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「20周年に向けて、今一度走り出す」 矢井田瞳インタビュー!

2019/09/21 12:00


矢井田瞳が自身の愛称である“yaiko”名義で、8月14日にミニアルバム『Beginning』をリリースした。3年ぶりとなった新作は来年迎えるデビュー20周年に向けたプロジェクトの第1弾となる。彼女がこれまでに作り上げた代表曲「My Sweet Darlin'」「How?」「Life's like a love song」のリアレンジバージョン、そして新曲「いつまでも続くブルー」の全4曲を収録。今回の制作にはアコースティックユニット・高高-takataka-の2人と、サウンドプロデューサーとしてUNISTのGAKUが参加し、豊潤なアレンジが施された楽曲が集まった。20周年イヤーを目前にして臨んだ今作について語ってもらった。



「いつも音楽が近くにあることの喜びの方が上回っていた」


――今作は3年ぶりのリリースとなりました。

来年に20周年イヤーを迎えるにあたり、原点回帰としてきちんと振り返ることも必要だなと思ったんです。これまでに作った自分の曲を、今の私の音に変換して収録する。そうやって未来を感じてもらえるようなサウンドでセルフカバーをすると、一つの作品として綺麗にまとまるんじゃないかなと考えました。だから今回は新曲を1曲、セルフカバーを3曲収録したこの形になりました。

――来年迎える20周年イヤーを意識された制作だったんですね。

そうですね。デビューして10年目くらいまでは「あっという間でした」という捉え方をしてたんですけど、さすがに20年ともなると、「あんなこともあったな……、こんなこともあったな……」と時間の重みが違いました。具体的に思い浮かぶほどいろんなことがありましたね。でも、いつも音楽が近くにあることの喜びの方が上回っていたんです。そんな感覚があるから続けられたと思っています。

――音楽への喜びがあったからこそ、20年というキャリアに繋がったんですね。

デビューした当時は20年後の今を視野に入れて走ってはいなかったので、目の前の叶えたい思いや作り上げたいものを一つひとつやって、気がついたら20年経ってたという感覚が強いですね。私って、遠くの目標を立てて「あ、無理だ」と諦めちゃうよりかは、近くの楽しそうなことや出来そうなことを積み重ねていって、「気付いたら結構遠い距離まで来たな」という感覚が好きで。そうやってきて今、20周年にもうすぐ差し掛かろうとしてるんですよね。


「振り返りもせず出来上がりまで走り切れた」


――新曲「いつまでも続くブルー」はこの3年の中で作り上げていかれたんですか?

いや、これはすごく最近に作った曲で、今年の5月か6月に作りました。

――え! そんな最近の曲なんですね。3年の間に曲は作られていましたか?

例えばワンコーラスだけとか、ワンフレーズだけとか、そういうフォルダは自分の中にありました。でも、どれも勝手に先回りして諦めちゃったりして、途中でブチブチ切れてるのが多かった。そんな中で今回の制作は高高-takataka-の2人とプロデューサーのGAKUさんを含めた4人で、「セルフカバーをどんな風にしようか?」というところから制作が始まったんです。頭の中に演奏者とプロデューサーの顔が浮かんだ上で書いたので、「いつまでも続くブルー」は振り返りもせず出来上がりまで走り切れたんです。それがあるとないとでは違うんですよね。

――4人での制作が新曲を作り上げる原動力になったんですね。

でも最初の方は初めての形態だったから、不安も入り混じっていて。この不安を取り消すには何回も会って一緒に音を出すしかないとたくさんリハーサルスタジオに入りました。いろんなアレンジのパターンをずっと弾いていると、どんどん会うごとにグルーヴもできてきて、それぞれが出すアイディアに「こうしてみよう」とすぐ答えてく連携ができてくると楽しかったですね。高高-takataka-の2人がただコードを弾くだけじゃなくて、ギターのボディを叩いてドラムでいうキックやスネアのような音を出したり、足元でエフェクティブな音をたくさん出したりという奏法だったことも面白かったんです。2人の中で私がどう演奏するのか、設計していくのが大変でもあり楽しかったです。


「こびりついた固定観念を崩してくれるのを待っていた」


――カバー曲のひとつ「My Sweet Darlin'」は矢井田さんの代表曲ですよね。私もよく聴いていたんですが、当時の思い出が蘇るのと同時に、新たな魅力を発見するようなアレンジになっていて、1曲で2つ美味しいと感じました。

聴いた人もそういう風に感じてくれるといいなと思って作っていたので、ものすごく嬉しいです。「懐かしいなあ」だけでは終わって欲しくなくて、また過去の曲がアコギで弾いているだけでも嫌で。アコギ3本で新たなパワーを生み出したかった。そんな未来を作りたかったんです。

――慣れ親しんだ曲に、新たな価値を付加することへのプレッシャーはありませんでしたか?

