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「名古屋のお客さんはアツいですね。“なんで名古屋だけこんなに盛り上がるの!”っていうくらい」

2019/12/20 11:00


11/20にリリースした約1年半ぶり通算14枚目のオリジナル・アルバム「cherish」は、堀込高樹ならではの独自の世界観の歌詞と、生音とプログラミングが融合した耳を潤し肩を揺らすダンサブルなサウンドが絶妙なバランスでその世界に引き込んでいく。
KIRINJI TOUR 2020は3/20(金・祝)名古屋クラブクアトロにて!
アルバム制作について、名古屋ライブについて堀込高樹に話しを聞いた。

KIRINJI/堀込高樹(Vo,G,Syn,Key,Pg)、田村玄一(Pedal steel,Steelpan)、楠均(Dr)、千ヶ崎学(B)、弓木英梨乃(G)



11/20に14thアルバム「cherish」をリリース!

「音楽が真面目だから歌詞はふざけるっていうわけじゃないけど、イメージが飛躍する感じはいつも盛り込みたいと思っています」


――昨年リリースした前作「愛をあるだけ、すべて」からダンスミュージック色が強いように感じます。

ダンスミュージックをやっている気はそんなにありません。ただ、昔からソウルミュージックが好きでずっと聴いてきて、“そういう音楽をやってるつもりではいたけれど、そういう伝わり方はしていなかった”っていうことだと思います。例えば3rdのアルバム「3」(2000年)に収録された「イカロスの末裔」。あれもサルソウルっていうアメリカ・フィラデルフィアのダンスミュージック、ディスコを自分たちなりにやった明らかにダンスミュージックだったけど、当時は「ダンスミュージックだ」とは言われなかった。それで最近になって、ダンスミュージックの音像を意識してそれに近づけてみたら、わりとすぐダンスミュージック的な解釈になった、聴かれ方をするようになった感じがします。巷に溢れている音楽にダンスミュージックやヒップホップの影響を受けたものがかなり多いから、そういった音楽と同時に聴かれたときに「コシがないな、しょぼいな」って思われるのは嫌だなって思って。それであれば「あのくらいのボトム感があったほうが普通に今の音楽として認識してもらえるだろう」と考えて制作しました。

――今作「cherish」もトレンドを意識しての制作?

「この曲が流行ってるからこの曲みたいにしよう」というのはあまり考えてなかったです。最近はストリーミングで聴かれることも多いので、“今週こんな新作が出ましたよ”みたいなときに「古臭いのが混じってるな」って思われることはぜったい避けたい(笑)。それと、昔は70年代ぐらいの録音が好きで「いいな」と思ってやってきましたけど、息子が普段家の中で流してる音楽を耳にすると、はじめはピンとこなかったのが、ずっと聴いてるうちにある日突然「あ、これかっこいい」って思う瞬間があるんですね。なんかこう、耳が切り替わる瞬間があって、前作ぐらいから自分の中でそれが大きく切り替わったと思います。

――息子さんから影響を受けた。

そうですね。今高校生だけど、中学生のときから洋楽とか聴きはじめて、とにかく常に聴いていて、さっきも言ったように僕の耳が慣れてきた、「このくらいベースのボリュームがないとやっぱり物足りないな」って思うようになって。彼がたまにちょっと古い90年代の曲を聴いてると、「おや?」って。90年代もしっかり(ベースのボリュームが)出てはいるけど、でもなにか物足りない。

――「cherish」にはドラムを打ち込んだ曲がありますが、楠さん的にはOKですか?

理解してくれていると思います。僕は欲しい音色とかグルーヴの雰囲気が明確にあると、そうならないと気持ち悪いんですよ、当然、デモテープも作っているから。僕が求めているものが楠さんのカラーと合えば、もちろん楠さんにお願いします。例えば「Almond Eyes」は、8ビートでちょっとレイドバックしている感じとかすごく良いグルーヴが録れました。「「あの娘は誰?」とか言わせたい」みたいなスクエアでちょっと跳ねてて、ちょっとズレてるものは打ち込みの方が良いと判断しました。「killer tune kills me」も均一の跳ねが欲しかったから、打ち込みのほうが心地良さが出ると思ってそうしました。

――アルバムは、曲だけ聴いているのと歌詞を見ながら聴いているのとではまるでちがう世界が繰り広げられているようで、面白かったです。「雑務」は歌詞カードに「雑務 雑務 雑務」の文字がずら〜っと並んでいて、

ゲシュタルト崩壊を促すようなね。

――はい。「あの娘は誰?〜」は ♪black card チラつかせていたCEO♪のフレーズでぷっと吹き出したり、曲ごとにユニークなフレーズがあって、アルバムの中でまるでコントが繰り広げられているみたいで。詞を作る上で意識していることはありますか?

