記事詳細

「今回、わりと世界観が崩れたなっていうイメージはあるよね?」(コショージ) 「ひらけたって言えばいい? 新しいステージに行くような」(矢川)

2019/04/15 12:00


 2016年にメジャーデビューしたMaison book girl。メンバーは矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミの4人。音楽家・サクライケンタのプロデュースによって繰り広げられる世界は、サウンドも、歌声も、パフォーマンスも、ビジュアルも、完成にいたるまでの過程も全部ひっくるめて進行形のアートのよう。

 「鯨工場」「長い夜が明けて」「まんげつのよるに」を収録したシングル「SOUP」を4/3にリリースし、3/30に名古屋ell.FITS ALLで行われた『Maison book girl tour 2019 spring』ではパフォーマンスとともに披露。
 その場が一瞬にして海の底にいるような空気に変わり、メンバーひとりひとりが紡ぎ出す美しく凛々しい物語に魅了された。この先になにが待っているのだろう、もっと見たい、もっともっと。息づかいをすぐそばで耳にしながら変化していく彼女らに、いちいち感情を揺らす不思議なエネルギーに巻き込まれてしまった。

 ニューシングル「SOUP」について、メンバーの矢川葵とコショージメグミにインタビュー。



海の色を感じながら心を揺さぶられる

シングル「SOUP」を4/3にリリース!


――収録された3曲の中に「SOUP」のワードが出てきませんが、どうしてタイトルが「SOUP」なのでしょう?

コショージメグミ(以下、コショージ):全曲海っぽいイメージがあるので、生命のスープみたいな意味かなってメンバーと話しています。

――ジャケットのイラストを見て、鯨からスープを抽出しているのかも〜とか想像しました。

矢川葵(以下、矢川)コショージ:ふふふ(笑)。

コショージ:ジャケットは、プロデューサーのサクライ(ケンタ)さんが好きな漫画家さんの富沢ひとしさんが描いてくれました。

――曲を聴いていると、昨年リリースしたシングル「elude」の収録曲「レインコートと首の無い鳥」とつながっているのかな?鳥の首が見つかったのかな?って思ったり……

コショージ:歌詞に「体だけ無い鳥」(「鯨工場」)や「首だけの鳥」(「長い夜が明けて」)が出てきますもんね。

――想像をいっぱいかき立ててくれた3曲で、聴き終わってまた1曲目から聴くともっと深く味わえる、ずっとループしたくなる作品でした。3曲目のコショージさんの詩「まんげつのよるに」の創作のタイミングは、ほかの2曲を聴いてから?

コショージ:ううん、まだぜんぜんなくって、「海がテーマなんで」って言われて、それだけで。それで、詩をレコーディングするときにサクライさんに「ここはこういうイメージで」って話して音を作ってもらって、いったん出来たものを聴いて「もう少しこうしてください」っていうのを繰り返して完成させていきました。

――映画やドラマにもなった「わたしを離さないで」(原作 カズオ・イシグロ)のような澄みきった心ゆえの物悲しさ、しあわせと残酷の背中合わせな感じ、村上春樹の小説に出てくるような奇妙な空気感が漂っていて、胸にぐっとくる物語でした。

コショージ:ありがとうございます。あんまり本とか読まなくて、よく「〜っぽいですよ」って言ってもらうけど「そうなんだ〜」って(笑)。読んでみたいです、いろんなひとの作品を。

――矢川さんは「まんげつのよるに」を読んだとき、どう感じましたか?

矢川:今回もほかの2曲と同じ世界観が組み込まれていて、まだ2曲目の「長い夜が明けて」をレコーディングし終わっていないのに、なんでこう、ちゃんとサクライさんのイメージを汲み取って書けるのかなって。今回はお話っぽい感じだったので登場人物もはっきりしていて、わたしはずっと一方的にクラゲに話しかける役だったんですけど、空気読めていない感じのキャラクターなのかなってイメージをふくらませて、挑みました。

――コショージさんからアドバイスをしたり?

コショージ:ほとんどないですね。「ちょっとウザいやつなんだよね」ぐらいの(笑)。

矢川:そうそう。

――どのパートをだれが読むのかを考えながら創作するの?

コショージ:うーん……そこまで明確には決めてないけど「メンバー4人だから4役」みたいなものは意識して書きました。


「お客さんが“いい意味で裏切られて面白かった”って言ってくれて、うれしかったです」(矢川葵)


――今回はどうして鯨だったんでしょう?

コショージ:わたしたちも最初にニューシングル「SOUP」で「鯨工場(仮)」を見たときにびっくりして「なんで鯨?」って思ったけど、リリースしてからいろんなひとに話しを聞いて、鯨の意味がどんどんわかってきたというか。鯨って歌うらしいんですよ、海の中で。しかも、歌に流行りがあって、こっちの鯨で流行った歌が海の流れに沿って広がっていくんだそうで……それって、歌が世界に広がるっていうことじゃないですか。そういうイメージがあるのかなって。

――サクライさんからの説明は一切……

矢川コショージ: ないです(笑)。

――自分たちでイメージをふくらませて解釈していくって、面白い。

コショージ:サクライさんもそういうほうが好きみたい。

――曲をリリースするごとにサクライさんの描く風景に溶け込みながらも、予測不能な化学反応で新しい魅力を加えていくみなさんのスリル感、たまりません。これまでの曲もそうだと思いますが、パフォーマンスありきで曲が完成する感じですか?

