記事詳細

「フラットな状態で聴いてもらって、今後のパスピエを違った感覚で楽しんでもらえたら」ミニアルバム「OTONARIさん」をリリースしたパスピエの大胡田なつき(Vocal)と成田ハネダ(Keyboard)にインタビュー!

2017/11/17 15:00

「フラットな状態で聴いてもらって、今後のパスピエを違った感覚で楽しんでもらえたら」



10月18日(水)にミニアルバム「OTONARIさん」をリリースした、パスピエ。5月にドラム・やおたくやの脱退を経て迎えた転換期に対する、パスピエなりの答えが詰まった一枚だ。サポートドラムを迎えた環境の変化に加えて、今までとは違う方向性への挑戦も垣間見える7曲が揃っている。今回は4人編成となったことへの前向きな姿勢、そして新たな可能性を求めた音作りなど「OTONARIさん」の制作過程を中心に、大胡田なつき(Vocal)と成田ハネダ(Keyboard)に話を聞いた。


「今までやってきたバンド感を否定するのではなく引き継いだ上で、新しいものを作りたかった」


――「OTONARIさん」は、前作アルバム「&DNA」から5ヵ月という短いスパンでのリリースとなりました。ドラムの脱退がありながら、非常に早く作品が出来上がりましたよね。

成田:今回のリリースタイミングはもともと決まっていたことだったんです。このまま予定通り出すのか、延期した方がいいのか迷いはしました。でも正式メンバーを入れてバンドを再始動していくことよりも、4人だからこそ出来る音楽もあるんじゃないかと思ったんですよね。それからいろんなトライをして、4人でやることをフレキシブルに考えられそうだなって目途も立って、今回はミニアルバムとして出す決断になりました。

――4人でやっていくことはリリース日が決まっていたからこそ、乗り越えられたっていうことでしょうか?

成田:パスピエの転換期になるとは思っているんですが、“抜けたことのショックやピンチをチャンスに変えよう”ということとはまた別な感じもしてて。8年間やってきた中で、パスピエは別のルートで音楽を歩んでみる時期かなとも思っていたんです。そういうのが脱退とタイミング的に重なっただけですかね。

大胡田:“リリースも決まってるし、どうなるんだろう?”っていう不安はありました。変わってしまったことで、失った分を工夫していかなきゃいけないところもあるなって。「&DNA」ツアー中に脱退の話を聞いて驚きはしましたけど、でも決まったことにいろいろ言ったって仕方ないし、このツアーはしっかりやって次のことを考えなきゃなって思いましたね。

――サポートドラマーを迎えて 4人で作るということは、どうでしたか?

成田:デモから曲を完成させていく工程だったり、レコーディングの進め方だったり、違うことだらけでしたね。今回はサポートドラマーの方に、僕ら4人が提示するアイディアを消化してもらって、それを演奏や音で還元していくことなので、逆に4人のエゴがすごく強く出たんじゃないかなって。その分、4人それぞれがより責任を感じてやっていたと思います。

――第3者が入ったことで、一歩離れて客観的に見れたっていうこともありますか?

成田:僕は結構そういうことが多かったんじゃかなって思いますね。出来上がった曲たちを一つのアルバムとしてまとめて聴かせるために、いつもだったら目の前のバンドサウンドに対して考えているだけだったんです。でも今回はすごく多角的に考えるようにしていました。

――新たな機材の導入もありましたよね?

大胡田:ふふふ。成田さん、いろいろと揃えてたなぁ(笑)。

成田:試行錯誤しながら、いろいろと揃えましたね。打ち込みって、パソコン一つで完成させることもできる。でもバンドサウンドって楽器による生の音で作っていくものだから、ドラムの音に関してもなるべくリアルタイムで音が変化していくような生々しさを出していきたかったんです。音源モジュールという、ハードウエアの中に音源がいっぱい詰まっている素材でドラムを組み立てたりもしました。それをレコーディングでギターやベースを録りながら、同時進行でドラムの音を調節していきましたね。

――生の音にこだわりがあるのは、バンドだからという意識からですか?

