記事詳細

「意識は銀河に行ってて、今までとは比べものにならないくらい素晴らしい歌を唄うことを約束します!」THE PINBALLSのVo.古川にインタビュー!

2018/12/13 10:00

シングル「アダムの肋骨」で示唆していた通り、11/14リリースのメジャー1stフルアルバム「時の肋骨」で彼らの世界はさらに広がった。内側と外側、意識はどちらにも放たれ、持ち味である荒々しさと繊細さの純度が増し、聴く者を痺れさせる。ヴォーカル古川の柔らかい口調で明かされたのは、ストイックすぎるほどの向上心だった。



――「時の肋骨」のタイトルは「アダムの肋骨」からきてるんですよね。

そうです。まず一つの大きなテーマとして、細部と全体があったんです。曲を作る時も「アダムの肋骨」という細部と、「時の肋骨」というフルアルバムの全体、それが相互に作用してたんです。全体と細部を一緒に作っていくことで、「アダムの肋骨」から「時の肋骨」というタイトルも導き出されましたし、逆に言えば「アダムの肋骨」も「時の肋骨」と作用し合いながら、どんどん作っていったという感じなんです。

――最初からアルバムありきで動いてたんですね。

わかりやすく言うとですね、このアルバムは宇宙をイメージしたんです。宇宙は全体のイメージで、細部は人間の身体、たとえば「アダムの肋骨」とかイメージして、「時の肋骨」はもうちょっと大きい神様の身体のような。そういう全体と細部の両方をイメージしてたんです。なぜかっていうと、恒星が太陽の周りをまわっていることが、人間の体内で原子核のまわりを電子が周回したりしていることに似てるって話を聞いたことがあって。全体と一番ちっちゃいパーツが似ているっていうのが、このアルバムのタイトルに込めたテーマなんです。

――「アダムの肋骨」自体の成り立ちは?

アダムの肋骨からイブが生まれたので、アダムの肋骨っていうのは、つまりイブのことで、イブっていう風に置き換えてもいいし、イブのことをイメージして作ったんです。これもまた不思議な一致なんですけど、肋骨っていうのが片側12本あって、両方で24本あるんですね。これが時とリンクしているように感じて。

――確かに一年は12ヶ月ですし、時計も12表記ですし。

それがこのアルバムのもう一つのテーマでもあるんですけど、安定した数字っていうのはたまたま安定してるからそう感じるのではなく、真理みたいなものがあるから自分たちは気持ちいいと感じるのではないかと。12でひとまとまりするのも何か落ち着く真理みたいのがあって、そこにいくのかもしれないって。

――十二支、12星座、1ダースも12単位ですね。

たぶん人間は経験的に安定した数字をなんとなくわかってた気がするんですよ、文明が始まる前から空を見て、月が12回満ち欠けしたらまた同じ気候になったとか。どっちが先かわかんないですけど、それが自分たちの生活に密着して、それによって安心感だったり、その数字が落ち着いたりすると、切ってもきれないものになるじゃないですか。音楽においても切ってもきれない感じで、密着して欲しいんですよね。

――もう一つのリード曲「失われた宇宙」も、まさに宇宙のこと。

宇宙を意識してというと、少し大袈裟かもしれないですけど、孤独感みたいなものを表現してるんです。地球で一人ぼっちは、宇宙で一人ぼっちって感じがするんですよね。地球では寄る辺がなく一人ぼっちだと思うとすごい孤独なんですけど、もっと広い視野を持って全宇宙で一人ぼっちだと思うと、これがなんか悪くない感じがするんですよ。

――もっともっと引いたところからの目線を持つ。

そうなると宇宙でたった一人は淋しいなじゃなくて、宇宙で一個しかないんだなって、思いません? 俺って東京キで一人ぼっちとか、国分寺で一人ぼっちとか、あきる野市で、ここは行ったことないんですけど(笑)、一人ぼっちとか。

――鶴ヶ島(古川の出身地)で一人ぼっちとかね。

あ、覚えてていただいて(笑)。学校で一人ぼっちだとか、この部屋で一人ぼっちだとすごい淋しいじゃないですか。でも俺は宇宙で一人ぼっちだと思うと、いや、俺って一人しかいない、なんかすスゲェって思いません?

