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「幸せは自分で選択する! 今の時代だからこそ『GRRRLISM』は出るべくして出た作品」

2018/12/05 14:00

12月5日(水)に1stアルバム「GRRRLISM」(ヨミ:ガーリズム)をリリースした、あっこゴリラ。今年4月にメジャーデビューを発表した彼女は、今や雑誌『AERA』でのインタビュー露出やファッションモデルとしての起用など、音楽のフィールドを越えてマルチに活躍している。今作はすでに配信シングルとしてリリースされた「余裕」・「エビバディBO」をはじめ、04 Limited Sazabysのボーカル&ベースであるGENとのコラボレーション曲「GOOD VIBRATIONS × GEN (from 04 Limited Sazabys)」など全12曲を収録。“らしさの枠組みから自由へ!”と伝えたい思いが濃厚に詰め込まれたアルバムとなった。今作の制作に触れながら、彼女が発信し続けているメッセージについて語ってもらった。



「私一人が“解放!自由!”と言ってたって、文化は根付かない」


――「GRRRLISM」の構想はいつ頃から考えていたんですか?

具体的に考え始めたのは7月からですね。でも前作EP「GREEN QUEEN」を作った時に、次を作るならこういうものになると言う漠然としたイメージはありました。

――今作において、女らしさ・男らしさからの解放というテーマがありますが、その“らしさ”についてどのように考えていますか?

長い月日でなんとなくそうなっちゃったものだと思っています。自然に固まったものだから絶対に守らなきゃいけないわけじゃないのに、そういうものを守るのが当たり前になっていると感じています。

――いつから、そうだと気付き始めたんですか?

これに関しては、小さい頃から割と違和感があった方だったんです。悶々と考えているうちに途中から“こういうことを考えるのって時間の無駄”だと思っちゃったんですよ。“こんなこと考えてる意味がない。社会で生きてく上で意味がない”と、普通に思考停止してしまって。だけどヒップホップやるようになって、思いっきり型にハメられることを経験してから、その時に幼い時から思っていたことにリンクしたんです。それから徐々にラップでこの思いを言わなきゃいけないなって、考えるようになりました。

――実際に発信されていて、どう感じていますか?

意外とみんなも同じようなことを思ってんだなって感じています。そうだと思ってはいたけど、それ以上に“同じこと思ってます”といった声をもらうことが多くなりました。しかも少しずつジワジワと声が届いてくるので、すごいその感じがリアルなんですよね。思いっきり爆発的に“私も!”というのじゃなくて、“実は……”と最初は匿名でくるんです。

――それはとてもリアルな反応ですよね。

私一人が“解放!自由!”と言ってたって、そんな文化は根付かないんですよね。“あなたのような人がこういうこと言ってくれて嬉しいです”って匿名で言ってくれる子に、“まずそう言ってくれるあなたが応援してくれないと、そんな影響力出ないから!応援して!”と言っていたら、徐々にみんなが協力してくれるようになってきて。理解者が一人ずつ増えていっているのを感じています。でも本当は、理解してくれる人がもっといると思うんです。

――そのような声は女の子からの方が多かったりしますか?

『GRRRLISM』という女の子から派生した言葉を選んでる時点で、女の子からの方が多いとは思います。でも女らしさと男らしさは表裏一体なんですよね。だから男の子からだけでなく、自分がどのジェンダーに当てはまるか分からないっていう子からもメッセージがくるようになってきて、今はそのへんまで汲み取ってくれる子たちが多くなってきたと感じています。徐々に女の子以外からも増えてることが嬉しいですね。みんな言いたいことがあると思うから。


「共感ではなくて、共鳴していきたい」


――発信されているメッセージは今の時代にすごくリンクしてくると思います。世の中の流れについてはどのように考えていますか?

