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「今こそ各々の燃焼を上げていって、全力疾走できたら」

2020/03/19 14:00


2月26日にミニアルバム『orbit』をリリースした、Brian the Sun。昨年はアメリカ・テキサス州ダラスで開催されるアニメコンベンションイベント「A-Kon 2019」への出演、STARMARIEとの「SUGOI TOUR 2019」におけるメキシコ・メキシコシティなどでの公演と海外でのライブ経験も積んだ。また11月に発表された自主企画”SUN! SUN! SUN!”も今年2月より始動している。様々な経験を経て作り上げられた今作は、テレビアニメ「真・中華一番!」のエンディング主題歌となった「パラダイムシフト」を含む全5曲を収録。今回は森良太(Vo./Gt.)と白山治輝(Ba./Cho.)にインタビューを行い、制作過程だけでなく、30歳を目前にした今の気持ちも語ってくれた。



「やりたいことと今できることをやればいい」


――昨年は海外でのライブを経験されました。いかがでしたか?

白山:アニメから入ってくるお客さんがすごく多かったので受け入れ態勢は整ってたところもあって、めっちゃ楽しかったですね。

:2回の海外遠征で色々と考えさせられることがありましたね。僕らが海外でやり続けるには、現時点でめっちゃわかりやすい方法として“アニメのタイアップを取り続けること”なんだろうなと考えはするんです。でも今回のように海外に受け入れてもらえるような場所ができていたのは、国内の活動をしっかりやっていたからなんですよね。だから今まで通りのことをやっていく。自分らは自分らでちゃんとそうやって考えていくしかない。ただ国内に向けてライブするのと、海外に向けてライブするのでは全然方向性が違うんですけど、実際にやっていることは一緒っていう難しさがあって。そこに関してはのんびり考えていくしかないですね。

――そのような経験が『orbit』にはアウトプットできた感覚がありますか?

:今作はその経験とはあまり関係はないですね。実は「still fish(シングル『パラダイムシフト』カップリング曲)」が海外のライブを経て作ったので、これで一旦アウトプットは終わっている。だから今回に関しては真っ新な状態で、自然と出てくるものを録音しようという気持ちで臨みました。最初は何かを定めていくかたちで進めていこうと考えていたんですけど、結局できなかったんです。今回は曲が出来上がる度に録っていったのもありますけど、今の僕たちのモードが反映されていると思います。

――ゴールを決めて進めることができなかったのは、なぜですか?

:初めからコントロールしようと思って曲を書き始めていたんですけど、次第に“何か窮屈やな”と感じるようになっていたんです。だったら、わざわざ誰からも頼まれてないのにコントロールして作らなくていいやと思えた。誰かから“こういう感じでお願いします”と目指すイメージを言われてたら、もうちょっと考えていたかもしれません。でも今回は違うからこそ、“やりたいことと今できることをやればいいや。それをしっかり録音できたらいいものになるだろう”と自由にできたんですよね。

白山:そんなふうにできたのも、今回も引き続きサウンドプロデューサー・江口亮さんと一緒に作ったことが大きく関係していたと思います。言葉がいらなくなってくるのは僕たち的にも楽で、安心感が違うんですよね。

:ものすごく愛情深く僕らのことを見てくれているし、どこか自分の二十代後半を重ねてくれてるような気もして。だからた言いたいこともたくさんあると思うんですけど、そこは我慢しつつ見守っていてくれていると思えるんですよね。


「ロックの常識ではない手法で作り上げたチグハグさ」


――昨年リリースしたアルバム『MEME』は初期衝動が詰め込まれた一枚でしたが、今作はそれとは違う方向性を感じています。メロディーの良さが主軸に置かれた曲が揃いました。

:まさしくそう自分たちも同じ感覚ですね。パッとやってパッとできた感覚はあんまり自分の中ではないし、作品としてのライブ感も欲しいんですけど、今回は初期衝動とは違う。でも今日も録り終わったものを聴いていたら、バンドだからライブ感もあって演奏している景色が浮かぶんですよ。作る過程ではそうするつもりはなかったのに不思議だなと思えるのは、バンドの面白くて難しいところだなと。また最初はポップの感覚で作り始めたんですけど、次第にロックな色になっていきました。最初は“こういうことができればいいな”と頭ん中で描いてメンバーに持っていくんですけど、みんなで合わせた時に“これやっぱちゃうな”ってなる。不器用であるかのように聴こえてしまうから、あんまり洗練されたことはできないとも思いました。

白山:その中でも面白いなと感じたのは「SOS」。良太からまず“とりあえずチューニングを下げてくれ”って言われたんですよ。普通はチューニングを下げたりすると、重心が下がってしまうからホップではなくなる。だからそんな意図で下げることはしないんですよね。これは良太のいい意味でへんてこで面白い部分だなと思ってるんです。

:どっちかと言うと自分の中ではおしゃれにするためにチューニングを下げる手段を取ることが多くて、実際には重たくもなるけど重たくしたいわけじゃないんです。押尾コータローさんがアコギをオープンチューニングでやっていることとか、ロックの常識じゃないところから手法をとってきてやってるので、チグハグさはあると思いますね。

白山:そこはお互いに聴いてきたものが違って、僕にはない感性が良太にはある。それが混ざることが面白くなってるのかなとは思ってますね。いつもそうなんですけど、音だけでなく歌詞も僕が分からない言葉もあって、すごいなぁって。

