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その悲しみと葛藤が、日々の泡沫に消されてしまう前に。 2001年生まれのシンガーソングライターKarin.が遺す、“居場所”である言の葉と歌。

2020/03/23 12:00

2019年夏に突如現れたシンガーソングライターの新星、Karin.。
1stアルバム「アイデンティティクライシス」のリード曲「愛を叫んでみた」が、FMラジオ局8月度のヘビーローテーションに数多く選出され、収録曲「青春脱衣所」は同年代の間で口コミが広がり、ミュージックビデオの再生回数が公開から3ヶ月で50万再生を突破。
そんな前作からわずか半年で完成したのは2ndアルバム「メランコリックモラトリアム」。
「みんなと同じでいること」が無意識の防衛装置になっている日々の中で、「誰かのため」ではなく「自分のため」に歌い始めた彼女。
不安定に揺らぐ心模様を写した歌は、だからこそ同じ想いの少年少女の共鳴を呼んでいるはず。
この春、高校を卒業したばかりのKarin.さんにメールインタビュー!



――堰を切るようにあふれる言葉が、歌声が、心の深淵まで響き揺さぶられます。Karin.さんにとって、このアルバムはどんな存在ですか。

私にとってこのアルバムは「高校生として最後の作品」になっています。学校生活をたくさん振り返って曲を書き、今しか歌えない曲を全て詰め込みました。

――「メランコリックモラトリアム」というアルバムタイトルには、どんな想いを込めていますか。

アルバムのタイトルには「大人になるまでの猶予期間が憂鬱に感じる」という意味が込められています。今年の春に高校を卒業したら、私は大人にならなくてはいけなくて、子供にはもう戻れないと思いました。今は大人でも子供でもない時期にいる私は、大人になる為に何をしないといけないのか?そもそも大人って何だろう?などいろんな事を考えても答えが出なかったので「メランコリックモラトリアム」という言葉が今の自分に似合うのではないかと思い、このタイトルにしました。

――1曲目「命の使い方」は12/4に配信リリースされた作品。“ごめんね昨日の僕よ/またあいつのことを殺せなかった”と耳に飛び込んできた瞬間、自分にとっての“あいつ”が浮かび、やがて“正解なんてない”という正解へ導いてくれました。反響が大きい歌ですが、どんな想いから生まれたものでしょうか。

この曲はアニメの「ムーミン」を観ていた時に思った事を歌にしました。登場人物で「ニンニ」という女の子が出てくるのですが、彼女は周りから人間性を否定され続けて、自分の声、姿、形が消えてしまいました。それでも自分の存在意義を見つけ、本来の自分を取り戻す、という内容だったのですが、観終わった時、最初に「ニンニ、可哀想だな」と思いました。ですが、このたった一言でニンニの全てを片付けてしまおうとする自分が一番可哀想だと思ってしまいました。それと同時に同年代の少年少女が人間関係で悩んで自ら命を終わらせた時に、その人生を美化するのはどうなんだろう?まだ皆人生を一度しか経験していないのに、何故人は正しい命の使い方を求めるんだろう?と思ったのでこの曲を作りました。

――「命の使い方」はミュージックビデオも印象的です。アニメーションのシーンで、苦しそうだった主人公が自分を得てゆく姿。見上げた空から音楽という世界が降ってきたのではなく、マンホールの隙間をのぞきこんだことで出合った音楽に救われてゆく表現は、主人公の状況・心情をより伝えていて、すごいミュージックビデオだなと。Karin.さんは完成した映像をどう感じましたか。

このMusic Videoは映像作家の加藤隆さんに監督をしていただき、実写とアニメーションで構成された作品になっています。曲は聴くことが出来ても、目には見えません。そこで「命の使い方」に込めた思いを目で観ることが出来たらどうなるんだろう?と思い、話し合いながらMVを制作することが出来ました。アニメーションに出てくる登場人物や、ストーリー、色遣いにも様々なメッセージが込められているように感じました。

――2曲目「「バイバイ」って言わない理由」は、イントロの疾走感から青春の短さが感じられる曲。Karin.さんはどんなきっかけでこの歌を作ったのでしょう。

私は普段別れの時に「さよなら」や「またね」という言葉を使います。その理由は、「またね」と言えばまた会える気がしたのと、音楽を始めるきっかけとなった中学生の美術の先生が”「さよなら」という言葉には続きがある”ということを教えてくれたからです。「バイバイ」という言葉の意味をこの曲を書きながら考えたのですが、思いつかなかったので「バイバイ」って言わない理由はまだ自分にはわからないけれど、この気持ちを歌にしたらいつかはわかる時が来るのではないかと思い、この曲を作りました。

――謝ればどうにかなる世の中への怒りも描いた「藍錆色の夕日」は、藍錆色がどんな色か調べて知り、いっそうこの歌の風景が浮かびました。“夕日”と“藍錆色”を合わせる発想はどんなシーンから生まれたのでしょうか。

ある日いつも私達を照らしている夕日を眺めていたら、自分と似ているなと感じました。その時に夕日と私を対照しながら曲を書いたのですが、自分みたいで自分じゃないことを色で表現したくなり、暗い色の中に明るい色がほんの少し入った色を探した時に藍錆色という色を見つけたので、「藍錆色の夕日」というタイトルにしました。

――弾き語りで始まる「誰もわるくないね」は、自分の中にある「平等のゴール」「おなじだけの幸せ」に対する偽善的な考えにも気づきます。Karin.さんの「愛してる」という歌声も、ひと声ごとに、それが叫びだったり懇願だったり願いだったり、違って聴こえます。どんな想いで作った曲ですか。

