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「wacciというバンドだからこそ、生まれた世界感がある」結成10年でたどりついたアルバムを携えて向かうは、初のホールツアー!

2020/02/22 10:00


日常を切り取り、どんな人のそばにでも寄り添って歌う5人組バンド・wacciが、結成10周年の12月4日にリリースしたのは、アルバム「Empathy」。
現在、2年連続2度目の開催となる47都道府県ツアーを駆ける、wacciのボーカル・橋口洋平さんにインタビュー!



――前作「群青リフレイン」からわずか一年でフルアルバムが届くことに、ほとばしる想いとチカラを感じます。制作はどんなところから始まったのでしょう。

今までもそうですが、コンセプトというものはないんです。「いい楽曲を作ろう」と、それだけに集中して、リリースにあたってそれらを詰めて出したというもの。ただ今回は、4月までやっていたツアーと今回のツアーに挟まれた半年がすべて制作期間になったので、時間が今までよりあったんです。制作一本に絞れたので、歌詞の部分でもかなり書き切ったなという思いがあるし、音も一曲ずつこだわりぬいて作れたなという、集中できた感がありますね。そういう意味では結成して10年やってきた、wacciというバンドが作る曲として向き合えたからこそ完成した一枚。10年があってやっとたどりついた、「Empathy」というタイトルもまさにそこに行きつくなと。

――「Empathy」は共感、共有という意味なんですね。

はい。僕らが音楽をやる上で大切にしている部分ですね。これは私のことを歌っている、私の歌だと思ってほしい。「誰かのテーマソングでありたい」というのが常にあります。10年間やってきたのは共感してもらえる曲を作る、そこにあると思うのでこのタイトルにしたんです。

――今までアルバムタイトルは単語と単語をくっつけた造語にしていたのを、今回はひとことで表現。

wacciはまだ全然続いていくんですけど、なにかひとつwacciというバンドが生まれてここまでやってきた答えを作っておきたかったんです。そのためにはひとことでポンと言えるような、的を絞ったタイトルにしたいと思ったんです。

――リリース日の12/4は、結成の日であり初ライブの日なんですね。その時のことを覚えていらっしゃいますか?

覚えていますね。「ありがとう」という一曲をCD-Rに焼いて、ベースの小野が描いた雑な絵をジャケットにして100円で売った思い出があります。渋谷の、今はもうないライブハウスでやったんですけど。

――始まりの一歩という感じでしたか?

バンドをやっているほうとしては、常に今が最高だと思ってやっているので、あんまり何周年とかは意識していないんですけど、このタイミングで出せるというのは、意味があると思うし、あの時の一歩がなかったら今はないので大事な日ではあると思いますね。

――「Empathy」には、配信シングル「結」「Buddy」、テレビ東京系ドラマBiz『ハル 〜総合商社の女〜』の主題歌となったシングル「Baton」に加え、ボーナストラックには、カバーする人が続出している大ヒット曲「別の人の彼女になったよ」も収録。1曲目の「Baton」でもう涙が出てしまいました。この曲は最初「Handregard」というタイトルだったそうですね。

そうなんです。もともと“手”の歌を書きたくて。赤ちゃんって、自分の身体でまず最初に認識するのが手で、赤ちゃんが手を見つめるしぐさをハンドリガードと言うらしいんです。大人になってからもう一度認識する、二度目のハンドリガードっていうのがテーマでした。自分の手を見ると、しわがあったり、傷があったり。いろんな手があると思うんですけど、しわの数だけ、それまで自分のことを幸せにしてきた素敵な手なんだと、そしてこれからも自分のことを、もしくは守りたい大切な人のことを幸せにしてゆく、そういう手なんだということを歌いたかったんですね。

――そこからさらに歌が深くなっていったんですね。

テレビドラマ『ハル 〜総合商社の女〜』は、主人公がいろんな困難に立ち向かい、切り開いていくという爽快なストーリーなんです。シングルマザーでもある主人公を家では息子が迎えてくれる。そういう部分をフューチャーして歌にしようと思った時に、手のことだけじゃなくて、受け継がれていく愛情を柱にして歌おうと出来た歌なんです。

――親から自分へ、そして自分から大切な人へと継がれるもの。愛情だけではなく、生き方や、技術や物や、手によって渡されてゆくものはいろいろ。

ちょっと難しすぎたかなと思ったんです。伝えたいことと、歌詞としてどうかということは別なので、歌詞が先行しすぎた不安があったんですけど、伝えたいことにこだわった分、たくさん聴かれれば聴かれるほど浸透してゆくかなと。いろんな意見があって面白いなと思いつつ、あせらずにちゃんと解釈してもらえるように届けていきたいと思います。