――さらに面白いのは、その都度で録っていたにもかかわらず作品全体で芯が一つ通ってますよね。まるで狙って書いたようにも感じてしまいます。

:“めっちゃ売れまっせー!”というよりは、手法としてもキャラとしても売れる路線ではないと思うんです。音楽はパーティーから始まり芸術へと昇華する人がいる――その流れを汲んでちゃんと美しいものを作りたいという想いがある。でもこれをメジャーでやらせてもらえてることがありがたいからこそ、もっと突き詰めていかないといけないんですよね。どうやって個性になっていくのか……個性になりつつもあるのかな。インタビューでもとっさの返答で改めて自分自身で感じることもあって、そういう何気ない経験が良い作用も悪い作用もしながら正直にやってきてるので、出来上がったものはなかなか面白いかなと思いますね。


「音楽に対する信仰心が戻ってきた」


――昨年は『MEME』リリース以降、バンドとしての好調さを肌で感じることが多かった中で、「30歳を目前にして」と口にされていた場面が何度もありました。30歳という年齢をかなり意識していましたか?

:僕らは15年ぐらいバンドを続けているんですけど、ずっとそればっかりやってるんですよ。バンドマンとして生きていく中で、ここ最近は30歳に近づいてきたことをきっかけに、人としてこれまでの歩みを見つめ直すようになった。自分がやってきたことを思い返せば全てがいいことばっかりで、歩みはゆっくりでも進んでるなと、自分の人生を考える意識が生まれたんです。今はそういう個人での燃焼感みたいなものが増していけば……と考えていますね。だからバンドとしての燃焼感はわりとメジャーデビューして感じているので、各々が一旦、原点に立ち返ってもう一度燃焼するために何か持ち寄ることができるなら、30歳までかなとも思っている。35歳を過ぎて同じようにバンドを続けた時に燃焼することに耐える作業がめっちゃ多くなってくると思うので、俺は正直もっと気楽にやりたいんですよね。気楽にと言うとライトに聞こえるかもしれないですけど、無理矢理に責任を感じながらやるよりも、ちゃんと一人ひとりの人生における全力疾走のタイムが合うように、それぞれが自由にやっていけたらと思っています。

白山:30歳かぁ……早くなりたいですね。自分が思っていた20代じゃないというか……もうちょっとしっかりしてると思っていました。なんとなく見よう見まねで先輩たちがやってきたことをし始めてるけど、高校生の時に想像していた29歳とは違っていて。実際に焦りを感じてたと言えば感じていたんですけど、30歳までのカウントダウンが残り1年切って、“あ、これくるな”と逆に焦らなくなった(笑)。

:僕は別に30歳を目前にした今じゃなくても、焦りや不安が常にありますね。20歳でも25歳でも焦っていて、毎日死にたいと思っていた。今でも時々死にたいと思うほどしんどいですけど、ずっとそう思っているから、これからもそうなんでしょうね。だから65歳になっても毎日こんな感じじゃないかと思うと気が楽になるなって考え始めています。あと僕は感覚が10代の頃に近づいてきているんですよ。折り返してきてい自分の中で。25歳ぐらいで一番尖っていたんですけど、そこを折り返しとして30歳に近づくにつれて10代ぐらいにあった音楽に対してのウキウキとした興味が盛り返してきている。めっちゃ音楽が楽しいですね。メジャーデビューをしてからの最初の1・2年はガッカリすることも山ほどあったんですけど、そのガッカリの向こう側にはちゃんと今も活躍されてる方たちが非常に真っ直ぐな気持ちでやっていること、情熱が一番あることを見て知ることができました。拗ねて諦めるよりも、“これで無理やったらいいわ”ぐらいの気持ちで真っ直ぐやりたいですね。

――音楽を続けることにおける反抗期を脱したような感覚ですか?

:なんでしょうね? うーん、音楽に対する信仰心が戻ってきたというか。知れば知るほど、音楽って数学で、物理学で、わりと理系な側面があるんです。売るためのいい曲を書く方法論があって、則ればある程度は体系的にできると思っていて。でもその向こう側として、“訳わからんくらいシンプルで死ぬほどかっこいい曲には理屈や理論がない”ということが絶対にある。例えば美味しい料理を作るレシピがあっても、それがなんで美味しいって思うのかに理由はないじゃないですか。いろいろたくさん美味しい料理を作っていくことができるようになったけど、美味しいっていうのはなんでだろうってことを考えたらダメだなっていうことが分かりましたね。

――そんな気持ちで臨むツアーは東名阪と回ります。

:今回のミニアルバムは賞味期限があると自分では思っています。ジャストミートで演奏できる期間が決まっているので、この5曲を永遠に歌っていくことはしない。この5曲を作った時と同じ気持ちで歌えるのは今しかないからこそ、この5曲を永遠に歌っていくことはしません。そう感じている理由は30歳というラインから生まれたものかもしれないし、何かは分からないですけど、今は自分の気持ちがこの5曲に向いているんです。

白山:ライブで先にやっている曲もありますけど、レコーディングを経て変わったりもしたんですよね。ライブという時間の中でそれぞれの曲がどのような位置付けになるのか、どんなふうに披露するのか、それも含めてライブが楽しみです。


インタビュー・文/笠原幸乃



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