その曲のイメージに合いすぎると曲としての飛躍がないと思うんです。例えば「あの娘は誰?〜」は「ナイトプール」という仮題が付いていて、夜遊びをしてるひとたちのパーティチューンみたいなことで作りはじめた曲で、アレンジもそういう空気感に仕上がって、いざ詞を書こうとなったとき、やっぱりナイトプール的な言葉がハマるから欲しいんですよ、どうしても。だけど、曲の雰囲気に似つかわしいものだけで全てをまとめると空疎なものになってしまう。普段からナイトプールを楽しんでる人間なら説得力は出るけど、行ったことない奴が夜遊びを歌ってもしらけるだけだと思って(笑)、「すごく華やかだけど、実はけっこうヘヴィな現実がこっちにある」っていう、ちょっと違う局面を盛り込んだほうが曲として飛躍するんじゃないかなと考えました。

――「「あの娘は誰?」とか言わせたい」の「とか」が入っているのも面白い。

メロとのハマりで入れてみたら、人を食った感じになって面白いなと(笑)。

――「善人の反省」は、カッコ良いメロディラインに合わせて講釈を垂れてて(笑)。こんなふうに頭の中でごちゃごちゃ考えることあります。

「あいつな〜」みたいなことを考えるんですよ、「ちぇっ、どうしたらいいんだろう、あいつ」みたいな感じのことを(笑)。それが歌詞になっています。

――面白がりながら作ってる?

そうですね。真面目な表現ばっかりやっていても、つまんないかなと思って。音楽が真面目だから歌詞はふざけるっていうわけじゃないですけど、ちゃんとしたことだけでまとめてしまうとこぢんまりする感じがするんです。イメージが飛躍する感じはいつも盛り込みたいと思っています。


「言葉そのものにリズムがあるようなものを意識的に選んで“ラッパーが歌いました”みたいな感じの譜割になるように作っていきました」


――歌ったときの言葉の響きも重視している?

今回とくにヴォーカルの譜割をすごく意識しました。今まで自分が作ってきたJ-POP的な譜割で作ると、音を新しくしても古臭くなっちゃうので。例えば、昔、あるミュージシャンから作詞の依頼があったので書いて渡したんですね。「メロディに対してこう乗せるだろう」と予想した部分が、例えば「アメリカン」だったら3音で済むじゃないですか。でもそのひとは「ア・メ・リ・カ・ン」ってはっきり5音乗せてきたんです。「なんでこんな風に歌ったんだろう」と思ってよく聴いてみると、そのひとが活躍していた時代の歌の乗せ方で。そのときに、日本語の言葉の乗せ方次第で「今になるか、ちょっと前になるか」こんなにも違ってくるんだって実感しました。そのあと、しばらくしてから「自分の言葉の乗せ方を気をつけないとダサい聴こえ方をするんじゃないか」っていう瞬間があったんですね。ヒップホップとかR&Bの影響を受けた最近の日本語の歌い手たちの曲を聴いていると、やっぱり譜割が特殊で、3連符とか普通に入ってくる、ラップ的な譜割が歌の中に入り込んでる。で、「このニュアンスを自分でもやってみよう」みたいなところからはじめました。だから、先にメロディを作るんじゃなくて、先に詞を書いて、なおかつその言葉も、言葉そのものにリズムがあるようなものを意識的に選んで、今どきの譜割っぽくなるように、「ラッパーが歌いました」みたいな感じの譜割になるように作っていきました。

――YonYonさんや鎮座DOPENESSさんがアルバムに参加されているのも、そういった理由から?

ラッパーに参加してもらったのは、やっぱりグルーヴが良くなるからです。例えば「Almond Eyes」だと、歌のメロディは8分音符で流れてて比較的まったりとした感じじゃないですか。そこにクールめなビートがあって、3〜4分で完結させようと思えばさせられるけど、テンションの低いファンクにしかならない(笑)。だけど、彼のラップが入ることによって温度が上がってグルーヴも強力になる。ラップってそういう効果があると僕は感じていて、RHYMESTERとやったときにとくにそれを感じたのですが、「The Great Journey」(アルバム「ネオ」収録/2016)はもともとベースがすごく激しく動いてグルーヴィーな曲ではあるけど、彼らがラップをした途端にぐんと上がってさらにグルーヴィーになった気がしました。ラップでグルーヴを補強するみたいな役割をKIRINJIでは求めているのかもしれませんね。

――弓木英梨乃さんの可愛らしい歌声……萌え声にもなにか狙いはありますか?

単純にいい声だなと思ってお願いしました。萌え声的な捉え方もされますけど、アイドルとかアニメの声優さんが歌っているのとは明らかに異質。彼女の声はぱっと聴き萌え声だけど、よく聴くとすごくナチュラル。萌え声ってある程度作り込んでるけど、彼女の場合は「普段喋ってるような感じが僕はいちばんいい声だと思うから」って伝えて歌ってもらっているから、作為的ではないんですね。ピッチもリズムもすごくちゃんとしていて、かなりプロフェッショナルです。

――ソウルフルなヴォーカルを入れるとハマりすぎてしまう?