――Music VideoのフルバージョンがYou Tubeにて公開中。こちらも、手にフォーカスを当てたストーリーが胸に来ます。

はい。こちらもぜひ見てほしいですね。

――2曲目は「新たなあなたの応援歌に」と作られた「坂道」。“自分をだましてないか”“諦めかけていないか”と次々問いかけられるうちに、歌の中で自分の心を探し当てていく感覚になります。前作の取材の時に、応援歌は慎重に書くとおっしゃっていましたね。

まさにそう、アルバムの中では最後に出来た曲で、一番慎重に書きました。サビはけっこうまっすぐなポジティブさを持っているんですけど、Aメロは他の応援歌にない視点。たとえば“謙遜がいきすぎて弱気に変わっていないか”ってけっこう僕とかはあるんですけど、自分の殻を破って突っ走って勇気を出さないといけない時もあれば、それが調子に乗っているとみられる時もあるわけで。みんなそのせめぎ合いの中で自分を見失ったりもすると思うので、そういう時に何も考えず駆け上がれるような歌を作りたかったんです。以前ディレクターから言われた「見る前に飛べ」っていう言葉みたいに、「考える前に踏み出せ」みたいなところが伝わればと書きました。

――イントロからショータイム!な曲は「東京ドリーム」。

映画『ラ・ラ・ランド』とか、ミュージカル調の4ビートでライブに合うように出来ないかなと作った曲。変に早い8ビートが少ない分、そういうところでみんなと笑顔になれる曲をと思ったんですね。そうしたらキーボードの始ちゃんがいい具合に具現化してくれたので、ライブでもいいスパイスになると思います。

――「足りない」は、間奏でピアノが心のように壊れた音を奏でていて・・・

すごいことになっていますよね。

――バンドならではという、全員で作り上げている感がありますね。

今回も全体的に、前作同様バンドメンバーひとりがイニシアチブを取ってアレンジをしていくスタイルでやったんです。この曲はギターの村中がアレンジしました。「別の人の彼女になったよ」って曲が今年広がってくれて、そのサイドストーリー的な感じの曲をという話になって出来たんですが、あの曲に寄せつつ、もう少し牙を剥いたようなサウンドに仕上がったので、僕らも優しいあったかい感じとは別物のwacciの良さが出せたのかなとは思いますね。

――この歌はとてもつらい想いが描かれてはいるんですが、ラストの“あなたの好きなわたしはもういなくなるよ”に救いがあって、ようやくほっとするような。

この歌で希望を描くのはすごく難しくて。でもやっぱりどこかで一筋・・・半筋くらいの希望を入れてあげないとって思った時に、その一行!でしたね。強がりとも取れるし、前を向いてきたと言える一行でもあると思うので、そこはこだわりました。

――橋口さんは男性なのに、どうしてここまで女性の心理描写が出来るのだろうと不思議です。

この曲って、主人公のキャラクターがはっきりしているんですよ。ふだん仕事もバリバリできて、ちゃんとしている人ゆえにプライドが高くて恋愛では奥手になってしまう。甘え上手な女性に彼を取られてしまう人が、別れた後も続いてしまっている関係、失恋につらい思いをして、ちょっとキレている。相手に怒りを覚えつつも好きで、でもどうしようもない気持ちを抱えている、そんな絵が浮かんだので、描けたんだと思います。

――ライナーノーツに「恋にはさよならが二度ある」とありますね。

そうですね。別れた瞬間と、忘れられた瞬間、その間のもやもやが歌になると思うので、書きました。この曲は、女性がどう思うのかが怖かったので、共感の反響が来ると勇気がもらえます。

――「三日月」は、月と桜紅葉の風景に招かれながら、せつなさに浸る歌。春の三日月と秋の三日月は違うんですね。いつか三日月の歌を書きたいと思っていたのでしょうか。

メロディーは以前からあったんですが、三日月という言葉しか入れてなくて。今回、三日月の歌を書きたいと作り始めてから、そういえば、角度が違うなと。春の三日月は寝そべっていて、秋の三日月は縦になっている。だから春の三日月はお酒がよく入ると昔から言われていて。これは秋の三日月なので、相手への恋の気持ちが秋と共にこぼれていく、という失恋の気持ちが描けたらと、歌詞の教科書に使ってもらえるくらいに比喩表現にしたんです。

――アレンジが、最初はやわらかなピアノだったのが徐々にざわざわした音になっていく・・・

そうですね。かなりうしろに向けてエモいというか、力強いものになっていってますね。女性の感情を表現しています。

――どうしようもなくせつないです。

片思いって結局そういう部分が見えますよね。それでも友達でいたいと思えば思うほど、その人が別の人に恋をして、幸せそうに話をするのを目の当たりにするわけですから、けっこう来るものがありますね。

