記事詳細

「この30年間は必然なものだったと感じている」 デビュー30周年記念アルバム「新青年」をリリースした人間椅子にインタビュー

2019/06/05 11:00


6月5日に21枚目のオリジナルアルバム「新青年」をリリースした、人間椅子。1989年に出演したTBSテレビ系『平成名物TV イカすバンド天国』で高い評価を獲得し、翌年7月に「人間失格」でメジャーデビューを果たしてからもコンスタントにライブやリリースを重ね続けてきた3ピースバンドだ。今もなお音楽ファンの厚い支持を集め続けている彼らは今年でデビュー30周年を迎える。今作は30周年記念アルバムとして制作された、3人の気合が結晶となった渾身の一枚だ。今回はナカジマノブ(Dr, Vo)に、今作の制作についてだけでなく、30周年となる人間椅子への想いまで語ってもらった。



「自分たちのOKラインを上げた、気合の入った制作だった」


――今作はデビュー30周年の記念アルバムとなりました。

作曲をスタートさせる時から、3人の気合いが違いましたね。制作に入る前からライブでのMCで和嶋くん(和嶋慎治/G, Vo)が「聴く人みんなを戦慄させるような怖い作品を作ります」と言ってたぐらいだった。僕らはまずリフがカッコよくないとダメだと考えるんで、曲を作る時は基本的にリフから始めるんですけど、今回はその気合いがあったからこそ、リフに対して自分らが決めるOKラインが、自然とあがったんですよ。意図的に明確なラインを決めたわけではないですが、2ランクぐらい上がっていたように感じます。自分たちが納得いくまで、とにかくどんどんブラッシュアップしていきました。だから、これまで以上にエッジの効いた仕上がりになったと思います。

――かなり気合の入った制作だったんですね。

僕が加入してちょうど15年なんですけど、15年間一緒に演奏してきて、今回、特に阿吽の呼吸で演奏できていることを感じました。特に8ビートのグルーヴが今までの中でもすごく良くなったと感じてます。重いビートはより重く、突っ走るような前のめりなビートはより前のめりに。またレコーディング中にしっかりとお互いに「こういうビートにしようよ」と言葉にしたら、それを再現できるようになった。これまでの人間椅子の作品よりも、また一段登った、いいグルーヴのものが作れたと思っています。

――空回りしたりすることはありませんでしたか?

レコーディングに限らずですが、僕個人的にはありましたよ(笑)。僕は気合いをいれると、力みすぎて変な方向に行っちゃうタイプなんで、「まず落ち着いて自分のやるべきことをしっかりやろう。いい音をちゃんと作って録音するという、自分の役割を心がけよう。そっから先が気合いだ!」と自分に言い聞かせていました。そんな中でも突っ走り過ぎて「あれもやろうぜ!これもやろうぜ!」って、他の人たちを置いてけぼりにして先走ったりする時があるんですが、そんな時は和嶋くんと研ちゃん(鈴木研一/B, Vo)が僕に声をかけてくれるんです。「いや、まあノブ、落ち着いて。自分ら人間椅子は地に足をついた活動をしていこう」って。2人がそういう風に話してくれる度に「そうだった……。落ち着かなきゃ!」と冷静になれますね。2人には感謝しています!

――3人のバランスが非常に取れてるんですね。

性格も違うし、いろんな面でいいバランスが取れています。だから、3人それぞれの良さがより感じられるアルバムになったと思いますね。特に音作りでは、和嶋くんが作った曲は和嶋くんらしさが、研ちゃんが作った曲は研ちゃんらしさがより凝縮できました。さらにお互いに各々の曲での自身のパートをアレンジするんで、その時のバランスも良かったですね。


「僕のために歌詞を書いてくれたことが最高に嬉しかった」


――コンセプトを決めて制作に入られたんですか?

