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ヨーロッパ企画21年目の新境地はオカルト青春コメディ「ギョエー!旧校舎の77不思議」!

2019/07/18 14:00


京都を拠点に活動する人気劇団「ヨーロッパ企画」。
昨年、結成20周年で劇団初期の代表作「サマータイムマシンブルース」と、その15年後にあたる話となる新作「サマータイムマシン・ワンスモア」を同時公演。
これぞヨーロッパ企画!な集大成で2万4千人以上を動員した彼らが、「21年目にその盛り上がりを下げたくない」と打ち出すのは、オカルト青春コメディ「ギョエー!旧校舎の77不思議」。
「企画性コメディ」の名のもとに、特殊な劇構造や大がかりな仕掛け、誰もやらなさそうな思いつきといった「企画性」に根ざした珍しいコメディを模索しているヨーロッパ企画から、作・演出の上田誠さん、出演者の中川晴樹さん、永野宗典さんにインタビュー!



7不思議ではなく、77の不思議。
「誰が数えたんだ!」というツッコミを自ら入れたパンフレットは、ホラー漫画の第一人者・楳図かずお氏監修のイラストを使用。
怪異や怪現象へは懐疑的と言う、理系男子・上田氏が手掛ける「オカルト青春コメディ」は一体どんなものなのか。

上田:不思議ではありますけどね。こんなに世の中、オバケとか、霊感とか言っている人がたくさんいるので、まったく「ないですよ」とは言い切れない。でも自分は経験したことがないのであんまり信じていないです。ただ、ホラーは好きじゃないけど、“学校の7不思議”にはそそるものがあって。夜の校舎では何が起こるだろうとか、音楽室から聴こえる音とか、四次元の扉とか。子ども心の想像が広がるし、ノスタルジーも相まって、学校の7不思議っていい題材だな、77不思議っていうのをいつかやろうと思った瞬間があったんです。

――21年目だからこそ、今!という意味合いはあるのでしょうか。

上田:20周年は盛り上がるとは思っていたんですけど、その分、21年目に入って盛り上がりの力が抜けるのが嫌だったんですよ。劇団員もお客さんも。それを恐れていたので、インパクトの大きいものを持っていくっていうのは前から言っていたんです。21年目が勝負だと。20周年は自分達で築いてきたキャリアを見せたもの。今回はやりたかったけれどやれていなかったものに初めて取り組んでいますね。

――近年のヨーロッパ企画は、テーマやモチーフ、イメージの断片を原型の段階から稽古場に持ち込み、エチュードや話し合いを重ねて、作り上げていくスタイル。となると、今はどんな段階でしょうか?

上田:稽古がまだ始まってなくて、僕の頭の中だけにある状態です。舞台美術の打ち合わせを始めたところで配役もまだなんですけど、僕の中では候補があって、それを試し始める段階ですね。群像で言うと、ヨーロッパ企画のメンバーが先生をやり、客演さんの若い方には生徒をやってもらって。もちろん、その中にはお化け役もいる、そんな感じですね。

――お化けも人間がやるんですね。

上田:そこはやはり芝居ですから、できるだけ人間がやろうと思いますね。

――たとえば学校の7不思議で有名な人体模型が出るとして、そのまま登場させるのかな?と想像していました。

上田:ああ、それは永野さんにやってもらうっていう案もあったんですけど、さっき1本前の取材で、永野さんは先生役をやりたいという希望を聞いたので、人体模型=永野さんというのは無くなりそうですね。

永野:小豆洗いになるかもしれないというオファーを受けたところでした。でもまあ、柔軟に対応してくれるそうなので安心しました。

中川:小豆洗いは嫌なんだ?

永野:嫌…じゃないんですけどね、自分のビジュアルが生かされる役だとは思ってその場は気持ちを落ち着かせたんですけど。

――落ち着かせたということは、ザワついた…

永野:ザワつきました。2時間、小豆洗いを演じるということに。チャレンジングでもありましたけど。

中川:人体模型も面白いよね?あれ。

永野:確かに面白いね。

上田:人体模型は、ちゃんと青春にからんできますよ。

永野:え、そうなんだ? そうか、青春の儚い憧憬に…

――青春は儚い憧憬ですか。

永野:ええ、今となっては…(遠い目)