――二度と会えない人を思い浮かべたのは「太陽みたいに」。

年を重ねるごとにいろんな別れがあるじゃないですか。そのたびに、どんなにさよならを意識していても、後悔はする。もっとああしておけば良かったとか、もっとたくさんいろんなところに行っておけば、あの時にああ言ってあげればという感情がつきまとう。でもそういうふうに後悔してしまうけど、実は出来たこともたくさんある。そう思えるのはその人を思い浮かべた時に、その人はいつも笑っているから。いい思い出だって作れた、決して不幸ではなかったと思う。そう伝えたくて書いた歌です。

――「どうかしている」は、怒りから歌を書くことに挑戦した曲だそうですね。

ロックバンドはよく怒りをテーマにしてると思うんですけど、僕は喜怒哀楽の中で一番歌にしていないのが“怒”の部分なんです。今回はベースの小野がアレンジしてくれた感じが攻め攻めだったので、これで挑戦してみたいなと思ったんです。

――“今日も上手に笑ってあげなくちゃ”というフレーズに、周囲に溶け込もうとする苦しさが伝わります。

学生時代、けっこうひとりぼっちだった時期があって、つらかった経験があるのでいつかいじめをテーマにしようと思っていたんです。それが書けたという感じですね。いじめとかってテレビで取り上げられたりする時に、一番言われる最終的な答えが「逃げろ」なんです。でも当事者としてはその言葉に違和感があった。「逃げろ」って、どこに?と。「逃げろ」じゃなくて「ほかの場所へ行こう」だと思うんですね。そこから目を背けているんじゃなくて選択肢のひとつとして、そこじゃないところへ自分の意志で行こうとしている、そういう感覚じゃないと、と思ったんです。出来る限り、直接的ではなくわかる人にはわかるように書いた歌ではありますね。

――客観的に書けるようになった今だからこその言葉。

その時の自分に言ってあげたい言葉みたいなものが、リアルな描写と共に書かれていますね。つらい状況にいる人が、ちゃんと胸を張って、それだ!って言える選択肢を、ある程度先まであげられたらいいのになと思います。自分は選択肢がなかったのでとにかくそこで頑張るしかなかったんです。

――この歌には寄り添う感がありながら、やさしさより力強さを感じます。

僕も自分をより出している曲であるので、力強く自信を持って、これに共感する人に寄り添える、そんな気がします。

――「結」は、2019年5月配信されたシングルで「令和初のウエディングソング」としても注目されました。

島田昌典さんが素晴らしいアレンジをしてくださって、4年前からライブで披露していた大切な曲。リリースを待ち望む声をたくさんいただいていたんです。等身大のラブバラードですね。

――9曲目の「ピント」は、最初のタイトルが「老眼」だったとか?

近すぎて見えない、遠いと見えるという歌なのでそうしたんですが「老眼ってどうなの!?」と言われて「ピント」になりました(笑)。やっぱりね、人と人ですから、近くあればあるほどいろんなことが見えなかったり、ありがとうのシーンが当たり前になったり、言わなくてもわかるでしょ?ということをお互いが思うようになってしまう。大事な言葉を言えていなかったり、ずっと一緒にいるからおざなりになる部分が出てしまったり。本当は幸せなのにそれを見落としてしまいがちになるので、よくある「幸せは足元にあるよ」じゃないですけど、そういうことを老眼に重ねて書きました(笑)。

――「元カノの誕生日」はwacciの真骨頂、のび太系ソングの令和初作品。

「まっぴら!」とか「男友達」とか、情けない男の子をテーマに書く、のび太系ソングの新しいバージョンですね。元カノの誕生日を男は覚えていがち、という歌です。これはあちこちでピックアップしてもらう曲ですね。

――橋口さんは、つきあっていた人の誕生日を覚えているのでしょうか。

僕はですね、歴代の彼女全員、いや、歴代というほど、そんなにいないですけど(笑)でも、全部覚えているんですね。例えば時計を見た時に、11時24分だと、ああ、11/24・・・みたいな紐づけをしてしまいます。本当に未練があった頃は、連絡を取るなら今日しかないと、“おめでとう、元気?”“最近どうなの?”って連絡を取ることをやっていましたね。

――へぇ〜

へぇ〜、って・・・

――歌詞の通りなんですね。そして句読点もない“ありがとう”が返ってくる・・・

女の子は元カレのことは本当にどうでもいい、っていうパターンが多いと思います。「別の人の彼女になったよ」のように、ひとつは忘れられない恋を持っているにせよ。これも、聴いた人同士で「わかる」「わからない」って話題にしてもらえたらなと思います。

