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クラシック界の貴公子 LE VELVETSが届ける、世界のミュージカル。

2019/11/11 18:00


柔らかく、上品で滑らかな生地、「Velvet」(ヴェルヴェット)に由来した、全員が音楽大学を卒業し、テノールとバリトンで構成されたヴォーカル・グループ『LE VELVETS』。
クラシックはもちろんロックやポップス、ジャズ、日本の民謡に至るまで、様々なジャンルの歌を自在に表現、独自の世界を創り上げている彼らの最新作は「WORLD MUSICAL」(11/13発売)。
世界のミュージカルを旅するような一枚を携えたコンサートツアーを前に、メンバーの佐賀龍彦、佐藤隆紀両氏にインタビュー!



――空前のミュージカルブームに寄り添い、メンバーそれぞれのミュージカル出演経験を活かした「WORLD MUSICAL」は、音楽監督にミュージカル界の蓋世の才、塩田明弘氏を迎えて作られたミュージカルの名作集。リリースを前に今、どんな作品になったと感じますか。

佐賀(テノール):ミュージカルというコンセプトにした時には、限定されたものになるかな?と思ったんですけど、ミュージカルという枠を通り越したものになりましたね。一曲一曲にメッセージ性があり、人の心に届くものがある。コンセプトは持っているけれど幅広い人達に届くアルバムになったと思っています。

佐藤(テノール):迫力ある強さであったり繊細であったり、ダイナミズムを感じるアルバムが出来ましたね。

――私はミュージカルを数回観たことがあるだけなのですが、聴いたことのある曲が何曲かあり、これはこのミュージカルの曲だったんだ!とわかってワクワクしたりもしました。

佐藤:それは嬉しいですね。選曲する時にテーマのひとつとして、ミュージカルを知らない人でも聴いたことのある曲も入れよう、と決めていきましたから。半分はみんなが知っている曲、半分はミュージカル通なら知っている曲というバランスで聴いてもらって、ミュージカルを知らない人でも入りやすく、かつミュージカルに興味を持ってもらいたいと作ったんです。

佐賀:メンバーそれぞれがやりたい曲を出しながら話し合っていったんですが、そんなに難航はしませんでしたね。これだったらみんな知っていると思うとか、これはコアだけどいい曲だから入れようとか、数時間で決まりました。曲順は「My Favorite Things『サウンド・オブ・ミュージック』より」で始まって、「THE STEPS OF TOMORROW(邦題:明日への階段)『ルドルフ 〜ザ・ラスト・キス〜』より」で終わるというのは最初から、音楽プロデューサーの塩田先生とメンバーで決めていて、あとは頭から聴いていただけると気持ちいいように考えてあります。もちろんこの曲から、と好みで聴いていただいても、興味を持って聴いていただけるならそれだけで嬉しいですね。

――「THIS IS THE MOMENT(邦題:時が来た)『ジキル&ハイド』より」、「The Phantom of the Opera『オペラ座の怪人』より」他、どの曲も想いを込めていらっしゃると思いますが、特に“今日語りたい2曲”を選んで、お話しいただけますか?

佐藤:ではまず、「Do You Hear the People Sing?(邦題:民衆の歌)『レ・ミゼラブル』より」を。ちょうど今年(ジャン・バルジャン役で)出演させていただいて、大変だった想いもありつつ、名古屋でも公演させていただいたので、この曲をLE VELVETSで歌えるというのはすごく嬉しいなというのがありますね。

佐賀:僕は1曲目の「My Favorite Things『サウンド・オブ・ミュージック』より」ですね。元々おもしろい和音構成だったりすることでジャズのスタンダードナンバーにもなっているんです。僕らはクラシックのグループですが、あえてクラシカルの迫力ある部分を封印して、和音の積み重ねとか、おしゃれな雰囲気でジャジーに作ってみたんですね。塩田先生がボレロのリズムから始めてジャズにつなげるというところを発案してくださって、そこにハーモニーを乗せていったら、今までにない僕達のハーモニーが生まれた。一曲目に、何が出来るかドキドキするものが出来たので、いっそう想いが深いです。

