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「恋人とか誰か一人に対する感情ではなくて、もっと大勢を相手にした広い意味での“愛”について書いたアルバムなんです」 最高傑作と自負するアルバム「エロティシズム」をリリースしたアカシックの理姫にインタビュー

2017/11/29 16:00


「恋人とか誰か一人に対する感情ではなくて、もっと大勢を相手にした広い意味での“愛”について書いたアルバムなんです」



紅一点の強烈な存在感を放つ理姫がボーカルを務める、4人組ロックバンド・アカシック。彼女たちが最高傑作と自負するニューアルバム「エロティシズム」をリリースした。今作には深夜ドラマ「ラブホの上野さん」の主題歌となった「愛×Happy×クレイジー」や「マイラグジュアリーナイト」などを収録し、どこを切りとってもシングルにできるような楽曲たちが収録されている。最高傑作はどのようにして完成されたのか、理姫に語ってもらった。



――今作「エロティシズム」はリード曲になれるようなナンバーがたくさん入っていると感じましたが、理姫さんはどんなアルバムになったと思っていますか? メンバーが「最高傑作」と言っているのも頷ける1枚だと思います。

今までの方がポップにしようとこだわっていたんですけど、今回は逆にやりたい事はどんどんやっちゃえという感じで作っていきました。メーターを振り切って作れたので、おもいきりのいい作品になったと思います。なので曲もポップさを意識したというよりかは、狂気じみた感じを演出したい曲があったら、そっちの方向に舵をきっています。これまでだったらやりすぎだからやめておこうとなる所も、“いいやいいや、やっちゃえ!”という感じで(笑)。で、アルバム曲の中にシングル曲が入っていったら、結局ポップじゃん!といえる1枚になったという。だから狙わずに、ポップになりましたね。

――サウンドもすごく聴きやすいアレンジだなと思いました。

サウンドやアレンジの面では井上うにさんに参加してもらったんですけど、うにさんとアカシックの相性がすごく良くて化けた曲がたくさんあります。特に「憂い切る身」は大化けしましたね。この洗練された音はうにさんのおかげなので、うにさん優勝って感じです(笑)。「裸-nude-」や「マイラグジュアリーナイト」はデモの状態とそんなに変わってなくて、これまではリーダー(奥脇達也・ギター)がメンバーの一人ひとりにどういう風に演奏してほしいか細かく言っていたんですけど、今回はそういう事が全くなくて。だから一人ひとりが自分の役割を全うしてやりましたね。

――アカシックの音楽を語る上でピアノは外せないと思うのですが、今作でもピアノの音がすごく印象に残っています。今はキーボードのメンバーはサポートですが、それでもこれだけピアノが前にでているのはやはりアカシックにとって大事だからですか?

アカシックはずっとピアノヒーローみたいなバンドですよね。今は正式メンバーでないパートだけど、ピアノが一番目立ってるという(笑)。それも割り切ってやっていて、歌詞の雰囲気や曲の完成形を想像した時にピアノが一番しっくりくることが多くて。リーダーが持ってる曲と私の歌があって、その次にピアノが目立つみたいなところはありますね。

――理姫さんが作曲でクレジットされている曲もありますが、これはメロディーを作ったんですか?

そうですね。リーダーが持ってきた曲にたいしてメロディーを大筋でつけたものはクレジットされてます。

――メロディーの作り方は、理姫さんの直感的なものですか?

リーダーは作曲に対してめちゃくちゃ勉強してるけど、私は完全に感覚です(笑)。だから曲に対して歌がズレていたりするんですけど、「エロティシズム」や「いちかばちかちゃん」は生っぽい雰囲気をだす為に、一発撮りで録音して。作り込んだ感よりも、生っぽさが大事な2曲だったから。あと今作は難しい曲が多いので、「邪魔」はあんまりライブで歌いたくないですね(笑)。オートチューンもかけているし、どんな風にライブでやろうかと今話し合ってます。この曲、なんか東京事変っぽくないですか?

――確かに、それは感じたかもしれません(笑)。

うにさんがアルバムに深く関わってくれているのも大きいのかな(笑)。なんていうかアカシックは、「自分たちが聴いて過ごしたJ-POPをもう一回自分たちで残したいよね」っていう感覚でやっているところがあって。だからネットでアカシックの曲が大塚 愛やaikoに間違われていることが多くて、それは嬉しいですね。私が中学生だった時めちゃくちゃ大塚 愛歌ってたし、“いいんじゃない?それ”と思って(笑)。昔好きだったアーティストの影響はどこかしらにでちゃうと思うので、私は良いことだと思ってますね。

――え!? そんな風によく言われるんですか?