――では今の段階では永野さんは先生役をご希望されているんですね。

永野:はい。この題材が決まった時、生徒のために頑張ろうというヒロイズムがいいなと思ったんです。

――では中川さんはどんな役を希望されていますか。

中川:今、やりとりを聞いていて、人体模型か、それいいなと思いましたけどね。

永野:似合いそうですよね、シルエットとか。肉体美があるし。

中川:やるとなったら、体に描くことになるのかな。

上田:スーツ、売っていましたよ。

中川:ほほー。

永野:そして青春にからめる…

上田:からめますよ。たとえば陸上部のリレーの選手、アンカーを務めるとか。

中川:ほほー。

上田:と言うのも、中川さんは体育の先生かなって。今まで中川さんは体育教師をコントや学校もので2作品くらいやっていて、そういうのがハマリ役だなと。永野さんは美術教師もやったし、先生の群像は面白いんですよ。でも今回、ひとりが何役もやるかもしれないですね。

――では2時間、ずっと妖怪ではなく、一瞬だったり。

永野:ああ、それならやりたいです。

上田:本当ですか?

中川:なら俺は人体模型。

上田:2役やるのは面白いものですか。

永野:面白いですよ、気持ちも切り替わって。

上田:なるほど…。では、2役もあるかもしれないです。

永野:77不思議もあるんだから、大変だけど2役ではなく何役とかも。

上田:予算の許す限り(笑)

――それにしても77個も不思議は揃うものなんでしょうか。

上田:個数で言うと今、100はすでにあります。

――えっ!100も? それは各地の学校の不思議を集めたのでしょうか。

上田:各地のものまで拾いだすと、もっとあるんです。とはいえ大したものはないですよ、ドッヂボールをしていたらボールがドクロになったりとか、そんなようなものを数えたら100はあるということです。

――ではこれから、選抜していくんですね。

上田:出し所をどうするか、ですね。「ビルのゲイツ」の時、フロアを相当数考えたんです。フロアをどう使うかを考えるのがポイントで。嫌な奴が嫌な知性で突破していくのを、みんながヘイヘイって言いながら、突破するためだけに使うフロアとか、裏技を使うためにフロアを使うとか。今回も、たとえばドッヂボールしていたらドクロになっていたというのを使うとして、これをどういう局面で使えるのかがポイントなんです。オーソドックスな使い方なんですけど、それを2時間やるわけにはいかない。ドッヂボール部が、ボールがドクロになったけど、試合に負けられないからこれを使うしかない、というやりかたもあって、どのタイミングで出すかなんですよね。

永野:そうやっていくうちに、捨てていくものがあるんですね。

上田:そうですね、捨てていくものがあったり、言うだけのものがあったり。油すましが学校のワックスがけを手伝ってくれる、というのがあるとして、それはセリフだけになるかもしれないですしね。

永野:妖怪のエピソード、多いですよね。妖怪が好きなんだ(笑)

上田:そういえば、妖怪コメディやりたかったんだなと(笑)。だから組み合わせようかと。ポピュラーな7不思議から妖怪まで、いろいろと出したいですね。

――キャストのおふたりは不思議経験などありますか?

永野:よく二宮金次郎の話があるじゃないですか。歩くとか、走るとか。うちの学校にはその像は無かったんですけど、体操服を着て走っている姿の像があったんです。それが(手足の左右が)逆になってない?っていうのがあって、だから校庭を夜中に走っているんじゃないかという噂は不思議のひとつとしてありましたね。

――大人になってからはありますか? そもそも信じていますか。

永野:僕は信じるタイプですね。だからお化け屋敷も怖くて行けないです。叫びながら突破していくだけです。

上田:恐怖体験は人それぞれですよね。

永野:この人(中川さん)は、京都の有名なスポットに、みんなでバイクを走らせたら自分だけエンジンが止まったんですよ。

中川:そうそう、みんな先に行っちゃって、トンネルの中で残されて。まあ、引いていくしかないなと。でも僕は怖くなくて。前に住んでいたところも、子どもの声がしてドアを開けると誰もいなかったり、そんなのはありますけど別に…

上田:怖くないのに、そういうことが起こるんですね。珍しいですね。

永野:霊だとしても、出ても損というか。

中川:子どもの頃からなんですよね。でも色々あっても憶えていないし。だから学校の理科室とかも怖くなかったですね。

――では、永野さんの大人になってからの不思議というと。

永野:絶対受からない大学に受かったことですね。一緒に受験した友達がいて、そいつに色々教えてもらっていたんです。でも自分だけが受かった。不思議な話だなあと。だから今、ありえない人生を過ごしている気持ちになります。

上田:違った方のパラレルワールドに行ってしまったような気持ちというか。

永野:ねじれて、居てはいけない人生を歩いているというか。

上田:今現在もそう?