――日常の大きな悩みが、大自然の中ではちっぽけに見えるのと似ているのかな?

まさに同じだと思うんですよね。もっと銀河を離れていくと、一人ぼっちじゃねえ気がしてくる。ちょっとくらいの孤独感はみんなあるんですけど、ペテルギウスとか恒星を考えるとなんか一緒だなと、仲間みたいな、そういうイメージなんですよね。孤独を感じてもその裏側にはすごく連帯感とかもあるし。

――人間も自然の一部ですし。

はい、自然との一体感もあると思うんです。

――まさにリード曲にふさわしい1曲だと。

実を言うとこのアルバムの中で一番気に入ってるのは、12曲目の「銀河の風」なんですけど。

――実は私もこの曲好きです。

すごくいいですよね。リードにしたいくらいなんですけど。ただ6分くらいあるし、深く付き合って「時の肋骨」を聴いてくださった方に、ゆっくり聴いていただきたい感じもあるんで。

――メロディーが耳に残りますし、”君は僕の最後の魔法使い”ってフレーズも気に入ってます。

これ一番恥ずかしいんですけどね。でも歌詞とかは恥ずかしいもの書かないとダメなんですよね。僕、普段書いてて恥ずかしいと思わないんですけど、あの歌詞だけは恥ずかしかったです。

――短い曲も多いですね。潔い終わり方をしてたり。

「DAWN」はバツっと終わったり、「BEATIFUL DAY」はすごく短かったり。どっちかと言うと美しいものの定義を、華美なもの、装飾的とは逆のものだと思ってるんですよ。ゴージャスで装飾的なものを好むタイプと、シンプルなもの、そぎ落とされたものを好むタイプ、大きくわけて2つあると思うんですよ。で、僕はそぎ落とされたものが好きなんです。自分の部屋もなるべくものをなくしたい。

――実際そうなんですか?

実際そうです。見たところにものがあるのがいやなんです。理想は真っ白でなにもない部屋、それが好きなんです。美術館みたいな。

――逆にそういう空間が落ち着かない人もいますからね。

いますよね。もう少し温かみのある部屋が好きな人は。どっちかっていうと俺は壁だけ、線だけっていうのが好きなので、曲も必要でないならなるべく短く。出てくるコード進行も少なく。展開もなるべく少なく。

――言葉もリフレインを多用して、

多くは語らず。余計な言葉も言わず、切る。

――だからなのか、音楽にのせる言葉のチョイスにセンスが光ってますよね。

言葉の選び方は、ハードボイルドにしたくて。ハードボイルドと言っても、バキューン、ズキューンじゃなくて(手でピストルを真似て)、感情を廃して、固く茹でた卵みたいに、完結にすべて物事を語るっていうのがハードボイルドっていうことで。

――昔の小説家で言う、

ヘミングウェイとか。

――ですね。

ヘミングウェイが好きなので、そういう語り口を心がけています。

――古川さんの詞は映像が見えるものも多いですね。

そうだと嬉しいです。

――固有名詞も気になります。たとえば「ヤンシュヴァイクマイエルの午後」という曲がありますが、彼のファンでしたか?

彼はクレイアニメも作り、映画も撮られてる方で、ピングーみたいに可愛らしい作品を作る方だと勘違いしていて、名前もひと文字間違えて覚えてたんですけど、実際に観たらかなりソリッド。人間が机食べちゃうような怖い作品で、自分が想像してた世界とまったく違ってたんですよ。それがすごく面白かったイメージがあって。でも自分が空想してた世界は真実を知ってしまったことによって消えちゃったんですけど、その消えちゃった空想の世界を歌った曲なんです。

――幻想的な詞の世界も、古川さんの面目躍如たるところだと思います。

このアルバムの中でこの曲は、お昼のあとのゆっくりした時間を表現してたんです。なくなってしまったものを愛する気持ちっていうのが、午後に合うかなって。

――確かに漂う空気感は午後のようなゆるやかさ。そこから曲調が一転、次はハイテンポな「風見鶏の髪飾り」。この曲もストーリー的で映像が見えますね。

この曲はちょっと牧歌的。アルバムの一番骨組み的なストーリーになってる気がします。アルバム全体を表してるような。

――全体を表してるとは?