ガツッと共通認識として決めて、ということはなかったように感じています。普遍的なハードロックだったり、プログレッシブなサウンドだったり、そういう人間椅子としてのサウンドを絶対に崩さずに、その範疇でみんな作っていました。研ちゃんが言ってたんですけど、和嶋くんが普段から言っていた言葉から、作品のカラーを少しずつ拾うみたいなんです。お互いにきっちり話し合うんじゃなくて、話してる時に「あ、和嶋はこう思ってんだ」と研ちゃんの中でこういうアルバムにしていこうと考えるようで、僕も同じなんですよね。そんな感じで3人でコンセプトをしっかりと話してはいないけど、和嶋くんの中では思い描いている像がちゃんとあって、レコーディング中でもどんなピースが必要なのかを考えていたと思います。だから、リズム録りが終わった時に「実はもう一曲作りたいんです。これが揃うとアルバムのコンセプトがはっきりするんです」と打ち明けてきたくらいなんですよ。その曲が「新青年まえがき」だったんです。

――アルバムの一曲目を飾る曲が、リズム録りを終えてから出来上がったんですね。

「あれ?もうドラムセット片付けたよ!?」と思ったんですけど(笑)、和嶋くんの頭の中には構想があった。後から聞いた話によると、リズム録りが始まって少したったくらいから、そう思ってたみたいなんです。だから僕と研ちゃんは「和嶋くんがそう言うならやろう!頑張ろう!」ともう一回ドラムセットを組んで、最後の一曲「新青年まえがき」を録りました。和嶋くんは人間椅子の初期衝動とも言える、「こういう曲を僕らはやりたいよね」とバンドを作った時の気持ち、それに近い曲として作ったそうです。僕は結成時に一緒にはいないですけど、この曲を初めて聴いた時に、初期衝動が分かる曲を書きたかったんじゃないかと感じることができました。

――今作のリード曲は「無情のスキャット」となりました。

アルバムの最後を飾る曲を作ろうと臨んだ曲でしたね。このメインリフが……、そうだっ、思い出した!制作に入って一番最初に和嶋くんが持ってきたのがこの曲のメインリフだったんですよ。僕も研ちゃんも初めて聴いた時に「カッコいい。きっとこれがアルバムのリード曲で中心となるリフだろうな」って思ってた。だけど和嶋くんは一向にこのリフを使った曲を持ってこなかったんです。「あのカッコいいリフ、どうなったのかな……。何で使わないのかな」と僕も研ちゃんも思ってました。で、レコーディングに入る前の一番最後に「無情のスキャット」を持ってきてくれて、「このリフがきた!」という嬉しい気持ちでした。和嶋くんもこのリフで最後に相応しい曲を、と時間をかけて作っていたと言っていましたね。

――8分超えの大作ですよね。

8分半と長いですよね(笑)。でも僕は8分半の曲をリード曲に持ってくるところが、今の人間椅子のいいところだと思っているんです。こんなことって、普通はやらないじゃないですか。しかも1分半待ってもまだ歌が出てこない(笑)。この “攻めてる姿勢”も、今の人間椅子の前のめりなモードが表れてるなと思います。

――「地獄小僧」はナカジマさんが作曲されました。

2人と同じタイプの曲を作っても、和嶋くんと研ちゃんに敵うわけないので、どこかで僕らしさを出して行かないとなという心算でリフを持っていきました。最初は別のリフが「ノブっぽいリフはこれかな」って和嶋くんと研ちゃんに言ってもらった別のリフがあったんです。そのリフをメインに作っていたんですけど、2人に納得してもらえるかっこいいリフがプラスで出てこなくて。頭を切り替えて、メインとしてではなくて中間部やエンディングに使えるリフを作ってみようと、全く違うリフを作ってみたんです。僕の中では実験的な側面の強いそのリフを、和嶋くんと研ちゃんに聴いてもらったら、2人の目がキラーン!って輝いて。しかも2人は「自分なら、わざわざこういう運指はしない。このリフは思いつかない」って言ってくれたんですよね。僕はギタリストでもベーシストでもないので、ルールや基本に関係なく好き勝手にやってしまったことが良かったんでしょうね。嬉しかったです。

――最高の褒め言葉ですよね。

そうだったんですけど、「これをメインリフに据えてやろう。今までのリフを全部忘れて、ここからもう一度!」と言われて、頭が真っ白になりました(笑)。「え?この何週間かは?ここからもう一度やるのかあ……」と思いました(笑)。でも、和嶋くんと研ちゃんが僕がリフのアイデアに詰まっていると「こんな感じにすこし変えたらどう。コードはこっちの方がいいよ」と、助言してくれたんで、楽しんで作ることができました。