“どんどん多様性を認めないとダサいでしょ!”っていう感じになってることが、すごくいいことだと思っています。もっとその考えが根付くといいなって。普通にこれって正しいことだし、認め合わないのはダサいでしょ?人はみんなバラバラなんだから、そこをあれこれ言うのってナンセンスですよね。だから私は将来的には多様性を認めることが絶対に当たり前になってるって信じてるし、その価値観が今ちょうど入れ替わってる時代だから、「GRRRLISM」は出るべくして出た作品だと思ってるんです。さらに下の世代の表現者から触発されてコンタクトを取ったりして私自身の交流の幅が広がってきているので、そういった同じ気持ちである人たちともっと連帯していって、何かのきっかけになれば嬉しいです。

――そのスタンスは「余裕」に書かれたリリック〈場違い繰り返したら / 何年かしたら / それが“普通”となっているでしょう〉に行き着くように感じました。

そうですね。私って、一人だけテンション高くて、一人だけぶっ飛んでるという印象をめちゃくちゃ与えてしまうんです。こないだもラジオのコメント収録で、朝5時に流す設定と聞いたので自分的にはすごい低いトーンで言ったんですよ。でも終わった後に“本当に元気な人ですねー!”って言われて、“えっ!めっちゃ大人しくやってたのに……マジ?!”って思ったんです。他にもライブをやってても一人だけブチ上がった気持ちになることがあるんですけど、元気だからではなくて淋しくてそうなってる。“アッコちゃんは自由でいいよね”って言われることに対して、“いや、違うんだよ!マジ私もちょっと囚われてるからこそ前に進みたいし、未来に行きたいからこういうことを提示してるんだよ”っていうのを出すようにしてて。だから場違いで居続けた。でも今はその場違い仲間が増えてきた(笑)

――仲間が増えることは心強いですね。

めちゃめちゃ嬉しいです。こういうことって一人の力じゃ変えられないじゃないですか。普通に価値観として根付かせるには、パワーが大きくないといけないから数が必要ですよね。“こうすれば幸せです”と決まったかたちを示すのではなくて、どっちかと言うと“今まで囚われたところから自由になろうよ”と伝えたい。自由になった先のやり方はみんなそれぞれバラバラでいいんです。そういう意味で、共感ではなくて共鳴していきたいと考えています。

――確かに、あっこゴリラさんのメッセージは具体的な幸せの提示はしていませんよね。

そうそう! 幸せは自分で選択する!決めるっていうこと。幸せの押し付けがうるさいと思ってるんですよね(笑)。例えば“結婚どうするの?”ってすごく聞かれたり。

――“普通の幸せ”という価値観が決まってますよね。私も女性なのでその立場から考えると、“結婚どうするの?”の先には“子供どうするの?”という質問が待っていると思うと、気が重くなってしまっています。

“え?私の何を知ってるの?”ってなっちゃう。例えば40代で子供がいない女性が“子供いないんですけどね”と自虐しちゃって、それで笑えちゃう文化も“だっさ!”ってぶっちゃけ思っちゃうんですよ。“これで面白いってなっちゃうの、やベーよ”って。みんなが“全然面白くない”って笑えなくなる世の中にしたい。“好きに言ったら?”と堂々としていられるような社会になってほしい。


「時代とのプロレスですね(笑)!」


――先ほど仰っていた“幸せは自分で選択する”というメッセージは、常にあっこゴリラさんの芯にありますよね。その思いが詰め込まれた曲が表題曲「GRRRLISM」となると思います。

リリックがめちゃめちゃ気に入ってますね。でもこのリリックに辿り着くまでに、“神リリックができたの!神!絶対これ完璧!”と思って一度は完成したものを書き直したんです。曲にのせてみたら、“説教くさっ!うるさっ!”って思ったんですよね。やっぱり聴いてノリとして楽しくないと嫌だし、楽しくないことはやりたくないということが私のテーマなんです。伝えたい気持ちがあり過ぎて硬くなっていたので、聴いて楽しくなるようにほぐしました。

――「GRRRLISM」に綴られている根本的な気持ちは、伝えようとすると“どうして分かってくれないの!”と押し付けてしまいがちになるのに、ポジティブなエネルギーに転化しています。このような姿勢はこの曲だけでなく、あっこゴリラさんが発信するメッセージにおいて全般的に通ずることだと感じました。