――「ここにいる」は、歌うことについて思いが伝わる楽曲。

ファンへのメッセージは、けっこう書いてきているとは思うんですけど、自分が歌っていること、歌うことに対しては今までなかったなと。バンドとしてというより自分として、歌とどういう風に向き合っているかを書きました。

――メンバーのみなさん、共感されたのではないでしょうか。

メンバーと詞についてあらためて話すとかはないですけど、ライブでやる時は、意思を統一しやすい歌だと思いますね。

――音楽が、笑顔と涙を繋ぐ架け橋になるよう、心と心を繋ぐ架け橋になるようにと願いを込めて歌を届けていらっしゃる。

はい。特に僕らみたいなバンドはそうあるべきだと思います。音楽って「なくても生きていけるけど、あるから生きてこれた」、その程度であり、それほど大きなもの。災害とか台風とか、今年すごかったですけど、そういう大変な時に音楽は一番最初に必要なものではないと思うんです。でも何年かして振り返ったら、あの時、歌があったから生きてこれたなっていうぐらいのチカラはある。自分が信じる音楽のチカラ、そこにかなりこだわって書きました。

――「今日の君へ」はレコーディングの現場をいろんな意味で明るくしてくれたという歌。いろんな意味で、とは?

この曲は本当に高校生みたいな気持ちでずっと爆笑しながら、この速さのビートの曲をやったので。

――爆笑しながら?

はい。「指が追い付かないよ、ギャハハハ!」みたいな感じで。メロコアちっくな曲で今までやっていなかったんです。毎日、今日は自分史上最高だ!っていう歌です。

――「Buddy」は2019年7月配信シングル曲。夢を追いかける人の背中を後押しし、未来へ踏み出す人を応援する青春ソングであると共に、wacciの絆も届く歌。

これは今年春の47都道府県ツアーの時に出来たんです。ずっとやってきてこの歌が出来てファイナルで披露したので、wacciをここまでやってきたこと、ツアーをやってきたこと、メンバー同士もそうだし、スタッフ同士もだし、お客さんもそう、なんかこう夢が叶ったかどうかはわからないけど、夢を追いかけることで出会った人たちや、感じた気持ちだったり、見られた景色だったりは、すごく尊い宝物だなということを歌にしました。ちゃんと抱きしめてその先の未来へいこうという想いです。

――そしてボーナストラックには「別の人の彼女になったよ」が。

はい。この歌がとても広がってくれているので、これをもう一度アルバムに入れるという手法を取って、なんでもいいからとにかく他の曲も聴いてもらおうという戦法です(笑)。

――ミュージックビデオのアニメーションバージョンもとても惹かれます。

イラストレーターのごめんさんが描き下ろしてくださいました。YouTubeでもコメント欄に恋愛エピソードがバーッと書いてあるように、人それぞれお持ちのエピソードと共にこの歌を聴いてほしいですね。

――そして2年連続2度目となる47都道府県ツアーが開催中です。今回はアコースティック / ライブハウス / ホールツアーの3編成となる、過去最大規模のツアー。前回のツアーはいかがでしたか?

まさに、自分たちに向いていたツアーでしたね。みなさんが日常を営んでいる地へ自分たちから出向いて歌を届けるということが。だから「必ずまた来るからね」と約束したところへ「会いに来たよ」とちゃんと伝えに行くためにまた47都道府県ツアーをやっています。

――アコースティック編を経て、ライブハウス編では12月に三重・静岡とあり、5月からは初のホールツアーです。

僕らずっとホールツアーをやるのが夢だったんです。今回4ヶ所なんですけど、このホールツアーの成功を夢として、この47都道府県ツアーをやっていこうとスタートしました。次はもう一度みなさんが過ごしている場所へ足を運んでいって、一緒に叶えたい夢があるんだと。それはこのホールツアーなんだよ、と、ひとりひとりていねいに伝えて、成功させて、そうしたらその先の景色がおのずと見えてくると思うんです。それに向けて11年目を頑張っていきたいと思っています。

――笑って泣いて、元気になれるwacciのライブ。名古屋は5/17(日)日本特殊陶業市民会館ビレッジホール。

本当にいいアルバムが出来たと思っているし、あなたの一曲が必ず見つかると思うし、いろんな部分で共感してもらえるような一枚になっていると思うので、ぜひこの「Empathy」というアルバムを手に入れてほしいなと思います。そしてライブ! 2年連続でやっていますけど、ライブバンドとして成熟していっていると思うし、絶対に「ライブっていいな」「音楽っていいな」というのを心から感じてもらえるようなライブを一本一本やっていきますので、せっかく近くまで行くので会いに来てください。ホールツアーに向けて、夢を持って頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします!


インタビュー・文/早川矢寿子



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wacci Official Website >> https://wacci.jp
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