永野:そうですね、でもだからこそ、こうしてヨーロッパ企画のメンバーと出逢えて、劇を続けているので、そのために同志社大学に受かったのかなという。そう思わないと腑に落ちない成績で。まともに勉強していなかったので、人生最大の不思議ですね。

――念のためお伺いしますが、それで後悔していないんですよね?

永野:こうしてインタビューを受けていますから、幸せなことだと思います。

上田:パラレルワールドに、メチャメチャ勉強して、だけど落ちた永野さんがいるかもしれないですね(笑)

――どちらの永野さんも、結果オーライな人生を過ごしていますように(祈)。さて中川さんは他にエピソードはお持ちですか。

永野:この人は、何かとついてないんですよ。

中川:なぜこんなことが起きるんだろうということが多いですね。撮影していて、よーいスタート!と言ったとたん、僕の頭にだけ雨漏りがしたりとか。変なことはありますよ。ついてないなって思うだけで悩まないけれど続いていますね。

永野:お祓いしたほうがいいと思うくらい。

中川:家の前にバイクを置いておいたら、車が突っ込んできて廃車になったり。そういうのが3台ありますね。兄もバイクが無いって言って、探したら、裏の公園で燃やされていた(笑)。燃えカスが残っていた。バイク運がない家なんですよね。

――こういった話が、何か今作に活かされそうでしょうか。

上田:これは、つながらないです(笑)。何がつながらないかというと、あぁ、つながりはするんですけど、今のは怪談の類なんですよね。怪談とホラーは違っていて、怪談は怖さを話すもの。学校の怪談もそうで、見た人はいないけど語り継がれるもの。でもホラーは実際に出て来る。ビジュアル的に。今回の旧校舎の77不思議もそうなんですよね。小説で書くとしたら、文字の怖さ、語りの怖さになるんですけど、舞台なのでテンポ良く見せないといけない。だから今の話の中だったら、バイクが燃えているシーンならいいですよね。語りでの不思議よりビジュアルでの不思議を今回見せていくと思います。

(c)楳図かずお/小学館

――客演は5人。祷キララさん・金丸慎太郎さん・亀島一徳さん・日下七海さん・納谷真大さん。どんな方々なのでしょう。

上田:祷さんは、関西の方なんですよね。昔から京都でやっていた自主映画に出演もされていて、今は東京で女優さん。フレッシュだし、パッと見は僕らから遠いけれど通じるところがありそうだと。もうひとりの女性、日下七海さんは京都を拠点とする「安住の地」という劇団に所属していて、この子はこの子で維新派の舞台に出ていたり、中国琵琶を習っていたりと、変わった芸歴の持ち主。ちゃんと珍しいこととか、不思議なことに鼻が利く人だと思っていて。ヨーロッパ企画のコメディは華々しい舞台ではないので、楽しんでくれる方って、なかなか。

永野:殺陣とかはないですからね。

上田:そうそう、ショーアップされてとかはないので。渋い面白さというかハイブローなこともあったりするので、そのへんのことを面白がってくれる人がいいなと。祷さん、日下さんはそういう方なんです。納谷さんは、僕らにとっては良き先輩。今も札幌で劇団をされていて、客演の5人の中では全然違う経歴を歩いて来られている、面白い方なんですよ。一緒に何度も話をしてるんですけど、あの、妖怪みたいなんです(笑)。本当に…

永野:山の妖怪みたいです。

上田:そう、すごく妖怪っぽいんです。もちろん怖いわけではなく。大きいんですよね。亀島くんは僕らが親しくしている東京の劇団「ロロ」の人で、本公演以外では過去にも何回か演出したことがあって。金丸くんも「ロロ」にいた時に知ったので、このふたりは東京小劇場的なところにいる。金丸くんは劇団に所属していない無頼派。わりと僕ら自身が京都にいて立ち位置が独特なので、なるべくいろんなところとつながってというか、出逢う交差点にいるのが面白いなと。今回もそういう意味では、演劇の世界には居るけれど色んなキャリアを歩んできた方々とご一緒している。まあ毎回そうなんですけど、今回は納谷さん以外は僕らより下の世代。学園ものなので、ヨーロッパ企画もそういうフェーズに入ってきたかなと思いますね。

