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「“曲を書いて救われた”という感覚をもう一度やってみたい」今のiriが原点回帰することで新たな魅力が生まれた3rdアルバム「Shade」

2019/03/13 18:00

2019年3月6日に3rdアルバム「Shade」をリリースしたiri。昨年はフランスや台湾でのイベントにも出演し、日本でも自主企画が大盛況となるなど、国内外を問わず注目を集めている新進気鋭のシンガーソングライターだ。しなやかなでメロウなグルーブは都会的な響きを持ちながらも、日常の中で感じた事柄を歌っているというリリックは、未知の大都会の景色ではなくリスナーが思い思いの情景をイメージできるような懐の深い映像喚起力もある。そして今作「Shade」は、楽曲の中に影が見え隠れすることで、リアルな手触りが増し、より聴き手に“浸透する”ような作品になっている。また、たくさんのアーティストやトラックメイカーの参加により、iriの新しい魅力も感じられる。共作者からの刺激も受け、濃密な時間となったであろう制作過程も含め、話を聞いた。



自分の中にある影をあるがままに


――今作「Shade」は、前作の2ndアルバム「Juice」とはまた雰囲気の違う作品になりましたね。

今回のアルバムは、ネガティブな部分もそのまま残して、自分の中にある影をあるがままに表現しました。

――「Juice」は、どちらかというとポジティブなメッセージ性が強いアルバムになっていたかと思います。

そうですね。自分の内面的な部分を表現していくというのは前作から変わらないスタンスなんですけど、作品をリリースしてたくさんの方に自分の曲を知ってもらうにつれて、自分の気持ちをただ吐き出して歌詞にするだけではなく、それと同時にリスナーの方に何かを伝えなければいけないと思うようになりました。それで、「Juice」では、ポジティブなワードを入れたり、ポジティブな曲に仕上げたりということを意識したんです。

――それが今回、ネガティブな面をそのまま残すという方向にしたのはなぜですか?

「Juice」でポジティブを意識して制作して、それを踏まえて次にどんな作品が作りたいか考えたときに、「もっと正直に書こう」と思ったんです。というのも、もともと私は自分の内面的な部分を好きなように吐き出して曲を作ることによって、自分自身がすごく助けられていたんですね。音楽を始めたばかりの頃に、そうやって自分が“曲を書いて救われた”という感覚を、また3rdアルバムである「Shade」でやってみたいと思いました。

――初心に戻るような感覚でしょうか。

そうですね。制作している最中や、何を書こうかって考えると、出てくる言葉がどうしてもそういうことだったので。

――そういった曲の世界観からか、歌詞はもちろんのこと、サウンド面でも余白があり音のニュアンスを思い思いに感じられるような作品になっていると感じました。

音数を詰め込んで豪華にするというよりは、音を抜いたり、音質をタイトにしたということを結構やって、よりシンプルになっていると思います。

――今回のアルバムで歌うメッセージにとっては、そういうサウンドの方が合うと思って意識されたことですか?

それもあります。あと、制作段階で聴いていた曲に好きなものや気に入るものが多かったので、その影響も受けています。

――iriさんは普段どんな曲を聴かれるんですか?

結構ダウナーな曲も好きですし、アップテンポの爽やかな感じの曲ももちろん好きです。まあヒップホップやラップが多いです。今回の制作中に聞いていたのは女性アーティストでラップもできるし歌も歌うってアーティストさんが多かったかもしれません。あとトラック面では、ちょっとジャジーなものも好きです。


引き算でインパクトのある曲に


――今作も、大勢のプロデューサー、アレンジャーやトラックメイカーの方が参加されています。初めて一緒に制作をする方もいたと思いますが、どんなことが印象に残っていますか?

