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「Bird Bear Hare and Fishは今後、スリリングなバンドになっていく」 Vo./Gt. 尾崎雄貴

2018/10/22 17:00

9月5日(水)に1stアルバム「Moon Boots」をリリースした、Bird Bear Hare and Fish(以下、BBHF)。元Galileo Galileiの尾崎雄貴(Vo./Gt.)、尾崎和樹(Dr.)、佐孝仁司(Ba.)と、彼らのラストツアーでサポートを務めたDAIKI(Gt.)の4人で結成した。今年の1月27日に行われた尾崎雄貴によるソロプロジェクト・warbearのライブにてBBHFのスタートが発表され、歓喜に湧いた人も多いことだろう。新たなスタートを切った4人は9月より今作を提げた全国ツアーを回り、新たにBBHFを結成したことで生まれた変化を感じているという。今回は「Moon Boots」の制作を中心にその変化について、尾崎雄貴と尾崎和樹に話を聞いた。



「作ることで生きている感覚を得られる」


――「Moon Boots」は1stアルバムとしての意識の上で制作されましたか?

雄貴:アルバムという作品集を作ることはいつも頭にあるので、1stアルバムだからという意識はなかったですね。BBHFを結成しようと決めた時点でアルバムを早く作りたいと思っていました。1stアルバムをリリースしましたけど、今は2ndアルバムのことを考えている。いつもそんな風に自分自身に急かされていて、アルバムを作ることで生きている感覚を得られるんです。だからGalileo Galileiを終了した後、音源のリリースができなかった長い期間はフラストレーションが溜まっていました。アルバムを作ってそれを人に聴いてもらって批評されることが、僕らにとっては最重要なことなんです。

――アルバムへの想いが強いんですね。

雄貴:10代から聴いてきた音楽や今でも聴いている音楽など、どんな音楽を思い返しても思い浮かぶのはシングルじゃなくてアルバムなんです。何枚ものアルバムに人生を動かされてきた。その経験もあって僕ら自身もアルバムを書くことがどういう意味なのかってよく理解してるから、曲を書きながらいつだってアルバムを作りたいなと思っています。

――どのように曲作りを進めていたんですか?

雄貴:基本的に僕が曲を書いて、それに対してメンバーがそれぞれアイディア出していく流れで作りました。僕は曲を書くことが、朝起きてコーヒー飲むのと同じように自分の日常生活の一部になっている。それくらい、いつも曲を書いているんです。和樹と僕は住んでいるところが近いから割と一緒にいることが多くて、この二人の間ではどんどん曲ができていきましたね。

――今作は出来上がっていく曲の中から選んで収録したんですか?

雄貴:僕の中で、これはソロプロジェクトだな、これはBBHFだな、これはどっちでもなさそうだしアルバムを乱しちゃうから残しておこうとか、そういう感じで曲をストックしていってるんです。書く時っていうのは基本的に“今日はBBHFの曲を書くぞ”と決めて書くわけじゃないんですよね。それをやると逆にうまくいかなかったりすることの方が多くて。今作はBBHFのファーストアルバムになってきたなという曲たちが出来てきて、そこからはBBHFの曲を書くことに集中しました。だいたい5曲ぐらい、アルバムの半分くらい出来ちゃえば、後はその方向性が見えてくるんです。そこから今1stアルバム作っているなと実感し始めて、アルバムを作る日々になっていきました。

――これまで経験してきた制作と比べてどうでしたか?

雄貴:Galileo Galileiでは3人が一緒に住んでたというのもあって、朝起きて10時に集合してパッと出来たくらい、制作がスムーズでした。でもBBHFでは僕と和樹は札幌、仁司とDAIKIくんは東京にいるようになって、札幌と東京という離れた中での制作になった。この環境の違いが大きく表れているかなと思っています。僕のソロプロジェクトとしてのwarbearも、一人でいろんな楽器を使って自宅で録ってました。自分がやればやるほどできるから、思い通りにいくわけじゃないですか。でも離れてるとそうはいかず、僕がどんなに良いギターフレーズのアイディアを思いついてもDAIKIくんは東京にいて、データでのやり取りになる。ただ何度か札幌に来てもらったりもしたけど、東京から札幌まで飛行機に乗ってきて集まるのはお金もかかるし、時間も有限なんですよね。“本当はもうちょっとやりたかったけど、ここでストップしておこう”っていう、限られている中での焦りはありました。こういうことってクリエイティブじゃなく聞こえるけど、クリエイティブだけ煮詰めてるとアルバムは完成しない。アルバムをまとめあげる意味では、みんなと離れてたことで生まれた物理的な距離感がうまく作用したと思います。