ラジオで全くアカシックのことを知らない人が「今流れてた曲、aikoだと思った」と言ってるんですよ!

――アカシックの音だけを聴いて、ちゃんとJ-POPだと思い込んでいる人がいるということですもんね。それはすごいですよね。

バンドじゃなくて歌手ですよね(笑)。そうやってJ-POPとして聴かれるのはすごく嬉しいし、私が学生時代に第一線で活躍していた人に間違われるのも嬉しくて。私があの時聴いてていた音楽と同じレベルのものを作れているのかと思うと最高ですよね。でも、女の子が歌うと全部椎名林檎とaikoになってしまうのは、辛い時代だなぁ(笑)。

――確かにそれはそうですね(笑)。けれど、この作品はアカシックが間違いなく進化している事を証明しているからこそ、そうした現象が起きているんでしょうね。1枚で様々な表情のアカシックを楽しめますし、これからどんな風になっていくのかますます楽しみです。

私自身、こんなにバンドに没頭するようになると思っていなかったし、今はどんな時間よりもアカシックにかけてる時間が多くて。やっぱり人と一緒にバンドをやるのは楽しいし、ライブで皆に会えるのもすごく嬉しいんですよね。ライブをすることも、こうやって音楽をしていることも、お客さんが観に来てくれることも、全部が当たり前なんかじゃないと気づいたので、今は一瞬一瞬の活動が本当に楽しい。これからもアカシックはどんどん良い意味で驚かせていくと思うので、楽しみに待っていてほしいです。

――理姫さんの個性が最も発揮されるものの1つが歌詞だと思うのですが、今作の歌詞はご自身ではどう思っていますか?

とても気に入っています。メンバーは「憂い切る身」が好きだとよく言ってるんですけど、絶対意味分かってないでしょと思ってる(笑)。まあ、これは憂いてる自分を書いただけなんですけどね。今回は“愛、愛”とよく言っているから恋愛の曲が多いと思ってる人がいるはずだけど、恋人とか誰か一人に対する感情ではなくて、もっと大勢を相手にした“愛”について書いています。だから恋愛的な愛じゃなくて、人を思う愛みたいな感じで1枚を通して書いてるので、そこは特に伝えたいところです。パッと見「裸-nude-」も恋愛の曲として考えた方が分かりやすけど、家族や友だちもそうだし、ファンの人へ対する愛でもあります。そういう恋愛ではない愛について書いたというのは一貫してるな。

――そういったスタンスの歌詞は、バンドに熱中している今の理姫さんだからこそ書けた歌詞かもしれませんね。

そうなんですよね。今まで何を恋愛のことばっかり優先して書いていたんだろうという気持ちもあれば、もう初期のような歌詞は絶対に書けないなと思っています。大人になって失ったものもありつつ、変わったなと。こないだも近所のずっと仲良くしている45歳のお姉さんに「正直、最近の理姫の歌詞はつまらない」とはっきり言われて(笑)。昔は歌詞を読むと“しょうもないなこの娘”、幸せになれないとか、どんな涙を流しているんだろう?と思ってたみたいで。私の近くにいる分、そうした辛いことがありながら歌詞を書いてる姿にグッときてたみたいなんですけど、もうそこには戻れないんだよなぁと自分でも思っています。その時の良さもすごく分かるんですけどね。

――先日もTwitterでこれから読もうとしている小説をアップしていましたが、今日はその中の1つであった湊かなえさんの「母性」をキャンペーンにも持ち歩いていますよね。そうした読書家の1面も歌詞に影響しているのかなと思いました。

キャンペーンでめちゃくちゃ忙しかった時にミステリー小説を読み漁るようになって、もう離さずに持ち歩いています。だけどミステリー小説なので、歌詞に影響しているかどうかはよく分からなくて(笑)。ただ、間違いないのは、私のバイブルは「悪魔の辞典」です。文字通り悪魔の辞書なんですけど、フォークってひくと“死んだ人の肉を食べる為に必要なもの”みたいな感じで説明されてて。それが面白くて一時期ずっと読んでいました。内容がすごく歪んだことが書いてあるので、それにはだいぶ影響を受けたと思います。

――12月に行われるリリースツアー名古屋編も、とても楽しみにしています!

これからどんな風にライブをするかは詰めていくんですけど、この曲たちがどんな風にライブで響いてくれるのかめちゃくちゃ楽しみで。aikoや大塚 愛に間違われるぐらいの良い歌を、絶対生で聴きにきてほしいな。待ってま〜す。


インタビュー・文:菊池嘉人


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アカシック Official Site http://www.akasick.info/
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