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「“答えなんかない”未来に向かっていく勇気がついてきた」

2020/02/22 12:00

メジャー1stフルアルバム『風吹く方へ』を1月22日にリリースした、ANTENA。2018年4月に渡辺諒(Vo,Gt,Key)の療養にともないバンドは活動休止するも同年11月に活動を再開し、2019年1月には2ndミニアルバム『深い 深い 青』をリリースした。続くツアーでは東京、仙台、大阪公演をソールドアウトさせる大盛況となり、その後もコンスタントに楽曲を発表していく中で、9月に中国での音楽配信開始を機にバンド表記を「ANTENA」に変更した。今回はANTENAの作詞・作曲を担う渡辺にインタビューを行い、初のフルアルバムへの想いを聞く。活動再開してからの時間で辿り着いた“ライフソング”の一つの在り方、そして未来への力強い一歩を語ってくれた。



「今度はみんながいなくならないでね」


――今作は初のフルアルバムとなりました。

去年の4月に全国5か所を回った前作『深い 深い 青』のリリースツアーを機にライブ活動を再開して、待っている人がこんなにいたことや目の前で涙を流してくれていたことなど、自分が音楽を再開したことで誰かが幸せになってくれているんだと生で体感しました。だからこそ、その時に感じたことを『風吹く方へ』では落とし込もうと、自分の気持ちのより素直なところを残したんです。いつも思っている“ありがとう”という気持ちでも、ただそれだけじゃなくて“もっと大きなところを見せてあげたい”と思うようにもなった。お客さんやファンの方と一緒に夢を見ていくために、もっと自分が先頭に立って「行こうぜ!」と言ってあげられる強さを意識しながら作りましたね。またずっとフルアルバムを作りたかったので“やっと作れる”という気持ちもあって、欲を言えばもっと曲を入れたかったんですよ。

――活動再開されていろんな刺激を受けたからこそ、曲がたくさん出てきたんですか?

そうですね。もともと曲を作ること自体は全く苦ではない人だし、1日あれば一気に作れちゃうんですけど、今まで以上に曲がポンポン出てきました。そんな中で今回は特に“どこまで聴く人の気持ちに踏み込んだ歌詞にしたらいいんだろう?”と考えたんです。例えば「好きです、付き合ってください」と言っちゃうとイエス・ノーの答えがどっちも言えるようになるわけじゃないですか。だから今までだったら「良かったら付き合ってください」ってわざと相手に“よかったら”と前置きをして逃げ道をちょっと与える。そのちょっと一歩引いたところで思ってたんです。でも今回はそうじゃなくて「いや俺には君しかいないんだよ」ぐらい強いところまで、なるべく今までの自分のように相手に合わせるんじゃなくて、自分から相手に踏み込んでいこうと歌詞のテーマを決めました。これをより反映できたのが「Ephemeral」でしたね。

――「Ephemeral」では〈ダサいような僕のこと / 知って欲しくて空回り〉というように、気持ちがはっきりと分かる歌詞が書かれていますね。

ファンの方や応援してくれてる方に対するラブコール的に作った曲なんです。Ephemeral=儚いという意味なんですけど、この曲に出てくる“あなた”がANTENAを聴いてくれてるお客さんやリスナーの“あなた”だとして、その“あなた”からしたらANTENAというバンドは一瞬消えかけてはいた存在でもある。でも復活した時に「待っててくれてありがとね。もうどこにも行かないからね」とかそういうことではないなって漠然と思ってもう一歩踏み込んだら、最初に出てきたのは「俺たちは消えかけたんだけど、復活してもっと大きくなってるから今度はみんながいなくならないでね」という気持ちでした。

――ただひたすら自分で一歩踏み出すことに向き合って進めていったんですか?

