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安藤「いろんな国でコンサートをやりたいし、常に新しい刺激を求めていきたいですね」

2019/06/17 15:00

日本のインストゥルメンタル・ポップを牽引し続け、昨年デビュー40周年を迎えたT-SQUARE。新旧メンバーによる全曲書き下ろし記念アルバムをリリースしたり、歴代メンバーが一堂に会したスペシャルイベントを開いたり、ここ最近、ファンには嬉しいサプライズの連続だった。
毎年コンスタントにアルバムをリリースし、通算46枚目となるアルバムは『HORIZON』。
このアルバムでは、前作・前々作に続きDavid Reitzas 、さらにはSteve Sykesも加わり、両グラミー賞エンジニアが参加。渡米直前に体調を崩した河野に代わり、Philippe Saisseが急遽スペシャルゲストとして参加し、現メンバーとしては初のLAレコーディングを敢行した。
LA最高峰のチームと作り上げたアルバムを引っさげ、6月からツアーも始まる。
リーダーとしてバンドを導くギタリスト・安藤正容にインタビューした。



――記念コンサートの映像作品もリリースされましたが、ここ最近の動きに対してはどのような反響がありましたか?

どうなんですかね。まあ、コンサートでお客さんと対峙することはあるわけで、いつも来てくださる方もわかるし、あまりお見かけしない人がいるのもわかるし。とにかくいまだに好きでいてくださるお客さんが大勢いらっしゃるのは、有り難いことですね。

――長く続けられる秘訣はなんでしょう。

秘訣とかはないんですけど、一緒に演奏してくれるメンバーもそうですし、ずっと一緒にやってくれるマネージャーもそうですし、周りのスタッフもそうで、そういう人たちに恵まれたんだなっていうのは感じます。

――4月に46枚目となるアルバム「HORIZON」がリリースされました。単純に46枚目ってすごいです。

基本的に毎年出していて、2枚出してる年もあり、そう考えると随分な枚数だなと思います。でもメンバーみんな曲書くので、そういう意味では、例えばユーミンとか単独のアーティストの方よりは、作品を生み出す力はあるのかなと思います。そのお陰ですね。

――今回のアルバム、コンセプトはあったんですか?

とくになかったです。それぞれがこんな曲やったらいいんじゃないかなっていうのを書いて、持ち寄ったものから選びました。最近はそういうことが多いんです。一時期プロデューサーがいた時は、次はロックっぽいものにしましょうとか、次は爽やかな感じでとか、歌ものを何曲か入れませんかとか、そういう提案をもらって曲づくりに入ってた時もありましたけど。

――表題曲「Horizon」はキラキラした爽やかなチューンですが、これをタイトルにしたのは?

そうですね。今回はとくにテーマもなかったんで、それぞれの曲の中から、アルバムタイトルになりそうなものを選んで、「Horizon」がいいんじゃないかと。

――安藤さんが作られた「Lonesome George」ではなかった(笑)。

「Lonesome George」だとちょっと濃すぎますよねえ(笑)。

――「Lonesome George」はどういう発想から生まれた曲なんですか?

実はこのタイトルは前から考えてました。ガラパゴス諸島のピンタ島で一匹だけ残った亀のことをロンサムジョージって呼ぶんですけど、その亀が死んじゃうとその種は途絶えてしまうと言われていて、それがタイトルにいいなとずっと思ってたんです。

――そこからどう広げていったんでしょう。

ロンサムジョージという言葉を元に曲を書いたのではなくて、曲ができた時にロンサムジョージって付けたら面白いなと思って付けただけなんですよ(笑)。

――最後の最後にエフェクトのかかった声で“ロンサムジョージ”って。

あれね、Philippeがね、ボコーダーっていう機械を使って言ってるんですよ。別になくてもいいと思ったんですけど、PhilippeとDavidがマスタリングやってる時に残したいって言うんで、じゃあどうぞって(笑)。

――最後にチャーミングだなと。

そうですか? 僕はくどいなって思ったんですけど(笑)。

――この曲は重低音の入りが他の曲にはない味わいでした。

ちょっとロックテイストもありますし、あんまりライブではやらないんですけど、スライドギターが頭のへんでフィーチャーされてるんで、今までとはちょっと異色な感じがするのかなと。

――もう1曲作られた「Love Game」は、逆に最初に男の人の笑い声が入ってますね。

あれはトロンボーンのAndrewが、Philippeがディレクションしてた時に笑って、それから吹き始めたんですよ。普通は切るんですけど、あってもいいかなと思って。

――途中、バンドネオンのような音色も印象的でした。

ああ、あれはPhilippeですね、シンセで弾いてるんです。

――今回Philippeさんの存在が大きいようですが、どこまで自分たちの意見を反映させられたんでしょう。

いつもなら最終責任者として作曲者がみるんですけど、今回は河野に代わってPhilippeにお願いするというちょっと特殊な状態だったし、Philippeはプレイヤーにしてプロデュース能力もすごく高いキーボード奏者なんで、シンセダビングもお願いしたんです。僕らが日本に戻ってからは、彼に託したんです。だからバンドネオンっぽいソロを入れようって決めたのもPhilippeです。僕は最初違和感あったんですけど、Philippeは全体をみてたんで、ここでそういう音色が入ることは、この曲の魅力の一つになると思って、たぶん選んだんですよ。だからOKにしました。

――安藤さんが違和感を感じられていた部分ゆえ、耳に残ったのかもしれません。

そうですね、たぶんやることがだんだん枠にはまっていくんですね。それをPhilippeが壊してくれたこともありますね。

――「Love Game」はどんなアプローチから入ったんでしょう。

家で四苦八苦して作ってました(笑)。どんな曲でもそうです。

――どういう所に苦労しますか?