この歌は、最初に泣いてる女の子を笑わせようとしてる風見鶏がいて、その風見鶏がポキっと折れて、地面に落ちて、ある種、死を迎えることによって、再生してまた生まれ変わるっていうストーリーで、このアルバム全体がそういうストーリーになってる気がします。

――その中でインストの「回転する宇宙の卵」はどんな役割を果たしてるんでしょう。

これが「失われた宇宙」と対になってる曲でございまして、夕暮れがやってくる前の、日が落ちる気配がしてくる時間帯で、この曲がアルバムの中で特異点になっていまして、シンメトリーになってる話はしましたっけ?

――いえ。

4曲目の「失われた宇宙」が朝焼けの時間帯で、9曲目の「回転する宇宙の卵」が夕方のちょっと前の時間帯なんです。1曲目の「アダムの肋骨」はだいたい10時から0時かな? 夜中から始まって、2曲目の「水平と黒い犬」が0時から2時、3曲目の「DAWNが」2時から4時、4曲目の「失われた宇宙」が4時から6時、5曲目の「BEAUTIFUL DAY」が6時から8時みたいなイメージでどんどん作ったんです。

――なるほどなるほど。

そうすると、3曲目の「DAWN」と10曲目の「DUSK」だとわかりやすいんですけど、朝焼けと夕焼けで対になるようにできてるんですよ。1曲目と12曲目、2曲目と11曲目、3曲目と10曲目、4曲目と9曲目というふうに。で、4曲目の「失われた宇宙」をテープで逆回転させた音を、「回転する宇宙の卵」の頭でくっつけたりしてるんですよ。

――謎の音の正体はそれでしたか。

曲もシンメトリーになっていて、そういう仕掛けを随所に入れてるんですけど、「回転する宇宙の卵」も、生まれ変わりをイメージしてるんですよ。個人的な解釈になっちゃうんですけど、夜から始まって夜に終わるんですけど、「風見鶏の髪飾り」という死と再生をイメージした曲があったあと、自分の中では「回転する宇宙の卵」で違う次元に行くようなイメージなんですよね。身体がなくなってるというか、意識だけというか。

――魂だけ。

単純に言っちゃうと生まれ変わり。輪廻転生じゃないですけど、卵ってまた生まれるイメージがあって。自分たちの地球のこともイメージしてるし。ちょっと不思議な、ことによっては宗教じみちゃいますけど。

――今回は制作するにあたって深く追求しましたね。

自分がよくわかんないことも歌ったというか。

――個人的に気づいたのは、12曲中6曲に共通ワードが出てくるんです。”風”という。

「DAWN」「DUSK」は意識的に入れたので。自分が3曲目で歌った「DAWN」の風は、10曲目の「DUSK」では、また別の誰かが感じてる風で、”君は風”って「DAWN」で歌ってるんですけど、「DUSK」では生まれ変わって風になってるような。それで最後の「銀河の風」では身体がなく意識だけの状態で宇宙を旅していくような。

――メンバーの反応はいかがでしたか?