佐藤:佐賀さんはレコーディングの時にも、すごくこだわっていましたね。最初僕が気持ちよく歌ったら「佐藤くん、そうじゃない、ここはもっとこういうふうに歌ってほしい」と、いろいろディレクションをしてくれて。僕もこの曲はひとついいものが出来たという感じがします。

佐賀:もう一曲選ぶとしたら「シェルブールの雨傘」ですね。自分達のアルバムに入っている楽曲でありながら、聴くたびに「ああ、いい曲だなあ」と思うんです。LE VELVETSに合っているというのか、何度聴いても、じんと来るというか。いい曲になりました。

佐藤:この曲は佐賀さんの歌い出しなんですけど、めずらしい声で歌っているんです。ソフトな。

佐賀:僕は元々、固い声質なんです。

佐藤:今までの佐賀さんの歌からは聴いたことがないような、繊細で優しい歌声が聴けるので佐賀さんファン必聴曲ですね。

――では佐賀さんにとって挑戦曲でもあったのでしょうか。

佐賀:これがですね、僕としては歌い出したくはなかったんです。でもサビの歌い始めはバリトンの宮原(浩暢)さんに、そのあとは佐藤さんの包み込む甘い感じのサビにしたかった。で、その前に転がすようなポップスのメロディーがあり、そこはテノールの日野(真一郎)さんがぴったりだなと。そうなると僕が歌い出しをやるしかしょうがない。理想の形を追求した結果、僕が最初になったというのが正直な話です。

佐藤:でもその消去法の結果、佐賀さんの魅力がすごく出ていますね。普通に考えると宮原さんに行きそうなイメージがあるんですけど、佐賀さんが素敵で。え、これ誰が歌っているんですか?って思ったくらい。

佐賀:僕も出来上がって、これ、誰が歌っているの?って思った(笑)。今回はコーラスとか歌は、塩田先生にもアドバイスいただいたんですが、基本的にはメンバー同士でディレクションしあってみんなで作り上げたんです。

佐藤:そういうことは今まであんまりなかったんですよね、意外と。

佐賀:オーケストレーションは塩田先生に完全にお任せしていたんですけど、コーラスアレンジとか歌い分け、歌い方はお互いにディレクションしあって作ったので、そういう意味でも「WORLD MUSICAL」は思い入れあるアルバムですね。

――では、佐藤さん、もう一曲選んでいただけますか。

佐藤:僕は『エリザベート』にも(フランツ・ヨーゼフ役で)出演していたので、「CHATTEN WERDEN LAENGER(邦題:闇が広がる)」と言いたいところなんですけど、今回、「Sherry『ジャージー・ボーイズ』より」がね!

佐賀:ああ、「Sherry」!

佐藤:これがおもしろく出来たんですよ、本当に!実はこの「Sherry」は『ジャージー・ボーイズ』のミュージカルで出るよりもっと前、若い頃に歌いたいなと思ってCDをダウンロードしてメンバーに「これやってみたいんだけど」と聴かせたことが一回あったんです。ファルセットが変わった曲でもあったので、その時は却下になって歌わなくなってしまったんですけど、その曲がこうして歌えることになってすごく嬉しいんです。あと、佐賀さんが本人の声を真似してというか、そういうニュアンスで、ファルセットの高い歌声を歌っているのを聴いた時、これも新しいなと。今までのLE VELVETSであまり使っていないサウンドというか。新しい扉が開くな!と思ったんです。高いハイトーンの部分を佐賀さんと日野さんと僕で歌って、そして低音を宮原さんが支える。ものすごくおもしろい曲になって、それをまた塩田先生がボックスミュージックみたいに最後に音を仕上げて。