まず一番の壁は、とっかかりを得ることなんですよ。たとえば「Love Game」だったら、イントロのリフ、これいいなって思い付いたらまずは第一関門突破です。これいいなって思う気持ちがまず大事で、ギター弾いてみたり、散歩してる時にこんなメロディどうかなって考えたりとか、これいいなって思える断片を掴んだらそこから広げていくんです。上手く広がってく場合はスムーズにいきますけど、これ以上いいものが浮かばなければボツっちゃうこともあるし。

――タイトルをこれにしたのは?

最近ぼくテニスにはまってて、ここ何年か錦織選手を応援してるんです!

――そっちのラブでしたか。

そうです。ひっかけたら面白いかなっていうのもあったんですけど。

――他のメンバーの方はそれぞれどこにこだわってらっしゃっいましたか?

今回参加できなかった河野君はPhilippeと一緒にやるってなった時点で、自分の曲はおまかせしますってなりました。ただプリプロはやっていたので、ある程度、彼のイメージは知っていて、それはちゃんと踏まえてやりました。でも今回こういうことになったので、坂東も僕もある程度Philippeにアイデアをもらいたいっていう気持ちでした。Philippeはその通りにアイデアをいろいろ僕らにくれたんで、そういう意味ではいつもよりもオープンな感じでレコーディングできましたね。

――それによってどんな化学反応が起こりましたか?

それぞれにあったと思います。かなりリズムのりしてるここはあまりに早くいきすぎるから1小節待ちましょうとか、ここのリズムのキメはこっちの方がかっこいいんじゃない?とか、この曲はフェイドアウトになってるけどエンディングつけましょうよとか、ほんとにいっぱいアイデアをくれて。それぞれ納得できて、坂東も僕も自分の曲がよくなっていくのを感じました。

――それでいくと1曲目の「SKY DRIVE」で、演奏が一旦止まって、また始まる部分が好きです。

ああ、はいはい。ギターソロが終わった時に止まるとこですよね。確かあれもPhilippeのアイデアですね。最初、止まるようにはしてなかったと思います。

――そうなんですか。

割と僕らの作り方って、設計図が細かいっていうか。余韻を持たせる部分がもうちょっとある方が外人は好むんですよね。もう4小節待とうよって。そこに想像力を働かせる時間が欲しいって。聴き手に、次なにがくるの?って抱かせる時間を持った方がいいと、たぶん彼はよく考えるんです。間がすごく大事なんですけど、僕らは割とせこせこと次へ展開させていくので、それも一つのやり方だとは思うんですけど、そういうものが多すぎるとすごく押しつけがましくなりがち。もうちょっと聴き手の想像力を働かせる作り方をPhilippeが教えてくれた気がしますね。

――今回は安藤さんが2曲、坂東さんが4曲、河野さんが3曲。河野さんの曲でタイトルで気になった2曲があるんですが、それが「Kasareria」「Samba de Bantha」。ちょっと調べたんですけど、カサレリアという言葉はガンダムに登場する地名と重なり、バンサというのはスターウォーズに出てくる巨大な四足歩行の草食動物です。

変態ですから、彼は(笑)。僕らの発想にはない部分があって。だいたいカサレリアってなんだか、いまだに僕わかってないです。1回聞いたんですけどねえ、空想のなんとかって言われても理解できないまま素通りしました(笑)。河野君は趣味が多くて、いろんなものに興味を持っているので、SFも好きだし、アニメも好きだし、スターウォーズも好きだし、映画も好きなんですよね。だからいろいろ引き出しがあって。ただ僕もそうなんですけど、意味わかんないですよね(笑)。曲となんの関係もないじゃないですか。

――河野さんの中ではそういうゾーンに入ってたんですね。

僕らインストで歌詞がないから、言葉にできるとこって曲のタイトルしかないんですよね。自分が書いた曲のタイトルしかないから、そこに何か込めたいというのが河野君は強いと思います。僕も昔は考えましたけど、曲と合う短い言葉を探すのがだんだん難しくなってきて、今は曲調とは関係のない言葉をもってくる(笑)。

――なるほど。しかし今回あらためて思いましたが、それぞれの楽器がたっていて、聴く度に違う音が入ってくるので、新しい発見があり聴き応えがありました。インストの曲は音と会話をしているような。

発見があるとすごい楽しいですよね。僕、若い頃ビートルズが大好きで、部屋にこもってステレオかけてじーっと聴いてたんですよ。そうすると歌はもちろんなんですけど、ここでこういう音が入ってくるとか、ここでこのSEが入るだとか、全部覚えるんですよね。

――そもそもLAでレコーディングしようと思ったきっかけは?

