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「このアルバムが評価されないと、岡崎体育としての音楽家の命も死んだと思ってる」岡崎体育

2018/12/21 16:00


「このアルバムが評価されないと、岡崎体育としての音楽家の命も死んだと思ってる」


2019年1月9日(水)に3rdアルバム「SAITAMA」をリリースする、岡崎体育。約1年半ぶりとなるオリジナルアルバムは、来年6月9日(日)に控える夢のさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブに向けて制作された、覚悟の一枚だ。NHK連続テレビ小説『まんぷく』に出演するなど今や彼は活動の幅を広げ、老若男女問わずその名は知れ渡っているだろう。音楽家としての精神を反映させた渾身のアルバムについて、また来るさいたまスーパーアリーナに向けて語ってもらった。



「実は表舞台から身を退こうと思っていた」


――岡崎体育さんにとって“夢の場所”である、さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブが決まりました。お気持ちはいかがですか?

いろんなライブやフェスで「さいたまスーパーアリーナで絶対にワンマンライブをします」と言葉を残してステージを降りることを繰り返していたんですけど、決まるまでは実現するかどうかまだ不透明だったので嬉しいですね。僕のやってきた音楽活動のスタイル的に3年で決めないとダメだなと、メジャーデビュー後の3年構想をしていたんです。それはデビューする前から考えていたことだったので、最善のタイミングで決まり発表できました。でもここで終わりではなくて、ライブ当日は満員のお客さん全員をブチ上げて成功させる。それで初めて僕の夢が叶うんです。まだまだ夢の途中ですね。

――どうして3年構想に基づき活動していたんですか?

学生の頃から自分で目標を立てないとあんまり火がつかないタイプだったんです。退路を断つつもりで自分のケツを叩いて、自分の夢や目標は口に出して人に伝えるように昔からしていました。学生の時に受験勉強や部活などにおいて目標を立てていたその延長線上で、今は音楽業界に身を置いてるので自分が音楽家としての目標は口に出すようにしていますね。

――口に出すと、やらなきゃいけないという責任感が生まれますよね。

僕は今も京都の宇治という街で実家暮らしをしてるんですけど、そこからも見て取れるように責任感がほぼ皆無の人間なんです。炊事洗濯などの家事でも全部家族に任せっぱなしで今まで生きてきました。そういう自分のだらしない性格を打ち消すように目標はいつも立てています。

――ワンマンライブを発表した際に「集大成として、このライブで今までの岡崎体育の音楽人生をすべてぶつけて、燃え尽きるつもりでやろうと思っています」と仰っていたことが印象的でした。

実はデビューした時からずっと考えていたことなんですけど、さいたまスーパーアリーナでワンマンライブが実現できて成功で終わったら、完全に表舞台から身を退こうと思っていました。それからは音楽作家やプロデューサーなどの立場に回って、音楽を作るだけの仕事をしたかった。本当に最近までその気持ちでいたんです。でも今は消えました。

――何がきっかけでその気持ちは消えたんですか?

岡崎体育という名前で活動してきて、メジャーデビューしてから今2年半ぐらいになりました。その中で大きなステージ、例えばROCK IN JAPAN FESTIVALでは3万人ぐらいのお客さんの6万個の目が自分一人を見ている状況や、岡崎体育の名前でライブをすることの楽しさから、自分の人生においてすごい部分なんだなと感じることが多かったんです。だから、最初に思っていた身を退く想いは今消えていて、これからも一生岡崎体育をやっていくんだろうなと思います。


「音楽家だぞという、自分の精神を植え付けたかった」


――今作はさいたまスーパーアリーナに向けてのアルバムということになりますが、どのような気持ちで作られましたか?

ネタ曲を入れてその曲でMVを作って、世間の中で話題にしてもらってセールスにつなげる。それが今までの僕のやり方で、今回もそうしようと考えていました。さいたまスーパーアリーナのワンマンライブまでにはネタ曲を2曲ぐらい書いてバズらせるぞとレコード会社とイメージを共有して、そのつもりで進めていたんです。でも実際にはレコード会社に作っていたネタ曲を聴かせることなく、今年の夏頃に僕が「すみません、ネタ曲を止めさせてもらいます」と無理を言うかたちで、今回のようになりました。ふっと吹っ切れたんですよね。

――これまでとは違う想いが込められているんですね。

さいたまスーパーアリーナのでワンマンライブをする時に、ネタ曲の部分をすごい好きで岡崎体育を観て、そこでおおいに盛り上がって楽しむぞ、いっぱい笑うぞと来てくれるのか。それとも、岡崎体育の音楽的な側面に何か感じることがあって、岡崎体育のワンマンライブを観にさいたままで来てくれるのか。僕はどっちかと言うと後者の思いで来て欲しいなと。もちろん前者の楽しみたい、笑いたいという気持ちで来てくれるのは嬉しいです。でも一人の音楽家のこだわりとして、さいたままでの直近のアルバムは自分が本当に作りたいと思って作った曲だけを入れて、売れるか売れないかは置いといて、これが評価されないと僕は岡崎体育としての音楽家の命も死んだと思っています。そういう覚悟でこの曲目になりましたね。

――今や岡崎体育さんは活動の幅を広げていますが、音楽家としてどのような作品を出すのかを意識したんですね。

あくまで僕は自分がミュージシャンだと信じていて。世間の評価だと、岡崎体育のことを音楽芸人やユーチューバーだと思ってる人が多いみたいなんです。それに関しては全然どういう入り口で岡崎体育を知ってくれてもいいので、こだわりはありません。でもやっぱり自分の中では周りにどう思われようと、音楽家だぞという自分の精神を植え付けたかったので、こういう仕上がりになりました。