「音楽的なぶつかり合いが生まれている」


――今作はプロデューサーにPOP ETCのクリストファー・チュウさんを迎えました。

雄貴:今までもミックスやマスタリングは自分たちでやってきたので、レコーディングスタジオに入ってエンジニアにお願いする必要性が、僕らってあまり少なかったんですよね。自分たちで全部わかっちゃうから、国内のエンジニアとあんまりうまくできなかったりするのが多くて。そこから自分たちが好きな音楽をミックスしてる海外のエンジニアにお願いしようという考え方に変わりました。そもそもエンジニアやプロデューサーなど、一緒に制作をするチームはアルバムを作る上でメンバーと同じくらい重要だったりするんですよね。

――第3のメンバーと言ったりしますよね。

雄貴:だから、その人が僕らの音楽を理解してくれていても、僕らが好きな音楽の仕事をしていないのはよく考えてみたらおかしい気がしたんです。僕らがリスペクトできる仕事をしている前提に当てはまった人に仕事をお願いしよう。そう考えたら、僕ら自身が海外の音楽、特にアメリカの音楽を聴くから、そこでやってる人の方が単純に僕らといい仕事ができるんじゃないかという結論に自然と行き着きました。でもそれはリスキーなことでもあるんです。海の向こうだから簡単に確認をしに行けなかったり、違う言語を挟んでやりとりしないといけなかったり、さらに依頼する金額のことだったり。そういうリスクを僕ら自身が背負って海外のエンジニアやプロデューサーにお願いしたい話を、レーベルが受け入れてくれる。リスクを冒してまでもレーベルにサウンドを追求する時間を後押ししてもらえる環境であることは、感謝でしかないです。

――サウンドへの探究心がこだわりとして、今作にもしっかりと表れていますよね。

雄貴:そういうこだわりに対しての理解がBBHFを前に進めていくんだろうなと感じています。またこのこだわりがちゃんと美学になって人に広がっていくことが、本当の意味でのクリエイティブな現象だと思うんで、僕ら自身はいつもそれを考えています。僕らはみんな大学に行ってないんですけど、一つの学問を理解してどんどん進めていくことの楽しさをレコーディングの中で感じるんです。僕らはミュージシャンなんだけど、研究員はこういう気分なのかなって思う。だからやめられないし、こだわりも捨てられない。でもそのこだわりも、バンド内では違う立ち位置からのこだわりだったりするんです。

――どういう違いがあるんですか?

雄貴:僕は、例えばこのアンプじゃないと僕らの音を出せないという機材オタクではなくて、どういう音でどういう風に収録されるのが楽曲にとって適正なのかを考えてるんです。目の前で音楽が生まれて、その音楽を良くすることが一番大事。それは和樹も同じ感覚で、だからこそ仁司とDAIKIくんからは“このベースじゃないと嫌だ”とか、“俺が弾いたフレーズじゃないと嫌だ”とか、プレイヤー的なこだわりをすごく感じるんですよね。そこが噛み合っているのはそれぞれの美学の違いがちゃんとあるからだと思っています。プレイヤー気質の人間とプロデューサー気質の人間というのが混在してるバンドだから、お互いにこだわる部分が噛み合ってトータルで隙のない作品になる。だから良いものができるんですけど、ぶつかり合いも生じます。ツアーを回りながらBBHFは今後、割とぶつかり合うバンドになるだろうなと思うようになりました。

――これまでにぶつかり合いはあまりなかったんですか?

