音源がイコールになってないんだな、それはすごく良くないなと自分の中で思ったんですよ。ちゃんとライブも知ってる人だけでなく、音源だけを知ってる人にも私の歌が一緒じゃないと絶対に伝わんないなって。だから、まずハンズフリーでライブみたいに一曲通して歌った後に、マイクの方がいいのか、それともコンデンサーマイクで質感を音と合わせた方がいいのか、トライして歌っていきました。

――だからこそ今作はライブの映像が思い浮かびました。

ライブで歌っている自分だとこう言うなっていうことを歌詞に詰め込んでいるんですよね。昔は“わたし”と歌っていた部分もあったりするんですけど、今は普段から話すように“あたし”と歌ってる。〈クソくらえ!と今日も愛を歌うよ(「もっと」)〉と昔は絶対書かなかったことも、内心ではいつも“クソったれが!”って思いながら生きてんのに、それを書かないと変だなと思って書くようにもなりました。人間臭い人の方が好きなんですよね。


「これからも夢を見せていけるように」


――新体制で回るツアーも控えています。ツアーファイナルはZepp DiverCity TOKYOですが、東京・LIQUIDROOMでの発表時の歓声は大きかったですね。

あの時の映像はいまだに寝る前でも自分で見ちゃったりするんです。ステージのバックモニターの裏にいたんですよね。積み上げてきたものがあったんで、あの歓声を聞いた時に本当に泣いちゃいました。今も思い出したらまた泣いちゃうんですけど……(涙目になりながら)お客さんとちゃんと繋がれていたなと思った瞬間でしたね。

――忘れられない瞬間でしたよね。今回のどんなツアーになりそうですか?

“私たちはまだまだだけど、武道館もやりたいし、この新しいチームでアリーナツアーできるといいなと思ってる。でっかいこと言ってるけど本当やりたいんだよね。止まりたくたくないし、どんどん新しいことにトライしたい”とサポートメンバーの2人に言ったんです。そうしたら“え!嬉しい!そういうボーカルについていけるのも嬉しいし、しっかり支えていくから俺たちにを夢を見させてくれよ”と言ってくれた。めっちゃエモくないですか?こうやって話すと小っ恥ずかしいですけど、そんなこともメンバーで話せることが何よりも嬉しかったんです。あと“私はライブで動き回るし、好き勝手やるんで迷惑をかけるかもしれない。いきなり絡むかもしれない。それでもサポートいいですか?”と言った時にも、“楽しそう!好き勝手やっていいよ、俺らがなんとかするし”と話してくれて。もう本当にありがたくて、孤独感がすごいなくなって、これがバンドなのかなって思えたので、そういうバンドとしての私たちをライブで見に来てほしいです。

――新たな結束力が見れそうですね。

ずっとMOSHIMOのことを好きでいてくれる人は、私の気持ちが一回折れそうになったところから今のところまで持っていったことを見てくれていると思っています。だからうまくいかない時に対して“なんとかなるって、大丈夫!気にすんな!意外に助けてくれるから。一緒になって這い上がっていこうぜ”というライブにしていきたいですね。行き詰まって何かを決断することに対して怖くなることは絶対にあると思うんです。それに小さいも大きいもないと思うので、是非来てもらいたいです。


インタビュー・文/笠原幸乃



New Album 「噛む」 Now on sale

MOSHIMO Official Website >> http://band-moshimo.net
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