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「洋楽と邦楽のおいしいところをミックスして、SHE’Sの音楽に落とし込むことが出来た」2ndフルアルバム「Wandering」をリリースしたピアノロックバンド、SHE’Sの井上竜馬(Vocal&Keyboard)にインタビュー!

2017/12/28 16:30

「洋楽と邦楽のおいしいところをミックスして、SHE’Sの音楽に落とし込むことが出来た」


2017年のSHE’Sはリリースイヤーの一年だったと思う。1月にメジャー1stアルバム「プルーストと花束」、6月に4thミニアルバム「Awakening」、そして12月に発売した2ndフルアルバム「Wandering」というスパンから、絶え間ないアウトプットを続けていたことを物語っている。今作はプロデューサーにGREAT3の片寄明人を迎え、以前からSHE’Sにありながらも表現し切れなかった洋楽のエッセンスを出すことにより、自信作へと繋がったと一枚だ。井上竜馬(Vocal&Keyboard)に制作過程を中心に話を聞いた。


「やりたい音楽を100パーセント出しきって、ずっと続けて行きたいと感じるようになった」


――「Wandering」を作り終えた今の心境はどうですか?

今作はメンバーとも自信のある作品ができたので、やりきったなと感じています。大変でしたけど、今回に関しては制作が楽しかったですね。自分の中で「Wandering」を作るときに、洋楽と邦楽のおいしいところをミックスして、SHE’Sの音楽に落とし込むっていうことを、より意識しました。アルバム「プルーストと花束」は自分が思い描いていたよりも、サウンドやメロディで洋楽のエッセンスを伝えきれなかったかなと感じていて。それを今回はやりきれたので、後悔しない作品が出来たという点で達成感はありますね。

――出し切れなかった洋楽のエッセンスを今作で出すことが出来たんですね。

常にやり切りたいと思ってはいるんですよね。「プルーストと花束」の曲自体は好きだし、これは一つのアルバムとしていい作品が出来たなって今も思っています。でも時間が経って客観的に聴いた時に、SHE’Sで出したい洋楽と邦楽のブレンド具合を出すという点で「もっとできたんじゃないか?」という認識がありましたね。特に今年は、自分のやりたい音楽を100パーセント出しきって、ずっと続けて行きたいということを感じたんです。そのプロセスの一部として作りたかった気持ちが強かった。次第にその感覚強くなっていった制作でした。

――客観的な視点を持って、作品を見ているんですね。

自分の作品は常に客観的に聴いてしまいますね。だからSHE’Sの色を意識しながら、どこまでそこからブレずに、幅広くできるかを考えています。今までは周りの声も多少なり気にしてはいました。でも今作に関しては自分の好きなものをやりきっているんで、それはないですね。前までは、例えばロック色の強い曲はそこまで求められてないと考えていたりもしてたんです。ピアノがあるし、バラードを中心にMVにしていたから、そういうイメージが強い中でどういう風にSHE’Sを見せたいかなっていうのを考えながら、ある程度作ってました。だけどそういうマイナスの意見は今回気にしてなくて、逆にSHE’Sでこういうのを聴きたいなという意見を取り入れたりしましたね。


「バンドとしての放浪を上手く表現できたら」


――井上さんのセルフライナーノーツによると、“日本から約1万キロ離れた場所で出逢った1人との出逢いの歌から始まるこの作品”とのことですが、今作「Wandering」はこの出逢いから構想が浮かんだのでしょうか?

今回のアルバムは「Wandering」というタイトルにすると決めた後に、旅に出たんです。今年の5月に一週間だけですけど、イギリスに行ってました。前作のミニアルバム「Awakening」を出すタイミングから「Wandering」というタイトルには決めていて、僕自身の旅の軌跡を描くというものではなくて、やってみたい音楽をやろうとするバンドとしての放浪を上手く表現できたらなという意味で付けたんです。

――放浪という意味の「Wandering」とタイトルに決めていたから、旅に出ようと思ったんですか?