言い出しっぺは僕なんですけど、一流アーティストがミリオンセラーを出してるマッスル・ショールズという有名なスタジオがあって、それがドキュメンタリー映画になってたんです。それを観てそこでやりたいなって、実は思ってたんです。もともとアメリカやイギリスの音楽に憧れてミュージシャンになってるので、彼らと同じような場所で一度やってみたいなと思ったのがまずはあって、で、その後に2016年かな? 坂東慧のソロアルバムが出て、それを今回使ったスタジオで録ってるんですよ。

――坂東さんが先に使われていたんですね。

そうです。その音がすっごい良かったので、やっぱLAっていい音するなって思って。LAレコーディングしたいねって話と、マッスル・ショールズとが一緒になって、マネージャーの認識に入り、いつの間にかスクエアも坂東がやったスタジオで録ろうってなったんですよね。

――やはり違いましたか。

アメリカのスタジオって、気候のおかげだと思うんですけど、乾燥かな? よく部屋が鳴るんですよね。楽器も鳴るし、豊かな音がする。日本のスタジオはきちっとできているので、綺麗な音でノイズもなく録れるんですけど、ある種、雑味も含んだ豊かさを求めるんだったらLAの方がよかったりするんですよ。それが今回は生かされたと思います。

――このアルバムを引っさげてツアーが始まります。名古屋は6/23 Zepp Nagoya。もう何度もやられている会場ですが、ライブハウスとホールとでは音の響き方が違い大変とかではないですか?

いやあ、ライブハウスはライブハウスの良さがあり、ホールはホールの良さがあるので、とくにそんなに違和感はないですよ。

――セットリストはどうのように決めるんですか?

最近はドラムの坂東君に任せてるんですよ。彼はもともとスクエアのファンだったから、曲の認知度があって、僕とか伊東さんが絶対選ばないような曲を平気で選んだりするんです。僕とか曲書いてる者にとってみると、ちょっとこの曲古いし、恥ずかしいなって思ったりするんですけど、坂東君はそういうのお構いなしに、流れとしてこれが入ってると意外性があって面白くないですか?って入れてくるんです。

――古い曲は恥ずかしいですか?

そういうのあります。彼はフラットな気持ちで考えてもってきてくれるから、最初はええ〜っとか思うんですけど、リハーサルやってみると、あ、面白いねって。

――昔とは違う受け止め方ができるとか。

だからやる前は、なんかやだなって思うんですけど、やっていると意外にいいんじゃないってなることが多いんですよね。

――それこそ、初期メンバーによる新プロジェクト、THE SQUARE Reunionを立ち上げてから、旧メンバーとのライブも多くなりましたね。

どのメンバーもずいぶん進歩していて、やる度にいつもと違うフレーズ弾くなあとか、違う雰囲気でドラム叩くなあとか感じて、懐かしいで終わらないんですよね。みんないろんな努力をしてミュージシャンとして成長してるのを感じるので、僕はすごいみんなを尊敬するし、刺激を受けますね。

――パシフィコ横浜で行われた新旧メンバー18人が勢揃いしたライブも圧巻でしたね。

ドラムが4、5人いますからね。30周年の時もやってるんですけど、長く続けてるとネタが尽きちゃって(笑)。でもそうやってね、みんなが嫌がらず、また40周年で喜んでやってくれるってことが嬉しいです。

――今回のツアーはどんな感じになるんでしょう。

最近のコンサートはいつもそうなんですけど、基本的にニューアルバムの曲は全部やろうとは思ってます。あとはどの曲をピックアップするかっていう。

――平成最後のタワーレコードJAZZ週間チャートは1位で締めくくりました。令和に向けてはどんなビジョンを?

ビジョンないなあ(笑)。僕ってすぐネガティブな発言するんで、伊東さんにお前やばいぞってよく言われるんです。でもまあ、今年久しぶりに韓国で単独公演やらせてもらって、ものすごい盛り上がったんですよ。いろんな国でいろんな場所でコンサートをやりたいっていうのはずっとあって、僕らインストだから言葉の壁がないし、そういう意味でもいろんなところでやれる可能性はありますからね。毎年ルーティーンで同じことをやってくんじゃなくて、新しい人に会いたいし、新しい出会いが欲しいし、新しい刺激となるようなことをやりたいと思います。

――では最後に、地元出身である安藤さんからこのエリアの方にメッセージを。

安藤:みんななかなかCDを買わない時代になってきたけど、やっぱりCDを買って聴いて欲しいです。その曲に親しんでもらってライブに来ると、またライブが楽しくなるので、なるべく予習して、コンサートに足を運んでいただきたいなと思います。


インタビュー・文/深見恵美子



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T-SQUARE Official Website >> http://www.tsquare.jp/
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