――今作についてはサウンドへのこだわりを感じられました。

歯を出して「あはは」と笑うだけが面白さではないと思うんですよね。ネタ曲じゃない曲でも、歌詞の音符への当てはめ方が気持ちよかったら、それはそれで面白い。自分なりの面白いという切り取り方を、別の切り口でやってみたっていうのはあります。例えば美術館に行ってゲラゲラ笑うことってないですけど、見てて面白い絵だなと思うこともあるから、作品としての面白さを感じ取ってほしいなという個人的な想いはありますね。

――曲を構成している一つひとつのものに対して感じ取れるであろう面白さ、ということなんですね。

受け取り手の印象は人によって違います。僕は作り手として世の中に出すという、そこまでの仕事だから、リリースしてからはお客さんがこのアルバムを聴いて、どう受け止めてもらうかは自由なんですよね。僕が意図してなかったことも、実はこれってこうなんじゃないかってお客さんが言ってくれて、「確かにそういう潜在的なもんあったかもしれへん」って後で僕が気づくこともありました。僕は作品の面白さって、こういうところだと思います。


「今回のアルバムは作りたいものだけ作った」


――作品としての面白さを追及した制作はいかがでしたか?

実家の自室で、学習机の上で、力を抜いて作りたい曲を作りました。なんとなく「この音いいな。このリフ良かったな。ここは音符の位置を変えてみよう」と音色を選んだりする試行錯誤をしてる時間が、僕にとって1番の楽しい時間なんですよね。逆にネタ曲を作る時は違うんです。音楽は中高生が流行の中心だったりする世界なので、中高生の感覚に寄り添うことの難しさや、さらに今の時代において何が面白いとされるのかというのもあるから、ネタ曲に関しては根詰めます。ただ今回はそういうのを排除して、作りたいものだけ作ったので、本当に幸せな心持ちで曲を作らせてもらいました。一人で音楽作ってる時間が、僕はすごく幸せなんですよね。

――作りたいものを作ったというアルバムを出すということに関して、お気持ちはどうですか?

メジャーデビュー前は、今と同じような寸劇を挟んだネタっぽいライブをしていながら、アルバムは全くチョケなくて普通に作った曲を岡崎体育のグッズとして売ってたんです。それに立ち返った気持ちですね。岡崎体育のライブを見ていいなと思って、物販でCDを買って家に帰って聴いてみたら、「なんや全然違う側面もあるやんけ」っていう新しい発見を芽生えさせる。それが出来たら、僕は変則的なミュージシャンとして成功した一例になるんじゃないかなと信じているんです。

――「からだ」はまさしくさいたまへ向けての曲ですよね。

実はインディーズの頃にすでに自主制作でリリースしてた曲だったんですけど、500枚しか刷ってなかったのでほとんどの人が知らない曲だと思います。この曲は自分語りの最たるものじゃないかなという特別な想いがあって。さいたまスーパーアリーナを目指し始めた頃の感覚で書いた曲なので、今こういう攻撃的でちょっと青さの残るような歌詞は、もしかしたら書けないかもしれないです。ただ昔のストックから曲を持ってくるのは恥ずかしくて抵抗ありました。「もっと出来たやろ」って感じることがいろいろ出てきてしまって。でもこの作品自体には納得がいってますし、今のタイミングでしか出せない曲なので、ここしかないなと思って入れましたね。

――そして「龍」は、とても沁みるものがありました。

さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブの発表をラジオでした後に、その日はホテルに帰ったら「岡崎体育ついに決まったな!」みたいなことをTwitterとかで7万ぐらいのツイートになるくらい、みんな言ってくれているのを見ていたんです。3年ぐらい前までは京都の宇治という田舎で細々と音楽活動をしてきて、今こんなに大勢の人が僕のことを気にかけてくれているんだと改めて実感しました。音楽家としてやってきてすごい良かったなとも感じましたし、一人の人間として人に興味を持たれてるということがすごい嬉しくて。でもさらに、さいたまスーパーアリーナでワンマンライブをすることへの恐怖が増したんですよね。

――フェスなどの大きなステージで経験してきたお客さんの数よりも、膨大な人の注目によってこれまでにはなかった感情が生まれたんですね。

こんなにもみんなが見てることに怖くなって不安になりました。より覚悟も生まれたりして、その日の夜にいろんな感情がぐちゃぐちゃになって、表現できない気持ちになったんです。何とかしてこの今の気持ちを曲にしようと思って、その日のうちに歌詞をメモ書きしたりしました。その空気感を曲にしたのが「龍」ですね。龍という架空の生き物に、自分と別人格のエンターテイナー・岡崎体育としての生き様を当てはめて書きました。

――今はホールツアー真っ最中ですが、ツアーはいかがですか?

お客さんが座っているライブは駒澤大学の大学祭で1回経験しただけで、ホール自体が初めての状況なのでいろいろ試行錯誤しています。椅子があるという状況を有利に変えるような新曲が出来たと思ってますし、普段やってる曲も椅子ありきのマイナーチェンジをしました。僕なりに椅子があるということに関して考え尽くしたツアーになっています。

――名古屋は来年の1月13日(日)に行います。

名古屋って、元気な人が全国で一番多いイメージがあるんですよ。陽キャが多いのかもしれないですね。僕自体すごい陰キャなんで、フェスで「岡崎体育!いぇー!」って来てくれる人が苦手だったんです。それが名古屋で鍛えられました。インディーズの頃から名古屋ではライブしていたので、野次に対するレスポンスや即座のコメントや発言力、判断力も名古屋で培ったのもある。「成長した岡崎体育を観に来いよ、お前ら!」と思っています。


インタビュー・文/笠原幸乃


3rd Album 「SAITAMA」 2019.01.09 Release

岡崎体育 Official Website https://okazakitaiiku.com
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