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「感動して泣けて心地良くなれる話と去年の86倍(当社比)の恐怖! ハンカチ2枚とパンツは3枚くらいあったほうがいいかな」

2019/07/09 16:00

27年目を迎えるミステリーナイトツアー。今年は全国48公演。淳じぃの長い夏が始まった。

本番が始まるまではお客さんにたくさん来てほしいとかあれやこれや考えるし、話も始まるギリギリまで調整したりするんで、むしろ本番が始まった方が気分が楽ですね。始まってしまえば最高の状態で皆さんと楽しむんですけど、それまでが大変なんですよ。

これまでのどの公演も、紙を見ながらということはなく、1人で約2時間語り続けている。動きがなく、ごまかしのきかない状況の中、ずっと語り続ける。御歳72、ものすごい記憶力!

話を全部覚えているのは、まとめるのが自分だからっていうのと、実はストーリーを字面ではなくて、絵で覚えているんですよ。一番楽しい時期ね、自分じゃ心霊探訪って言ってるんだけど、話を聞きに行ったり探しに行ったり、破片を色々探し集めて、最後に集まったものを組み合わせていく瞬間。最終段階はいつも茨城の田舎にある海の見える工房でやってるんですけど、そうすると夜になると自分の頭の中の景色、怪談の景色、その中に自分がいるんですよ。怖いところにいたりするんですよ。でもそれが楽しい。お〜見える〜って。だから話が頭に入ってくるのは絵でなんですよね。自分でも驚くんですけどね。原稿書き終えて話まとまった!となった時に、読み返さずにストーリーをちゃんと覚えてるかな?とふっと思うんですけど、自分がまとめた通りに覚えていたりするんですよね。だからそのまま何回か練習するとちゃんと頭に入ってる。不思議なもんですよね。
今年は魂のある話ができそうなんです。というのは、話というのは自分でこうしよう、こういうのが欲しいな、と思っていてもそうそうできるもんじゃないし、まとまらないし、破片を探しに行ったりくっつける作業もそうなんですけど、調子のいい時って感も冴えてるのかもしれないけど、いい具合に進むんですよね。
ただ今年はちょっと苦労したことがあってね。だいたい本番近くになると20話くらいまとまっていて、そこからつまらない話や似たようなものはどっちかにしながら8話とか10話くらいまで絞って、差し替えたりもしますけど、本番で披露するのは5話か6話くらい。そんな感じで準備をしてるんですけど、こうやろうとかああやろうとか話をまとめている段階で、時間がないからどうにかまとめなきゃと思いながら一週間、まとまると思った話が全然まとまらなくて焦っちゃってね。半分以上できてるのに、参ったな〜どうしちゃったんだろう?って。絶望的な気持ちになるんですよね。で、夜横になって休んでいる時、ぼんやりしてたらバラバラだった破片が頭の中で突然に繋がったんですよ。突破口になったのは今から20年以上前になるかな。終戦記念日に新聞記事が載ったんですよ。事件とかじゃなく、ある女性の記事が掲載されて、それがとっても印象に残ってて、この話いいなと思ってた。そこから随分経ってから別の破片が見つかって、これってあの話と繋がるんじゃないかなって調べてたら、今年になって話の背景が見えたんですよ。そういうことか!って。バラバラになってて参ったなと思ってたけど、破片がグルグル回り始めて繋がったんですよ。今まとめとかないと明日起きたら忘れちゃうって慌てて起きて一気に書いたんですよ。短い話なんですけど、一週間かけてできなかった話が50分でできた。
でもそういうのって次の日起きて見ると、大概字が汚くて読めないかストーリーがつまらないのが多いんですよ。どうせまたつまらないんだろうなと思いながら朝読み返してみたら、すごくいい。誰かが書かせたんじゃないかな?自分はこんな言葉使わないのになんでこんな言葉知ってるんだろう?なんでこんな漢字書けたんだろう?って不思議がとっても多くて、でもその不思議が多い時ってすごくいいんですよ。
その話は短いんですけど感動的でとてもいい話で、言い方を変えると、感動もするけどかっこいい。それで、そうだ、今年はこのタッチだなって思ったんですね。歴史にならない歴史って言い方もおかしいんだけど、関わった人間がいなくなったら無くなってしまう、でもこれは取っておきたいなっていう、表立って歴史としては残らないけど、そういう歴史に残らない歴史をやっていこうと思ったんですよね。今まではだいたい怖いっていうと、だんだんだんだんまずい場所へ行って、怖い状況があって、あー出る出るって、きてる、え?側にいる!とかあるじゃないですか。でもこれは普通に話が進んでいくんですよ。で、たまたまあるきっかけで、あれ?って違うのかな?って思うと全ての話が反転していくんですよ。逆なんですよ。それに気がつくと怖いんですよ。これ違う違う!おかしい!おかしい!!って。となると、死んでる人間の霊よりも生きている人間との兼ね合いの方が怖くなってっちゃうんですよ。不思議に思って怖くなって、そうか!って、ゾクっとするんですよね。全てが反転して返ってくるっていうミステリーでサスペンス。で、すごく怖い話。
もう一つは陽炎みたいに輪郭がぼんやり見える話なんですけど、誰もが持っていた、忘れていた思い出がふっと蘇るような、とりとめがないけどふ〜っと流れていくっていう。私は輪郭だけお見せするのでそれを見ている人がそれぞれの昔、人生ってさ、例えばあの時代がつまらなかったからってそれだけ省略できないじゃない。それがあったから今があるわけで、いい悪いではなく省略できない。忘れている過ぎた時間が思い出せるんじゃないかなと。そしたらまた違う面白さになるんじゃないかなって話。これがうまく話せたら大変なものですよ。
それとさっきの短いんだけど感動的な話が柱になっているので、今年は紛れもなくいい怪談。これが本当の怪談だよって。最近は私の怪談を稲川怪談って言ってくれるんですが、これがまさに稲川怪談だって言うのをご紹介したいと思っているんですよ。
今年の話が成功したら自信にもなるし、みなさんに喜んでもらえるし、私がいつも言っていた、怪談は70からって言うのがわかっていただけるんじゃないかと思うんですよね