閉じこもる方が多かったですね。自分で自分の殻を一枚ずつ剥いでいく作業なので、簡単に逃げられると言えば逃げられる。「ちょっとそれ以上は……」といつもだったら“まあこんなもんか”と思うところで、もう一人の自分が「ちょっと待って。試しにもう一枚めくってみたら?」と訪ねてくるように、自問自答を繰り返しながらやってみました。ちょっと矛盾してるのかもかもしれないんですけど、もちろんファンの方に感謝はしてるし、一緒にもっと夢を大きくしていろんなところへ運んでいきたいと思っている中で、ファンのためのバンドであってしまうと、それ以上の存在ではなくなっちゃうワガママな気持ちもあって。だからファンに対してはバンドって常に無責任でいいとは思ってるんですよ。ファンが右に行きましょうと言ったら“じゃあ右っぽい曲を書きます”、逆にファンが左に行きましょうと言ったら“じゃあ左の方に行ける曲を書きます”っていう主従関係じゃなくて、バンドや表現者がファンの前に立ってなきゃいけない。だからこそ俺は、自分たちをいつも支えてくれてるファンの方への感謝は持ちつつ、大前提として俺たちがいい意味で無責任でないといけないと思うんです。そういうところも考えながら、ワガママな面はなるべく媚びにならないように意識しました。


「“ライフソング”で重要なのは、『未来をどう生きていくか』ということ」


――《ANTENAの掲げる「ライフソング」というコンセプトを伝えていくこれまでは、楽曲やアルバムの中で一つの「答え」を出すことが多かったのですが、今作、ANTENAにとって初のフルアルバムでは「答えなんかない」という「答え」を出しています。》とコメントを残されていたことが印象的でした。

実はこのキャッチフレーズは後からついてきたものでした。制作当初からそういうものは決めていなかったんですけど、たぶん自分の中でもその気持ちはずっと芯としてあったので、必然的に「答えなんかない」というワードが出てきたシチュエーションが今生まれたことが大事だと思ったんです。今日もインタビューがある設定だからインタビュー用の言葉が出てくるし、他にも飲み会の設定だったら「乾杯!」という言葉が出てくる。何事もシチュエーションと設定に基づいた言葉を人間は絶対出してくるので、今回のコンセプトは今のANTENAに合ったものなんだと感じています。“答えなき道”の言葉が頭の中で出た時に、思い返したら“あれは音楽旅だったな”と分かることが多くて、答えはいつも後ろにしかなかったと実感したんです。悲しかったり嬉しかったりする様々な感情において、何が正しかったのかはリアルタイムでは絶対分かんないことなんですよね。だから音楽旅を続けてお客さんと一緒にこれからの夢を見たいことも未来のことではあって、未来に答えは絶対的になくてどうなるかは分からない。でもやっぱり一緒に夢を見たい。そこが“答えなき道”とリンクして、未来は分からないけどきっと未来はよくなっていくよねという気持ちが『風吹く方へ』の中に詰まっていたんです。

――未来へ向けた作品になったんですね。

『深い 深い 青』で活動休止する時が状況が状況だっただけに今を生きるので精一杯で、未来がどうなってるのかは常に思っていました。今もその答えだけは変わんないんですけど、中身が全然違うんですよ。当時はマイナスからゼロに戻すための未来というイメージだったんですけど、でも『風吹く方へ』ではゼロになったものをこれからどんどんプラスにしていこうという気持ちになっていきましたね。

――ただ「答え」を出していたところから「答えなんかない」というコンセプトの変化は大きな方向転換にも思えるのですが、ご自身としてはどのように感じていますか?