それはないとも言い切れないんですけど、それだけじゃないというか。前から行きたいと思っていた気持ちと、このタイトルを決めたからこそという想いが重なって、旅立つ一ヵ月前くらいに今行こうって。ロンドンのホテルに泊まりながら、東西南北いろいろと一人で行きましたね。

――イギリスならではの音楽を中心に触れ合う目的で行かれたんですか?

単純に観光しに行ったんですよね。予め行きたい場所を決めずにふらっと行ったりしてました。前もって決めきってしまうのもよくないなとも思ってたから、調べずに現地で話を聞いてその日行く場所を決めていました。実際に行ってみて、僕はすごい好きな国だと感じましたね。一週間しか行ってないけど、そもそも文化が違いすぎるから建造物も景色も違う。何よりも感覚が違うっていうのは、面白かったです。

――その違いって、具体的にはどんなことで感じましたか?

現地の人から話を聞いて面白いなと思ったのは、伝統を大事にする姿勢だったんです。そういう国だからというのもあるけど、基本壊して新しいもの作ったりというのはしない。建物もずっと修繕され続けている。だからこそアンティークとかが今でもイギリスでは人気で、その流れがずっとあるというのは面白いと思いました。日本には取り壊して新しいものを作っていく印象があるので、そこが日本人とは違う感覚なのかなっていう。しかも人間的関係でもそういうものが根付いていると感じたから、もっとイギリスにいる人そのものを知りたいなと思いました。

――その旅で生まれた曲が「All My Life」なんですね。

あと「Home」もですね。両方とも日本に帰って来てから作ったんです。まず「All My Life」は、お爺さんに話しかけられてお喋りした時のことがきっかけで書いた曲で。“旅をしてるの?”って聞かれたことから始まったんですけど、すごく気さくな人でそのお爺さんもさまざまな国のバッチをいっぱい付けてるカバンを見せてくれながら、私もいろんなところ行っていたと話をしてくれました。その話の中で2番の歌詞にある“「少年よ、失敗も悪いもんじゃない / 右へ左へ行け 掴んだ後に手離してしまっても良い / 旅こそが人生だ」”と言われた言葉が印象に残ったんです。

――対して「Home」は、歌詞を見ずとも曲の音色だけで、家というものではなくもっと広い意味での帰ってくる場所としての“Home”という世界観を感じることができました。

この曲はいろんな音を取り入れましたね。ティン・ホイッスルというアイルランドの民族楽器も入れたんです。これはストーンヘンジに行った帰りのバスの中で書こうと思った曲で。帰りの道があまりにも広大で、“何平方キロメートルなんやろ?”って思ってしまうほど、菜の花畑が広がっていたりする絶景の中をバスが走るんです。そうやってロンドンへ帰っていく中で、家というよりは帰ってくる居場所、それがあるのは幸せだなって感じて。だから書こうと思いました。家に自分の居場所がない人はきっといると思って書いた曲なんで、そういう人たちにとって、このアルバムやSHE’Sの曲、ライブハウスがどこか心の居場所になってくれたら嬉しいなという気持ちがありますね。


「もうインディーズ時代の曲に負けてるようじゃダメだなっていう危機感がすごいあった」


――今作は前半に洋楽色の強い曲を並べている印象を受けました。

今回は洋楽的エッセンスを強めに制作した新曲を、前の方にドバッと持っていきたくて。前作から引っ張ってきている「Beautiful Day」や「Over You」、5・6年前に書いた「The World Lost You」は後半に入れたいと思ったんです。SHE’Sを客観的に見ていると、絶対この流れでいくのが正解だなと。今まで作品を作るにあたって前半で持ってこなかったような「Getting Mad」も、今作は前半で聴かせたかった。そうやってロック色の強い曲を頭の方に持ってきたいなというのは考えていたから、上手くできたのかなって思います。

――「Getting Mad」はここ最近のSHE’Sのイメージから考えると、アルバムに入れることは勇気のいることだったのではと思うのですが。

SHE’Sに抱かれているイメージをすごく気にしてた時期だったら、入れてなかった曲だとは思いますね。前までもこういうロック色の強い曲を作ってきたけど、ここまで結構振り切ってやったことはなかった。でも入れたことによって勢いが生まれて、アルバムとしていいものが出来ました。