年号も変わって時代もどんどん変化しているけれど、新しい怪談というものもあるのだろうか?

今回のはタッチとか攻め方は新しい時代ですね。今ままでにないですね。私はそれをいつも頭の中に入れてやっているんですけど、先へ先へ行って、どんどん新しい世界をお見せしないとね。ワンパターンはよくないですよね。ですから破片集めが本当に大変です。今年の話は綺麗な話ですし、知っている人なら場所も情景も分かるんですよ。
怪談というのはどうやら、やっている私と来てくれるみんなと共に作っていくもの、そんな感じですよね。一体感がある。なんだか人がぐ〜っと集まってくる。都会ではなくなってきた、人同士のコミュニケーションが蘇ってきますよね。毎年顔を合わせて、ファン同士が仲良くなったりするんですよね。おもしろい話の時は会場は笑いっぱなしだし、怖い話の時は椅子から転げ落ちる人もいたし、泣く時はみんな泣くし、そんな人の反応を感じながらそこにいると臨場感も違ってくるんですよね。自分1人じゃない。みんな同じ状況で、赤の他人なのになんとなく距離感が近くなっている。悲鳴あげた人が恥ずかしそうにすみません、ってそれですごく楽しくなったりするじゃないですか。それですよね。怪談にはそれがありますよね。


インタビュー/文:川口愉生


稲川淳二 Officlal Website http://www.inagawa-kaidan.com/
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稲川淳二
MYSTERY NIGHT TOUR 2019 稲川淳二の怪談ナイト

2019/07/27(土)
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稲川淳二
MYSTERY NIGHT TOUR 2019 稲川淳二の怪談ナイト

2019/08/31(土)
日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
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