佐賀:ジュークボックスから流れてくるような。

佐藤:そうそう、そんな感じにしてくださって。

佐賀:1グループでトップが3人入れ替わって歌っている曲ってあまりないと思うんです。

佐藤:お気に入りの曲ですね。

――私は「Seasons of Love『RENT』より」を、どこかでさらりと聴いただけだったんです。今回、あらためて『RENT』の物語についても、この歌詞の意味についても調べたら、こんなに深い歌だったのかと。

佐賀:深いですよね。

――もっと自分の生き方、時間の使い方、概念を考えようと思いました。この楽曲自体が素晴らしいので、物語を知らない人にも、もっと広がるといいなと。

佐賀:この楽曲は、『RENT』のストーリーに沿ってはいるんだけど、物語から独立しても成り立つものという印象が僕にはあって。そういう可能性のある曲だと思いますね。

佐藤:このCDを聴いて、このミュージカルに行ってみよう、と観てからまた聴いてもらうと、聴こえ方が変わる楽しみがあるかもしれないですね。

――LE VELVETSは昨年10周年を迎えられました。節目にさまざまな思いを抱かれたことと思いますが、今後の活動に向けてどんな思いがありますか。

佐賀:僕達の活動って、カヴァーが多いんですね。だからこうしてミュージカルにコンセプトを持っていくっていうのは、今までの僕達を知っている人からも「あ、新しいことをするな」と思ってもらえると思うんですけど、これからも僕達の取り組みや、活動を通して「次は何をするんだろう?」と期待してもらいたいですね。常に新しいものを取り入れて、生み出していく。ステージとしてはもちろんだけれど、活動としてもおもしろいグループになっていかないといけないなと思っています。そんな僕達のフィルターを通して、聴いた方達もまた、新しいものを感じたり、生み出していってくれたらと。

佐藤:みなさんの心を揺さぶるような、感情が動くような歌をお届けしたいですね。CDでもコンサートでもそうですけど、聴き終わった時、見終わった時、BGMではなくて、良かったなーとか、心が動くような。そんなアーティストになりたいです。

佐賀:僕らのグループの感じって、一番年齢の下のところに佐藤くんがいて、年齢の上のところに宮原さんがいる。今日、歩きながら思ったのは、佐藤くんが太陽のような感じで、宮原さんが地面のような感じで、世界をパッと作ってくれているんですよね。その中に声も性格もそうですけど個性的な日野さんと僕が色付けをしていく、僕らってそういうグループじゃないかなって思うんですよね。

佐藤:ほおー!

佐賀:ただね…太陽と地面は、いいたとえが出来たんだけど、僕と日野さんをね、風とか、水とかでたとえたかったんだけど、ぴったり来るのが見つからず、まだ完成していなくて。佐藤くんが考えたたとえのほうがわかりやすいんですよ。ほら、ご飯の…

佐藤:ああ、あれね。宮原さんがご飯で、僕がお味噌汁だとすると、日野さんはそこに割り入れる卵。佐賀さんは、ちょっと味を変えたい時にかける一味。ピリッとさせてくれるスパイス。

佐賀:いてもいなくてもいいみたいな(笑)。

佐藤:いや、ご飯だけでは飽きるんですよ。味噌汁だけでも飽きる。

佐賀:でもご飯だけでも食べられるけど、一味だけでは食べられない(笑)。

佐藤:間違いない(笑)。今、この返しがまさにスパイスだけど。じゃあ一味じゃないものにしよう。考えます。

――ではご飯バージョンも、地球バージョンも、完成版?はいつかトークで聞けることを楽しみにしています(笑)。さて、そんなバランスのいいLE VELVETSのみなさんは名古屋にはどんな思い出がありますか?