ドラムの石原天は天然なヤツなんですけど、僕がこういう細かいことを言うじゃないですか、すると「すごいね、いっぱい考えてるんだね」って(苦笑)。でも今お話した僕の諸々の細かいことって、どうでもいいと思ってるんですよ、僕がこんなことを考えてこんなつもりで書いたんだって言っても、「へえ〜」って、それだけでよくて、僕はこういう風に考えて作ったけど、そういう風に捉えて欲しいわけではないんですよ。

――押しつけるわけではない。

押しつけてるわけではなくて、簡単に言ったら手間暇かけましたよってことだけなんですよ。あなたのためにこの料理、隠し味にクミンを入れておきましたみたいな(笑)。でも食べたらあんまりわかんないみたいな。でもそれが愛情であって、カレーに入れるスパイスはあと何があったっけ。カイエンペッパー?

――ガラムマサラとか。

ガラムマサラ、あとローリエ。葉っぱもね、浮かべますよね。でも提供する時に葉っぱは取り出しますよね。それを皆さんに食べていただく必要はないし。ただ葉っぱを入れといたよって言いたいだけ(笑)。

――「美味しい」の一言で、料理人は努力が報われますよね。

結局は料理の基本って、、、料理の話になってる(大笑)。

――どうぞどうぞ。

料理の基本って、美味しけりゃいいじゃないですか。僕は出す側として、こういう風に手間がかかってるものなんで美味しいですよって、お客さんに付加価値として言ってることであって、要はローリエが浮かんでたからと言って尊いわけじゃない。ボンカレーでも旨ければそれでいいんで。ただローリエを入れたよって過程が欲しいんです、僕は。お客様に対して、や、お客様じゃないな、聴いてくれる人は自分とセンスが似てる仲間であり、友達。ちょっとクサイこと言うと恋人とも思ってて、ソイツに、「やっといたからね」って言いたいだけなんですよ。

――ちなみに今回、一番手の込んだ料理ってどれですか?

ん〜、やっぱ全部かなあ。とくにこのアルバムは全部書き下ろしたんで、全体と細部が作用し合って、すべてが1曲とも言えるんですよ。要はリンゴ作りもやって、カレーにリンゴ入れて、葉っぱ作りもやってローリエ入れて、にんじんを育て、米づくりのために田植えをし(大笑)。

――手間暇かかって愛情たっぷり(笑)。このアルバムを引っさげたツアーがあり、名古屋は3/17クラブクアトロ。ライブも極上の味わいになりそうですね。

今までよりすごくよくなると思ってて、なぜかと言うと、自分の意識が高くて、銀河に行ってるんですよね。今までの歌の世界の中で一番スケールが大きいんですよ。そこまで自分の気持ちが伸びて行っているというか。仲間に聴かせるために、これまでにない歌を唄うつもりなんですよね。それもはっきりと言っておきたくて。先に約束しておいて、自分の首を絞めた方がいいと思っていて、今までと比べものにならにくらい素晴らしい歌を唄うので、俺の声聴くだけで価値のあるものに思わせる。必ず約束を果たすし、ダメだったらぶん殴ってくれても構わない。

――1/5にはみそフェスもあります。もしかしたら年明けライブ初めになりますか?

そうなりますね。みそフェスはツアーとはまた違うんですけど、それもいいと思います(笑)。生まれ変わるつもりで練習するんで、今までの練習なんて大したことないと思うくらいやるつもりなんで。

――前回インタビューした時も、すごく自分を追い込んでいるように感じましたが、さらにですか。

ゲームをやられてる方のインタビューを読んだら、1日20時間ゲームやるって言ってたんですよ。やってる途中は苦痛も多いけど、1位になりたいからやるんですって。それと比べたら俺そこまでやってないなって。その人って一番純粋に芸術を楽しんでる気がして。

――でも今年は忙しかったのでは?

忙しかったですね、マジで(苦笑)。早かったですね。でも1日20時間はやってないんで。

――では来年は?

1日8時間はやれる男になりたい。がんばります。


インタビュー・文/深見恵美子


Major 1st Full Album 「時の肋骨」 Now on sale


THE PINBAALS Official Website http://thepinballs.org/
記事の一覧へ
ライブ情報

THE PINBALLS / Suspended 4th
Return to The Magic Kingdom Tour

2019/12/13(金)
クラブクアトロ
関連情報