雄貴:Galileo Galileiは僕が書く曲の世界観があってこそ、というかたちでデビューからやってきたので、ぶつかり合いはなかったんです。仁司も和樹もどんな音で流したいかというそれぞれの思惑より、アルバムの世界観や音の全体像を優先にして考えてやってくれていました。音楽でのぶつかり合いというよりは、音楽とは全然関係ないことでのぶつかり合いが多かった。BBHFは逆にその友達関係的なぶつかり合いが減って、音楽的なぶつかり合いが生まれているんです。これはバンド然としてることでもあり、“尾崎雄貴とバックバンド”じゃなくて、僕自身もメンバーと戦っていかなきゃいけないバンドになっている証拠なんですよね。今後、BBHFはスリリングなバンドになっていくんじゃないかなと感じています。


「同じ人間なんだけど、別の人とバンドをやっている不思議な感覚」


――バンドの空気感が180度変わったんですね。

雄貴:僕はいいことだと思っているんです。今まではメンバーに対して“僕と音楽やってくれてありがとね”という感覚があったんですよ。でもBBHFはお互いそう思ってない。“お互い音楽をやっていて当然。だっていいものを作るために集まってんだから”という想いがある。緊張感のある間柄になりました。その緊張感って、特に長くやってるバンドが逃げがちな部分だと思うんですよ。疲れるし大変だし、燃え上がりすぎると解散になっちゃう。だからみんなバランスを取ろうとするんだけど、クリエイティブとは逆の結果になったりする。僕らは美学の違いがあってバラバラでも、出てくる音や完成したものはお互いがちゃんと噛み合って作ったものが出来上がっていると感じています。BBHFではバランス取ろうとしすぎないでやっていきたいですね。Galileo Galileiでバランスを取ろうとしすぎた結果、息苦しさを感じた部分もあった。同じ過ちはもうしないと決めています。

和樹:確かにメンバーそれぞれの違いっていうのはGalileo Galileiの頃より、どんどん如実に出てきてる感じがしています。良い音楽を作るという一番でかい目標はみんな同じ。だけど、それ以外のやりたいことや完遂したいミッションがいい意味で全員バラバラになっているんですよね。

――ほぼ同じメンバーでBBHFをスタートさせたにも関わらず、そういった変化を感じているんですね。

雄貴:それはアルバムの制作とかだけじゃなくて、ライブでも全く同じことなんですよね。長くやればやるほどお互いから出てくるものの限界が分かっちゃうじゃないですか。その限界を分かっちゃう状況が、Galileo Galileiではライブのダレに繋がっていた。新しくBBHFをやる中でメンバー全員の意識が変わったんですよね。同じ人間なんだけど別の人とやってる不思議な感覚になってて。だからスリリングでライブが楽しいし、いい時もあれば悪い時もあるという振れ幅がすごい大きくなったんです。安定したライブも大事なことなんですけど、僕らみたいな性格のミュージシャンにとって振れ幅が大きければ大きいほど、自分たちのポテンシャルを感じることができる。また飽きずに音楽を生み出すことができるので、BBHFはその感覚が強いですね。

――ライブへの向き合い方も変わったんですね。

雄貴:自分たちが好きな音楽のジャンルといった枠組みの中で、より良いものを作りたいと集中していることには変わりはないです。ただこういうことを口で言うと、正義感溢れる感じになって音楽正義の話になるけど、僕らが向きあってる不特定多数の人達にとってはそうじゃないですよね。だからこそ今の僕らが目指してるものを理解した上で、ライブに来てくれる人たちやCDを買ってくれてる人たちに対して、感謝とリスペクトができるようになったんです。“僕らもすごいけど、僕らを良いと言ってくれるているあなたが本当にすごいよ”って思えるようになりました。普段の生活の中でテレビの音楽番組などで見る今の音楽業界が僕らにとっての逆風だとすれば、ライブで追い風を感じることできる。リスペクトする人たちの顔を間近に見れるライブは、パワーをもらえるんです。よりライブが、自分たちにとってなくてはならない大事なプロセスになっています。


インタビュー・文/笠原幸乃


1st Album 「Moon Boots」 Now on sale


Bird Bear Hare and Fish Official Website http://www.bbhf.jp/
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