この曲の中で出てくる「愛」という言葉は、いろんな形で成り立っていると思っています。エゴから生まれた愛や、自分の為に作り上げた愛など不変的な形であっても「愛」という言葉は確立することを、ネットニュースや書き込みサイトを見て思い、歌詞にしました。今の世の中は「協調性」というものが求められています。"個性は時に人を傷つけるもの"と人々が認識し始めたのは、誰のせいでもないし誰も悪くないはずなのに、誰かのせいにしてしまいたくなるのは何故だろう?という考えからこの曲を作りました。

――「残灯、夜に消える」は、ロックサウンドによって、痛みの中にいる主人公がそれでもちゃんと未来に向かっていくだろうと思わせてくれる曲。“愛や悲しみと痛みは全部昨日に置いていく”としながらも“いつかこの気持ちを思い返せるように”と続きます。Karin.さんが、感じたことや起きた出来事を歌にする、その姿勢と重なるフレーズにも思えました。今、この曲に思うことはどんなことですか。

私が音楽を始めた時は弾き語りとして活動していたのですが、今はバンド編成になり、たくさんの事を感じ、その時にロックな曲に挑戦したいと思ったので、この曲を作りました。「残灯、夜に消える」というタイトルと同じように歌詞は矛盾した言葉を使いました。出会いと別れを繰り返す中で、変わってゆくものがあれば、変わらないものも存在します。私はいつか無くなってしまう感情が嫌いです。しかし、どんなに記憶していても思い出は美化されてしまうことを知ってしまいました。なので私は、栞にいつか無くなってしまう感情や全てを挟んでいつでも思い出せるようにしたいです。

――『教室難民』は、タイトルだけで泣いてしまいそうです。どんなふうに生まれた楽曲ですか。

誰もいない教室で不思議と心地良くなった時に「ずっと此処にいたい」と思った自分が「難民」のように感じたのでこの曲を作りました。人は知ることにより物事を学びますが、“知らない方が良いこと”も存在することを高校生活で感じました。特にこの曲は、高校を卒業するまでに歌いたいと思ったので今回のアルバムに収録しました。今の自分を一番明確に表現した曲が「教室難民」だと思います。

――「最終章おまえは泣く」は、実際の会話がなされる前に、自分の脳内で脚本が数ページ展開して傷ついたりもする主人公が見えてきます。すごい歌ですね。初めてバンド編成でミュージックビデオを制作したそうですが撮影はいかがでしたか。歌への想いと共にお聞かせください。

「最終章おまえは泣く」という名前の作品を作りたいとずっと思っていました。そこで、曲にしたら面白くなるのではないかと思ったので、この曲を作りました。初めてバンド編成でMusic Videoを撮影して「バンドってこんなに楽しいんだ」と改めて思いました。1人、部屋の中で作ったこの曲を、最高なメンバーと共に奏でることによって、1人の時とは違う感情が生まれることを知りました。

――ラストに収録されている「髪を切ったら」は“この悲しみも歌にできるから”という言葉が余韻になって、これから生まれるKarin.さんの楽曲たちに続きます。どんな想いを込めていますか。

ファーストアルバム「アイデンティティクライシス」をリリースするまで私は1人で活動してきました。ですが今は一緒に最高な音楽を奏でてくれる仲間やスタッフ、私の音楽を聴いてくれるファンの方々に出会い、いろんなことを感じることできました。自分はずっと1人だと思って始めた音楽も、今は1人ではありません。そのことを1曲の中で表現したいと思い、弾き語りをしていた時に作ったこの曲を書き換えてみました。この曲は今回のアルバムの中で一番"自分自身を変えた曲"だと思っています。なのでこの曲を曲順の中で最後に持ってきました。

――このアルバムが、どんなふうに人に届くことを願っていますか。

私は明日のことや未来の出来事、他人に心を置き換えて歌にすることが出来ません。なぜならば音楽は私にとって儚い存在であり、自分が素直でいられる場所だと思ったからです。このアルバムを人に聴いてもらうことによって誰かを励ますことは出来ませんが、"誰かの心に寄り添えるアルバム"と感じてもらえたら嬉しいです。

――6月からは、音楽活動の原点となった茨城・水戸LIGHT HOUSEを皮切りに、名古屋と大阪で、“初ワンマンライブ&ツアー「最終章おまえは泣く」”が開催されます。名古屋は、6/28(日)ell.FITS ALLにて。どんなライブになりそうでしょうか。また、ライブで歌う時に大切にしている想いはなんですか。

ライブするということは、同じ空間や時間、匂い、感情を共有していると思っているので、私の世界観に一緒に入ってもらえるようなライブにできるよう、心掛けています。初めて行うワンマンツアーの最終日が名古屋のell.FITS ALLなので、思い残しのないライブをしたいです。大好きな手羽先を食べて、自分らしいライブができるよう頑張ります!

――最後にメッセージをお願いします。

改めまして、Karin.です。2月12日に高校生として最後の作品「メランコリックモラトリアム」をリリースしました。また、6月28日には初ワンマンライブ&ツアー「最終章おまえは泣く」をell.FITS ALLで行うので、皆さん是非チェックしてみてください。


インタビュー・文/早川矢寿子



2nd Album 「メランコリックモラトリアム」 Now on sale

Karin. Official Website >> https://karin-official.com
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Karin.
Karin. 初ワンマンライブ&ツアー「最終章おまえは泣く」

2020/06/28(日)
ell.FITS ALL
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