コショージ:そうですね。やっぱりライブで観てもらってっていうのがいちばん。

矢川:はい。

――今回のシングルで「鯨波(とき)」という言葉をはじめて知って調べました。歌の中では「鯨波の街」だけど、鯨波には士気を高めるときの叫び声や戦争で勝ったときの歓声などの意味があって、「長い夜が明けて」の終盤で銃声とともに時空がゆがんだようなシーンがありますよね。

コショージ矢川:ふ〜ん。

――あれ? ちがう?

コショージ:なんかノイズみたいな感じのですよね? 確かに世界が壊れていくような、壁を壊すみたいな空気を出していますよね。

――そっか、鯨波とからめて銃声だと思っていました。サクライさんとみなさんが生み出した世界に、聴き手のイメージを自由に加えることができるのもMaison book girlの魅力のひとつなのかも。今回、レコーディングでこだわったところ、大変だったところはありますか?

コショージ:「長い夜が明けて」はみんな苦戦してて。

矢川:これまでも新しい曲ごとに挑戦する部分が与えられてて、今回は「長い夜が明けて」が、もう、はじめてロングトーン……声をのばすところが多かったり、キーがいつもよりちょっと高めだったりで。サクライさんの「できると思う」の言葉とともに(笑)、苦戦しながらもみんなでがんばって歌いました。ライブではお客さんの反応も良くて、曲が一瞬終わるところで……まだ終わっていないんですけど拍手が起きて……っていうことが2回あって、お客さんが「いい意味で裏切られて面白かった」って言ってくれて、うれしかったです。

――ミキティー本物さんの振付けはどんな感じ?

コショージ:「長い夜が明けて」は2人一組で踊るシーンが多くて、サビになると4人で歌い切るみたいな。今までありそうでなかった感じですね。

矢川:「鯨工場」はみんなで踊れるキャッチーな振付けです。

コショージ:鯨の動きが入っていたり。

――衣装は?

コショージ:鯨みたいなヒレがついていて、工場の作業服っぽいデザインです。デザインはおまかせで、出来上がったものを着させていただいたとき、「もうちょっとここを詰めて」とか……。

矢川:丈感。

コショージ:そう、丈感とか、踊ったときに「こうなりたい」みたいな希望を言うぐらいです。

――Maison book girlはアイドルというよりも、これまでの作品すべてがつながっていて、一貫性がある印象で、存在そのものがアートだと感じているのですが、変な質問ですが、この世界観に飽きることはないですか?

コショージ:あぁ、なんだろう……わたしたちの中では、今回、わりと世界観が崩れたなっていう……崩れてはいないけど崩れた、みたいなイメージはあるよね?

矢川:ひらけた、っていう言い方をすればいいですかね。

コショージ:うーんうーん。

矢川:新しいステージに行くような。

コショージ:ですね。

――昨年リリースして高評価だったアルバム「yume」の後のシングルということで、プレッシャーは……

コショージ:「yume」を超えなくちゃ、みたいには思わないけど、毎回「新しく出す曲がいちばんいい」って思いながらやっています。


「名古屋のライブと東京のライブとでは見せたいものがちがうので、それにお客さんがちゃんとついてきてくれているのを感じて、うれしいです」(コショージメグミ)


――ところで名古屋のファンはどんな印象ですか?

矢川:わたしたちはMCが苦手なので、なにも面白いことを言ってないのに、ひとこと言っただけで「フゥーッ」て盛り上げて、ノッてくれます。「手羽先」って言っただけで「イェーイ!」って(笑)。ノリがちょっと変な感じで、わたしたちのそういう部分も楽しんでくれて面白いです。

コショージ:東京はわりと物静かで。でも、東京から名古屋に来てくれていると思うんです。名古屋だと元気なのかなって(笑)。

矢川:うん、元気(笑)。

コショージ:たぶん、東京だとなんとなくのMaison book girlのイメージがお客さんにあるんだと思うけど、地方に来るとみんなハッチャケている気がします。わたしたちは名古屋のライブと東京のライブとでは見せたいものがちがうので、それにお客さんがちゃんとついてきてくれているのを感じて、うれしいです。

――「こうじゃなきゃダメ」とかのルールはなくて、オープンで自由に楽しめばいい?

コショージ:「こう見られたい」とかはあるけど、わたしたちは強制的な感じではないです。

――では最後に、東海地区のみなさんにメッセージをお願いします。

矢川:「SOUP」に収録された「鯨工場」は、はじめての人が聴いて入りやすいと思うので、ジャケットを見て少しでも気になってくれたら、しっかりCDを聴いていただけるとうれしいです。きっと好きになってもらえるかなと思います。

コショージ:名古屋は意外とあんまりライブに来れていないけど、ツアーではぜったいに来ているので、CDを聴いてくださった方はライブにも来てほしいし、名古屋から東京はそんなに遠くないと思うんですよ。なので、ちょっとでも気になったら東京にも来てくれたらうれしいです。


インタビュー・文/早川ひろみ



New Single 「SOUP」 Now on sale

Maison book girl Official Website http://www.maisonbookgirl.com/
記事の一覧へ
関連情報