でも「答えなんかない」という答えなので、その時点で白黒はっきりはつけてるんですよね。答えを求める=白黒つけるというその“白黒”って誰がどう判断するんだとなったら、今じゃない。未来になって過去を振り返った時にあれは白だった、黒だったと決まる。もしかすると「私はこれが白だと思って選んだんだから、これが白だ」と突き貫き信じる力で決まることもあると思います。でも果たして白として貫けるのかどうかも、思い返してみた時に貫いて良かったなになるし、貫いている途中で考えが変わって逸れたとしても、逸れて良かった・悪かったなっていうものになるんですよね。ANTENAが歌う“ライフソング”は現時点でどうするかというのはそこまで重要じゃなくて、現時点で選んだものを踏まえて未来をどう生きていくか、未来に向けて強く踏み出せる楽曲になってほしいなとどの曲でも思っているんです。だから「答えなんかない」と答えは出してないけど、ある種今回も答えは出してはいるんですよね。でも俺も結構、楽曲の中で愛ってこういうものだよなとはっきり言いたがっていて、絶対的に俺の気持ちなので正しいことではある。ただ「グッドバイ」で〈あんなに近くて あんなに遠くて / あれを愛と言うなら 愛は悲しいもの〉という表現に辿り着いたのは、自分の新しいことでもあると思います。

――そのような答えでも受け入れることができた、とも言えますか?

ANTENAを応援してくれてる人たちと一緒にこれからの未来を生きていくことが大前提なので、未来のことは切り離すことはできない。その上で「答えなんかない」という言葉が出てきたので、許す・許さないというよりかは怖いけど怖がらなくなったんだと思います。正直、音楽って人生の中における優先順位は別にそこまで高くなくても生きていける。周りにいる同級生を見ていても、最近の音楽は分かんないってなり始めちゃう。高校生の時に聴いていた音楽があればもうそれだけで豊かになるので、人によっては音楽の情報をアップデートしていかなくてもよくなるんですよね。でもそういう人もいる中で、活動再開をした時に休止前よりもライブに来てくれる人が増えいるのを直に肌で感じたことが本当に大きなことでした。リスナーやファンの方はANTENAの楽曲で「勇気もらいました」と言ってくれるかもしれないですけど、俺らからしたらステージに立って演奏しているとお客さんからのライブを見てるような感覚になるんです。そうやってたくさんの人への信頼が積み重なって、絶対に分からない不明確な未来に向かっていく勇気がついてきたんだと思います。

――バンドの存在の意義が分かってきたんですね。

そうですね。確かに自分たちの中ではライフソングを提示してどうなりたいかというコンセプトは最初からあったんですけど、そのコンセプトが間違ってなかったと確信できるほど、自分たちが貫こうとしてきたことが根付いてきた実感がありました。そういうところが大きな要素としてあると思います。


「ANTENAというジャンルを確立させて、ゆくゆくはカルチャーになりたい」


――3月末よりツアーが始まります。

ANTENAのことを独特な世界観があるとか、中毒性があるとか、そんなふうに表現してくれる人がこの一年間ですごく増えたんです。とても嬉しいことなんですけど、みんなは感覚的に分かっていて具現化はできてないんですよね。でも今はまだ見たことがないことだから抽象的になっちゃっている、その段階からもう一歩進めそうな雰囲気を感じています。だからみんなが思ってるANTENAサウンドの抽象的な部分を、このツアーで目に見えて「ANTENAってこれだよね」の“これ”を言葉に出来るようしていきたいです。

――どのように具現化されることになるのか、非常に楽しみですね。

まずこのツアーが6月28日まで続くので、ANTENAにとって2020年の上半期は抽象的なものをもっと形にしていくことだと考えています。続く下半期にかけてはANTENAというジャンルをもっと確立させて、ゆくゆくはカルチャーになっていけたら嬉しいですね。今は2019年以降に蒔いた種がちょっとずつ芽を出しているところなので、生えかけている芽をこのツアーから大事に育てて、下半期で収穫していけたらいいなと思っています。だからこそ、ちゃんとみんなが迷わず同じ方向を向いて同じ感性になるような、ANTENAをさらに根付かせることができるような、そんなツアーにしたいです。


インタビュー・文/笠原幸乃



1st Full Album 「風吹く方へ」 Now on sale

ANTENA Official Website >> http://antena-official.com
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ライブ情報

ANTENA
ANTENA 風吹く方へ release tour “Vinden blaser”

2020/04/18(土)
アポロベイス
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