佐藤:名古屋大好きなんです。おいしいものがいっぱいある。ミュージカルでも名古屋に来るとあっちこっちに行きますね。手羽先も大好きですし、ひつまぶしも味噌カツも好きなんです。好きなものいっぱい。毎回来るのが楽しみです。

佐賀:僕は親友が名古屋に住んでいることもあって、ちょくちょく遊びに来ているんです。焼き物が好きでノリタケの森にも行きました。あそこの雰囲気が好きで、工場見学もしましたし。美術館も好きなんですよ。今は無くなってしまいましたけど、えーと、僕、名前を覚えるのが苦手なんですけど、あ、ボストン美術館かな。

――金山にあった美術館ですね。ホテルの中にあった…

佐賀:当たってた! よく間違えるんです。

佐藤:珍しい。僕の名前も間違えるのに(笑)。

佐賀:間違えないよ!佐山さんの名前は絶対間違えない。

佐藤:佐藤だよ!(笑)

――この取材がラジオ放送ではないことが惜しいです(笑)。息がぴったりですね。ではコンサートの思い出はいかがでしょう。

佐賀:名古屋のお客さんは拍手が正直ですね。いい時はものすごい拍手をいただきます。

佐藤:僕は名古屋のお客さんにあったかいイメージがありますね。シビアなのは大阪かな。火が付くとバン!となってくれるんだけど、大阪はなかなかトークで笑ってくれない。

――トークの話でしたか(笑)。

佐藤:名古屋はね、僕達はいつもお客さんが帰られる時にハイタッチ会をやるんですけど、その時いつもいい笑顔で、楽しかった!って言ってくれる人が多いんですよ。お会いできるのが楽しみですね。

――コンサートツアー2019「WORLD MUSICAL」名古屋公演は、11/25(月)アートピアホールにて。どんなものになりそうでしょう。

佐賀:今回11年目で、CDもそうでしたけど、ツアーもこういうものにしたいとか、こういう人達とやりたいとか、自分達の想いやイメージをかなり落とし込められたんです。これは自分達にとっての挑戦でもあり、ワクワクすることでもあり、責任もあることなので、お客さんにどれくらい楽しんでもらえるかドキドキしています。いいものになっていると思うのでぜひ遊びに来てもらえたらと思います。

佐藤:今回、本当にみなさんに楽しんでいただきたいというところに、もう一回気持ちを戻してというか。自分達の音楽性はこうだ、というのはもちろんあるんですけど、やっぱりお客様の笑顔が見たい、そのためにどうしたらいいか、本当にメンバーで考えました。今までメンバー発信でここまでやったコンサートはないというくらい、メンバーが関わって作っているコンサートになっているので、やっていても楽しいですし、楽しんでやらないと楽しんでもらえないなというのはすごくあって。今までと空気感の違いを感じてもらえるコンサートになりますし、楽しみにしていただければと思います。

――初めて行く人にアドバイスはありますか? 敷居を高く感じる人もいるかとも思うのですが。私はドレスコードってあるのかな?と気にかかります。

佐藤:ドレスコードは無いですけど、おしゃれをしてコンサートに来るというのもひとつの楽しみだと思うんです。敷居を感じなくていいなという方はそのままで、敷居を感じることでおしゃれを楽しめるなら、感じてくれて全然かまわないです。逆に自由なグループなんじゃないかと思うんですよね。ふらっと来ても全然楽しんでもらえるコンサート。“ど”クラシックなものを延々とやるグループではないので、そのへんを誤解しないでくれたらと。僕達が楽しんでほしいのは、幅広い意味での音楽。それを音大出の人達がやるとこうなるというコンサートです。

佐賀:「こういうアーティストに出逢いたかった」と言ってくださる方が、すごく多いんです。それは僕達が本当の音楽そのものを愛しつつ、それを楽しんでもらうことを常に考えているからそう思ってもらえるのかな?と思うんですね。あんまりお安いチケットではないので、どうしたって気合を入れて観に来ていただけると思うんですが、そうした意味では高級感のあるエンターテインメントとして楽しんでもらえるかなと思います。


インタビュー・文/早川矢寿子



New Album 「WORLD MUSICAL」 Now on sale
[初回盤]

[通常盤]

LE VELVETS Official Website >> https://www.le-velvets.com
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