――音楽は「遊星ブンボーグの接近」以来4年ぶりの青木慶則さん(当時HARCO名義)。芝居を作る上で音楽はどんな存在なのでしょうか。

上田:昔は音楽に対して、楽曲をお借りするだけとか、関わりが薄かったんですけど、近年はご一緒するアーティストさんと密接にコラボレーションすることが多くなって、やりとりの回数も増えてきましたね。アーティストさんによって作り方はさまざまではあるんですけど、青木さんは音楽家でありCM曲もたくさん手掛けている方。アーティストとして自分の楽曲を作るだけではなく、楽曲提供やお題をもらっての制作もされる方だから、尺1秒縮めてくださいというアレンジの要望にも対応してくださるんです。音楽の引き出しがとても多いんですね。僕が音楽を語るのもおこがましいんですけど、オーダーについてマニアックに答えてくださることがあって、今回、学校の話なのでピアノ曲がいるなと思って青木さんにまたお願いしてみようと。それで学校の怪談=オカルト青春で、ちょっと現代音楽チックなものにしたくてとお話ししたら、今ちょうどサティを聴いてますと。そのへん共通言語というか、とても通じるものがあって、こちらにうまく合わせ込んで作ってくださるんですよね。前回はファンタジックな作品での音楽だったので、かわいらしくまとめてくださったんですが、今回は不協和音もまじえたピアノ音とかもあったり、また違う青木さんの音楽と出合えると思います。すでにCM曲が5、6曲届いていてどれもいいんです。芝居と音楽については、これという関係性は毎回違いますが、関係によって芝居の音楽の効果が面白く得られますね。

ヨーロッパ企画の舞台を今まで何度見ただろう。でも自分が予想した展開が当たったことはなく、ズバッと裏切られたり、ひざカックンみたいなことをやられたり、張り巡らされた伏線を見逃した悔しさにかられたり。かと思うと、なにこのジーンと来る感じ…人間っていいなあなんてホノボノしたり。帰り道には「心変わりを人にも自分にも許さずにいたけれど、心のままに生きようかなあ」なんて人生観まで変わってしまう。じゃあ最初からまっさらな気持ちで見ればいいものを、裏切られる感覚を楽しもうと予想をしてしまう。
そんな≪ヨーロッパ企画第39回公演「ギョエー! 旧校舎の77不思議」≫、名古屋公演は9/4(水) 14:00・19:00(2回公演)@名古屋市東文化小劇場にて。

――では最後にメッセージをお願いします。

永野:生きていて、2時間、77回もギョエー!と言うことってないですから。特別な体験になるんじゃないかと思います。心臓を強くしてお越しください。

中川:とは言いつつコメディなんで、そこはちゃんと。オカルト青春コメディと言いながら、ちょっと怖そうな雰囲気も醸し出しながら、でもコメディにしますから怖がらず、気軽にいつも通り来ていただけたらと思います。

上田:今回の公演内容はけっこう、メンバーも楽しみにしてくれているようで良かったなあと。やっぱりね、そういうのって大事なので。年々そうなんですけど、うちの劇団しか作らないであろうところに果敢に挑戦していくのは喜びでして。77の不思議をどう作るかという、総じてうちの劇団の21年目でないと踏み出さないような領域のことをやろうと思っています。ホラーとかオカルトという少しネガティブな感情を扱うことが、僕は今まで無くて。笑いとか懐かしさとかパニックとかはあっても、喧嘩とか痛ましいシーンは苦手なんです。でも今回はイヤな気持ちにはさせないですけど、いつもにはない調味料に手を出している感覚はありまして。違う味にチャレンジしていますが、コメディなので、そういう新しいものになればという気持ちですね。作家的に言えばそこが新境地。得意ではないんですよね。映画、映像なら書けるんですけど稽古場でも公演でもつらいシーンを何十回も見るというのは…。ツアーも長いので楽しい方がいい。ネガティブな感情を取り扱うのが得意ではないんですけど、ビターなスパイスになればといいかなとちょっとずつ思い始めて。そういう気持ちです。


インタビュー・文/早川矢寿子


ヨーロッパ企画 Official Website >> http://www.europe-kikaku.com/
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ライブ情報

ヨーロッパ企画
ヨーロッパ企画第39回公演「ギョエー! 旧校舎の77不思議」

2019/09/04(水)
名古屋市東文化小劇場
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