R&B的な雰囲気の「killer tune kills me」にブラックミュージック的な歌い方をするひとを入れたらハマるし、きっと「カッコ良い」って思うだろうけど、KIRINJI としてはコブシぐるぐる回す感じは「なんか違う」じゃないですか。KIRINJI がデビューしてから今までずっとやってることって、素に近い感じ、過剰に歌い込まない感じ、過剰に脚色されない歌声を中心に物事を考えていて、泰行もそうだったし、僕もそうだし。だから、弓木さんにもそういうものを求めています。それだけだと、さっきの話しのように飛躍がないからYonYonを呼びました。YonYonはラップも出来るし、歌も歌うし、その歌も弓木さんとは声の質が違って、クラブミュージックにハマってますから、ブラックミュージックのフィーリングも自然に出る。その対比がすごく面白いなと思いました。

――面白いし自然でした。弓木さんからYonYonに歌声が変わっても違和感がなくて。

そうなんですよ。


「cherishが足りない状態が全編を貫いてるっていう意味でのcherish。“cherishしようぜ!”っていう(笑)」


――レコーディング場所に「Home」とクレジットされていますが、ご自宅のことですか?

そうです。家に作業場があって、たいして広くないけど7、8畳のスペースです。スピーカーとコンピュータがあって、歌とベース、ギター、場合によっては簡単なドラムとかちょこちょこしたものはだいたいそこで録ります。

――宅録?

宅録って言っても昔よりも機材が良くなってて、スタジオにある48チャンネルを個人が持つのは無理だけど「ここの1チャンネル分だけだったら持てるよね」っていう。機材メーカーが1チャンネルだけを切り売りして出すようになったから「じゃあ僕、これ1チャンネル分だけ買います」って(笑)。どうせ歌を録るのに1チャンネルしか使わないから。スタジオで使っているものと同じようなものが個人でも手に入りやすくなって小さいスペースで出来るのと、あとは、コンピュータに録音してしまうので無限に録音が出来る。いろいろテクノロジーが発達したから、最近はかなりのアーティストが家で録るようになったし、家でミックスしているひともたくさんいます。

――と、ここで、今更ですが、アルバムのタイトル「cherish」の意味を聞かせてください。

「killer tune kills me」の最後に♪I want to cherish my tune♪って歌っていて、これはYonYonが考えた歌詞なのですが、アルバム制作に入る前から「cherishっていい響きだな」「cherishにしようかな」ってぼんやり考えていました。口に出しても気持ちがいいし、意味もいいし。歌詞の内容は別にcherishな感じではなくて、むしろ、cherishが足りない状態ですよね、「あの娘は誰?〜」とか「shed blood!」とか。「休日の過ごし方」にしても寂しいような思いをしているひと。cherishが足りない状態が全編を貫いてるっていう意味でのcherish。「cherishしようぜ!」っていう(笑)。

――チェリッシュっていうと年代的に「てんとう虫のサンバ」、エッちゃんなんですけど。

「年代的」を持ち出すとなにも決められなくなる。以前、KIRINJI でそのとき流行ってた「白いフリルが付いたシャツと白いパンツを履こう」ってなったとき、田村玄一さんが「白いパンツはちょっとなぁ。加山雄三みたいじゃん」って。「加山雄三!まったく頭になかったわ〜」と思って「大丈夫です、玄さん。今は誰もそんなこと思わないですよ」って(笑)。あと、スニーカーソックス履いてるけど、革靴から足の肌が見えたりすると「石田純一」って言われるとか(笑)。そういうステレオタイプなものの見方との戦いですね、なにかを表現する上では。


KIRINJI TOUR 2020は3/20(金・祝)名古屋クラブクアトロにて!


――名古屋はどんな印象をお持ちですか?

名古屋のお客さんはアツいですね。「なんで名古屋だけこんなに盛り上がるの!」っていうくらい。「演奏があんまりだった……」っていうときでも盛り上がってくれてるから「ショーとしては良かったな」って感じることが多いですね、ここずっと、何年も。お客さんに助けられています。

――3/20の名古屋クラブクアトロはどんなライブになりそう?

前作や以前のアルバムのものは多少お客さんも曲を把握してるから、そこまでアルバム通りにやらなくても楽しんでもらえる傾向があります。古い曲に関してはなるべく同期を減らす方向で、新作については同期も含めるけどなるべくひとの演奏に振り替えるような音にしていこうかなと考えています。

――では最後に、東海地区のみなさんにメッセージをお願いします。

すごく良いアルバムが出来て、今の編成になってからいちばん良いんじゃないかと自負しています。ダンサブルな曲も多くて、ライブもすごく良い内容になると思いますので、是非クラブクアトロでお会いしましょう。


インタビュー・文/早川ひろみ



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【LIVE INFO】

「KIRINJI TOUR 2020」 3月20日(金・祝) クラブクアトロ

 [問] クラブクアトロ 052-264-8211

KIRINJI Official Website >> https://www.kirinji-official.com
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