アレンジが出来上がるまでは、“ハードルが高いな”と感じていましたね。特に「My Sweet Darlin’」は自分の中にも固定概念がこびりついてる曲なので、これを自分自身で全部崩すのはちょっと難しくてGAKUさんと高高-takataka-が崩してくれるのを本当に待ってた。

――アレンジはすべてお任せされていたんですか?

すべてお任せではなくて、その場にはいました。アレンジがなされていく横で「あ、それ好き!」とか、「ゆっくりするんじゃなくて……」とか、何かあればひょっこりはんする立ち位置でいました。すごいドキドキした瞬間もありましたけど、サビのリズムをGAKUさんが思いついてくれた時は飛び上がって「ありがとー!これー!かっこいいー!」って言っちゃいました(笑)。「My Sweet Darlin’」はアッパーで速いんですけど、それをスローにやるだけじゃないのが良くて。生まれ変わらせてくれました。


「実は全部繋がっている」


――今回のタイトルはいくつかの候補から選ばれたものなんですか?

20周年に向けて“今一度走り出すぞ”というイメージで浮かんだ言葉を何個か考えたんです。例えばRestartとか、Rebornとか。でも「re-」というのが“巻き戻す、戻る”みたいなイメージで、“やり直し”みたいに感じてしまったんですよね。候補の中で「Beginning」はストレート過ぎるかなと思ったけど、強さがある言葉だなと思えたんです。今の心情には合ってるなと思い切ってこのタイトルにしました。

――「re-」がつく言葉は、カッコいい意思表示になるという面はあると思いますが、確かに過去が悪いものとして未来をいいものにしようという意味が込められてしまう。でも矢井田さんの過去も好きな方にとって、それがないものとされてしまう怖さが生まれてしまいますよね。

まさしく、それです! 不思議だけど「re-」がつくと、マイナスなイメージになっちゃうんですよね。でも「Beginning」だとスパーン!って突き抜ける感じになるのが気持ちいいなって。

――だからこそ「Beginning」という言葉は過去も認めている意味になりますね。その言葉を選んだ矢井田さんの強さを感じています。

でも私もうまくいかない時があるとリセットして切り替えてやってきた時期もありました。ただ案外、切り替えて進んでるつもりが輪っかになってて、また同じところに戻ってきいるんですよね。「あ、そういうこと!?」みたいな(笑)。20年やってきていると、そういった人生のヒントも分かってきました。例えば、嫌なものから逃げようと思って別の方向へ進んだとしても、ゆっくりゆっくり逃げてるうちに一周回ってまた対峙したりとか。また人との人との出会いも、大きなサークルになってるとなんとなく感じる年頃になりましたね。若いうちは全然あっち行ったりこっち行ったりしてもいいと思うんですよね。いつか実は全部繋がってるとハッと思う時期が来ると思うので、そんな時が来ると楽しみにするのもいいんじゃないかなって。


「まだ全貌が見えないからこそワクワクして楽しい」


――高高-takataka-の2人と演奏する機会が多いかと思いますが、手応えはいかがですか?

私のデビュー当時のファンの方も弾き語りの姿は見ていてもアコギ3本っていうのは初めてのスタイルなので、初めての感覚だって言ってもらえることが多くて嬉しいです。3人とも同期を使わないので同じアレンジだとしても毎回違うし、その時の音楽が鳴っているんですよね。楽しんでくれるファンの方が多いと感じています。

――ライブに臨むスタンスは変わってきましたか?

最初の方は目を合わせたい時に目が合わないとか、いろいろありました(笑)。でも最近は本数を重ねていくとパッと見ればパッと目が合う。それってすごい大事なんですよ。本当は4小節で入るところをやっぱり8小節にするということも、パッの仕方で分かってもらえる。そういうのって一緒にずっとやってないと分からないことで、ライブも3人でやればやるほどチームワークができているなと感じています。

――そういった新たな感覚が生まれてくると、ますます来年の20周年イヤーが楽しみになりますね。

この20年間の集大成として、楽しいことはたくさん発信していきたいなと思います。まだ誰も全貌が見えていないことばかりなので、そういうことがある方がワクワクして楽しいんですよね。“ああやったら、こうなるだろうな”って結果が分かってることをずっとやっていくよりかは、誰もわかんないけど“いい感じがするからやってみよう”とポンと投げかけてそこに向かってやってみる。すると終わった後、分かってくることもあるし、楽しい気持ちにもなれるんです。


インタビュー・文/笠原幸乃



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矢井田瞳 Official Website >> https://yaiko.jp
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