やっぱり「Shade」(M1)の大沢伸一さんが一番印象に残っていますね。なかなか直接会って作業できない方もいる中で、大沢さんとはスタジオで密にやり取りしながら制作したので。

――どんなやり取りがあったのか詳しく教えてください。

最初に大沢さんとどういう曲を作ろうかとお話するにあたり、前作のアルバムなども聴いていただきました。それで、「これを踏まえて大沢さんだったらどういう作品がいいと思いますか?」とか、「私最近こういう音楽聴いているんですけど…」という話をしたんです。そうしたら「前作の『Juice』は音数がいっぱい入ってぎっしりした感じだけど、今回はもっと“引き算”で音を抜いてシンプルにして、iriの歌がもっと前に出ることでインパクトのある曲に仕上げたらどうかな?」と言っていただいて、ハッとしました。

――確かに「Shade」(M1)の冒頭はピアノの和音が粛々と響き渡り、このシンプルさにかえってすごく引き込まれました。

音数の他にも、歌い方もかなり意識してやっていることがあります。やっぱり人って自分の歌い方の癖がどうしてもあって、例えば私の場合はいらないところに多くフェイク(※)が入ってしまうんですよ。それを爆発させている曲もあるんですけど、大沢さんとの曲ではレコーディングの時にフェイクを入れないで、パツパツと切って歌ってみてとアドバイスをいただいて。そうすることによって曲にすごくメリハリが出て、カッコよく仕上がりました。それは今後の作品にも生かしたいと思っています!
※本来のメロディーの一部をリズムや音程を変えて自由に歌うこと。

――やはり他の人の視点からのアドバイスというのは良い刺激になると感じていらっしゃいますか。

そうですね!「Flashlight」(M6)のtofubeatsくんとのレコーディングの際も、「もうちょっとニュアンスを出した歌い方をしてほしい」というような話もあって、それで歌詞に合わせてちょっと自分の中でいつもよりエモい感じに歌ってみたりしました。そういったアドバイスもすごい勉強になったと感じています。

――「mirror」(M11)は、参加されているアーティストの方(三浦淳悟(PETROLZ)、澤村一平&隅垣元佐(SANABAGUN)、Kan Sano)が多いですが、この曲はどのように制作をすすめられましたか?

「mirror」は私の好きなプレイヤーの人たちを集めて、スタジオでセッションをしながら作ったんです。だからそういう臨場感もあると思うし、その制作方法も新鮮で楽しかったです。


自分らしい曲で、聴く人にプラスの何かを感じてほしい


――普段の制作手順というのはどういう流れなんですか?

最初はギターで弾き語りのように曲を作っていたので、1stアルバムはそういう曲がメインでした。最近は、トラックッメイカーさんにトラックをいただいて、そこにリリックを乗せる感じで作っています。ただ、今後はギターで作る曲をまた増やしていきたいなって思っています。

――というのは?

ギターが一番自分らしい曲ができる気がしているんです。メロディーというか、なんかこう…グルーブが!

――自分らしさをもっと楽曲に落とし込んでいきたいということは、今回のアルバム「Shade」のようにご自身の内面的な部分を今後も表現していきたいということでしょうか?

そうですね。ただ、今作もネガティブなことも歌っているんですけど、ただネガティブなワードを並べているわけではなくて、「自分はこう思っている」、「こうしたい」、「こうしていくんだ!」という意志もちゃんと歌詞にしているんです。

――そういう歌詞から、iriさんはリスナーの方にどんなことを伝えたいですか?

分かりやすく背中を押すとかじゃないですけど、でも歌詞の中身だったり、曲を聴いたときに“何か”を感じてもらって、それが結果的にその人のプラスになればいいなと思います。

――「Shade」の制作が一区切りついて、今はどんなモードですか?

一旦制作はストップで、どちらかというとインプットの時間です。でも、ちょこちょこイメージがわけば録音したりもしています。

――インプットとアウトプットははっきり分ける方なんですね。ちなみに、音楽はもちろん、その他のカルチャーからインスパイアされることはありますか?

アウトプットすると一旦からっぽになってしまうので、インプットとアウトプットは分けていますね。音楽以外は、映画も観ます。なので、物語の空気感みたいなものは吸収していると思います。

――春には「Shade」を提げた『iri Spring Tour 2019 “Shade”』が開催されます。どんなツアーになりそうですか?

バンドで演奏をするんですけど、今回のアルバムは生の楽器の音がより増えたのでそれをうまくカッコよく再現したいと思っています。そして「Shade」(M1)のように音数が少ない曲もあるのでライブでは特に緊張しそうです。どんな空間が作れるかを私も楽しみにしています。


インタビュー・文/岡部瑞希



3rd Album 「Shade」 Now on sale

iri Official Website http://www.iriofficial.com/
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