――2曲目の「Blinking Lights」は湿っぽさのある音色が印象的です。

音色に関してはいろいろと試しました。この曲はプロデューサーの片寄さんから、BPMを上げようという提案があったんですよね。今よりも少しゆったりなミドルテンポの曲で作っていたので、最初は速過ぎへんかなと感じてはいたんですけど、やっていくうちにBPMを上げた方がカッコいいと思えるようになりましたね。ロックチューンとしては、今のかたちで良かったなって。

――そしてMVが公開された「Flare」では、その映像演出からインディーズの頃に作られた「Night Owl」に通ずるものがあるのかなと感じました。

歌詞の世界観と密接につながっているかと言えばそれは別なんですけど、関係はあります。個人的には今までずっと「Night Owl」の持つテイストの世界観を超えられなかったんですよね。曲を書いててそれが自分の中ですごい嫌だったし、毎回超えたいなって思いながら書いてはボツにしてを繰り返してて。チャレンジはするけど作品を出す度に入れることができないみたいな状態が、一年半以上あったんです。その想いから作り始めましたね。「Night Owl」をリリースしてから2年半ぐらい経っているんですけど、自分にとって今でも「Night Owl」に込めた気持ちはまだ消えてないって信じたいという意味では「Flare」へと繋がっている。MVに関しては同じ監督(脇坂侑希)に頼んでいるんですけど、意図的に“最後のサビ前あたりで「Night Owl」の映像を差し込んでくれへん?”と言って作りました。

――井上さんの中で「Night Owl」の存在が大きかったんですね。

そうですね。いまだにトップクラスで好きな曲です。SHE’S自体、組んだ時から暗くて英語ばっかりな曲を芯としてずっとやっていたし、「Night Owl」のような曲はSHE’Sでやりたい音楽の一つではある。だからこそ、もうインディーズ時代の曲に負けてるようじゃダメだなっていう危機感がすごいありました。でも進めていくうちに、結局は別ベクトルに向かって落ち着いたんです。

――別ベクトルというのは?

「Night Owl」は壮大なスケール感っていうのを意識して作ってたんですけど、「Flare」はストリングスも使ってないし、壮大なスケール感という同じ枠組みにはいないなって。自分たちの中で「Flare」は実験的な部分もあったんですよね。電子音がリフレインしている中で、いろんな楽器で味付けしていくっていうのはやったことなかった。でもそういう別の方向でもダークめな曲が出来上がったので、自分の納得のいく曲になりました。だから今では「Night Owl」とは比べるものでもないのかなと思ってもいますね。


「主観的にも客観的にも今のSHE’Sは土台が出来た」


――達成感のある今作を作り終えた今のSHE’Sを井上さんからの視点で見ると、どういう風に感じていますか?

土台が出来たっていう感覚があります。メジャーデビューしてからいろんな経験がありながら、前作のJ-POP寄りの音楽から今作はやりたいことがちゃんと作品になって、土台が出来たなと。それは主観的にも感じるし、客観的にSHE’Sの今の音を聴いても感じるんで、ここをブレずにまたいろいろと挑戦していきたいですね。もしかすると、もっと振り切っていい時もくるかもしれないから、それも楽しみです。

――また今年はフルアルバム二枚、ミニアルバムを一枚出すという、制作において多忙な日々だったかと思います。

今までにないペースで曲を書けたので、もう出来ないスパンはないなとは思ってます。やれば出来るっていうのを分かってくれてるから、スタッフは僕に振ってくれてると思うし、それに応えるのも楽しい。だから全然大変というよりかは、“これ出来なヤバい”っていう気持ちがありますね。このタスク乗り越えられへんようじゃ、きっとあかんのやろうなって思いながら作ってますし、まだまだ書きたい曲はあって全然尽きてないです。


インタビュー・文/笠原幸乃


2nd full Album 「Wandering」 Now on sale



SHE'S Official Site http://she-s.info/
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