そこはすごく意識しています。女の人が一生懸命に伝えようとしても伝わらなくて、悔しい思いをして“うわああああ!”ってやるとヒステリックだって片付けられることがあるじゃないですか。私はそれとかも“なくなればいいのに!”と思うんですよ。感情を高ぶらせることは別に悪いことでは絶対にないし、むしろ“最高!”なことだから。その上で私はポジティブなものに支えられて生きてきたからこそ、ポジティブにアウトプットする。それが自分のやりたいことなんです。でも私と同じ気持ちを抱えてて、別のアウトプットの仕方をしてるクリエイターさんもいっぱいます。私はそういう人たちも“すげーいいじゃん!”って思ってます。

――ポジティブに発信することで、呪いと言われるような“そうあるべきもの”に気付けなかった人たちにとっての気付きにも繋がると思いました。

そこも今回はめちゃくちゃ意識したので、きっかけになれたら本当に嬉しいです。場が盛り上がるし楽だから、周りから決められた幸せの枠にハマった立ち回りになって、いつの間にか疲弊してる。でもそこを敏感にキャッチしたらしたで辛いから、キャッチしないで別のことをして気を紛らして、どんどん麻痺していくことが私は身に覚えがあるんです。だから嫌な思いになって“うぅ……”ってなることを飲み込むんじゃなくて、誰でもその思いを発信できる。そういう気持ちは全然怖くないということを伝えたいんです。でも、私ってネガティブなんですよ。

――そうなんですか! ネガティブだなんて思いもしませんでした。

めっちゃネガ! ポジティブにしないと普通に生きられないんですよね。あとはヒップホップがネガティブな気持ちをバーッと言っても、それがポジティブに変わったりするものでもあったことも関係していると思います。ヒップホップだからこそという部分もあるんだろうけど、ポジティブに伝えるのって実はめちゃめちゃ難しいんですよ。私の方法はちぐはぐだって言われたりもしますし。感情を発することは何にもネガティブなことじゃないって伝えようと私がやってることは、初歩の初歩なんですよね。みんなが発信しようとする気持ちになるまでのテンションの底上げをする役割なのかなと思っています。発信すると決めた後のどう発信するかについての方法は各々の自由なんですけど、どんなかたちでもいいから、まずは何かをやるときの立ち上がる勇気をみんなに持ってもらいたい。

――一歩踏み出すきっかけということなんですね。

特に今作はそうですね。もともとこのアルバムを作る時に“本当はもっといっぱい言いたいことがあるんだけど、一枚じゃ無理だ!”って思って、“敢えてここだけを描こう”と言いたいことの一部を切り取って作りました。だから「GRRRLISM」に関しては“ちょっと声出してみよう!発声練習!”と呼びかけていくような、最初の一歩という意識が強いんです」

――まだまだ伝えたいことはたくさんあるかと思いますが、この先はどのように考えていますか?

「GRRRLISM」がどのくらいみんなに伝わるかにもよるんですけど、世の中的には尖ってるアプローチであるのは分かってる。だからあんまり伝わりきらなかったら、今作をもっと細かいディテールでアウトプットする方向で曲を作るかもしれないです。逆にこの第一声が届いたらもっと描ききれなかった部分を描いて進んでいるかもしれません。そこはちょっとね、時代とのプロレスですね(笑)! こういう時代に生まれ落ちてきて、これまで生きてきたからこそ、この作品ができた。今後も時代とのコミュニケーションを取って、言いたいことや伝えたいことを私なりの方法でたくさんの人に届けていこうと思います。ついこの間も“脇毛生やしてる”ってライブとかで言ったら、ドン引きの空気になりましたもん(笑)。だから私は音楽とエンターテイメントで、ぶっちぎりたいんですよね。


インタビュー・文/笠原幸乃


1st Album 「GRRRLISM」 Now on sale

あっこゴリラ Official Website http://akkogorilla.yellow-artists.jp/
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