――和嶋さんも鈴木さんも惜しみなくアドバイスをしてくださったんですね。歌詞は和嶋さんが手がけられました。

ノブが作ってノブが歌う曲だからと、僕の大好きな日本のホラー漫画界の巨匠・日野日出志先生の作品『地獄小僧』を題材にしてくれたんです。今作も色々な文学・文芸作品のタイトルをモチーフにしている中で、僕に『地獄小僧』を選んでくれた。和嶋くんはこの漫画を読んで、「ノブの曲に『地獄小僧』はぴったりじゃないか。どこかキャッチーでいられる、そのノブの声を活かした歌詞を書いたよ」って言ってくれて。もう最高でしたね。


「これから10年も、30年も続けていく」


――人間椅子の30年の歴史をどのように感じられていますか?

人間椅子というバンドは結成する前から、人間椅子としてのコンセプトは決まっていたような気がするんです。これまでずっといろんな場面で人間椅子の話を聞いてきたことを考えると、和嶋くんと研ちゃんは一緒にバンドを始めた時点から、お互いが唯一無二で、2人は切っても切れない関係になったと思うんですよ。だからこの30年間もある意味、必然だと僕は感じていて。この30年間において、僕は15年にはなりますけど、一緒にバンドができていることがすごい貴重な時間ですね。この3人でこれからあと10年でも、30年でもやれると思っています。

――これからも続くイメージをしっかりと持たれているんですね。

そうですね。バンドを一緒にやるって、ジャンルや、楽器のテクニックも、関係してくるものだと思うけど、やっぱり“人と人”でバンドは成り立っているから、お互いのことを理解し合えたり、リスペクトし合って、それからお互いに注意しあえることも出来ることが大切だと思うんです。そういう人間関係が成り立ってるからこそ、僕らは続いてきたんだと思います。和嶋くんと研ちゃんを見てるとね、本当にそう思いますよ。「それは……違うんでねぇべかな?」と津軽弁で注意し合ってたりするんです(笑)。

――信頼関係あってこその30年間を感じられているんですね。

例えば、曲やライブにおけるカッコいい・悪いの判断をする時になると、研ちゃんは和嶋くんをチラっと見るんですよ。和嶋くんの表情が曇っていたら「これはダメなんだ」、和嶋くんが「いいね!」と言うとOKだなと思っているみたいなんです。あと和嶋くんは、たまに話が飛躍しすぎたりすることがあるんですが、それを研ちゃんがやんわりと諌めたりもするんです。そういうところに、バンドを長く続けてこられた人間関係を感じていますね。とにかくお互いをリスペクトし合ってますね。

――これまでのお話を聞いていると、ナカジマさんはお2人のことがとても大好きであることがすごい伝わってきました。

大好きです。ただ、入りたての頃は、すこし苦労したこともあります(笑)。2人には2人の時間、青森時間というか、独特の流れがあるんですよ。それを掴み取るまでに時間が結構かかりました。今は誰よりも解ると思っていますけど、それでも新しい発見がまだまだあります。曲を作っているとその度に感じますね。思いもよらないフィルやリフ、メロディが出てきたり。また「こういうコーラスを要求してくるんだ」ということもあったりして、面白いんですよ。僕は、良いことも悪いことも、正しいことも間違ってることも、カッコいいこともカッコ悪いことも、バンドでしか知らないんです。これからも人間椅子で、2人と一緒にたくさんの経験ができたら嬉しいですね。


インタビュー・文/笠原幸乃


★ムービーコメントも公開中! ⇒こちら



New Album 「新青年」 2019.6.5 Release

人間椅子 初の公式本
「椅子の中から 人間椅子30周年記念完全読本」 2019.6.26 Release

今年でデビュー30周年を迎える人間椅子初のオフィシャル本。
衝撃的なデビューから、過酷なバイト生活を経て、いま再び黄金時代に突入している3人の現在までを徹底的に掘り下げた決定版!!






人間椅子 Official Website >> http://ningen-isu.com/
記事の一覧へ