成田:そうですね。ただ今の4人の形態を、しっかりとしたバンドだと言えるかっていうと、それも微妙ですが。だから、どういうふうに立ち振る舞っていくのか迷いましたけど、僕らのスタートはバンドなので。

――これが4人のパスピエにとってのバンドサウンドだって言えるものが出来上がりましたか?

成田:今回において、バンドサウンドであるかないかの境目は、グラデーションかなと思いますね。今までのパスピエを否定するわけじゃなくて、僕らがやってきた生っぽさを含んだバンド感を引き継いだ上で、新しいものを作りたかったんです。もちろん今までバンドでやってきたから生まれているサウンドだとは思いますけど、新しい形態になったからこそ出来た曲やアレンジがたくさんあります。4人の時間が長ければ長くなっていくほど、4人で作るサウンドの割合が増えていくだろうし、そうなっていった時にパスピエが新しい別のパスピエになっていくのかなって思いますね。


「人間的な部分も、これから歌詞で歌っていけたら」


――4人で作るという大きな変化によって、歌詞への影響はありましたか?

大胡田:いつもはスタジオでみんなとやってたんですけど、今回はそういうわけにもいかなかったんで、私はメンバーがメールでやりとりをしているのを見てたんです。最初の頃は“これでいつもみたいに完成するのかな?”って思ったんですけど、だんだんみんなが掴めてくるのが見えてきて、こうやって変わっていくんだなって感じました。歌詞は完成した音を聴いて書いたんですけど、いつものように突発的にパっと出た言葉を書くのではなくて、歌詞について考える時間が今まで以上にあった気がしますね。自分が何を伝えたくて書くのかを考えながら、はっきりメッセージを言うんじゃなくて、聴いて感じてもらうことを大事にしたいなって書きました。

――メロディーに合わせた語感を大事にしているイメージが強かったので、「音の鳴る方へ」「正しいままではいられない」「あかつき」に関しては言葉の一つ一つの重みが違うなと感じました。

大胡田:そうですね。一人減った分、パスピエを強くしたいわけじゃないんだけど、“一人減った”みたいな感じにはしたくなくて。ちゃんと実体のあるものにしていきたいなって思ってます。4人の一枚目という意味を強く持っているのは「音の鳴る方へ」と「正しいままではいられない」で、バンドのこれからや“私たちこうしてやっていきます”という部分が、色濃く出た曲なんじゃないかなって思いますね。

――この2曲の歌詞は大胡田さんと成田さんの合作ですよね。どのように進めていったんですか?

成田:僕が入れたいフレーズを提案したりしていましたね。パスピエの世界観を出していくっていうことじゃなくて、転換期を迎えて“こうしていくよ”だったり、“こういうことも考えているよ”っていう要素も伝えていかなきゃなって思ったんです。だから空想的な部分よりも、より実の部分を出せていけるように考えましたね。

大胡田:人間的な部分っていうのかな……私たちパスピエのことも、これから歌詞で歌っていけたらいいなって思ってます。


「4人のパスピエが作ったということよりも、まずこの 7 曲を聴いてほしい」


――今作において、「(dis)communication」が衝撃的でした。4人のパスピエとして、新たな解釈を提示されたように思えたんです。

成田:せっかくだから、4人だけの作品も作ろうってなった時に、必然的に打ち込みでやっていくことで決めて取り掛かった曲なんです。新しいことを提示していくことは、今までのパスピエを知っている人にとって、ある種の違和感を与えかねないこともやっていくことが必要だと思ったんですよね。「(dis)communication」は、サウンドプロデュース的な部分で新しいものをどういう雰囲気で出していこうかとトライしていった結果、こうなりました。もちろん曲や歌詞を書いているのは僕らだから、曲の根本的な部分でパスピエらしさってものは残っているかもしれないですけど。

――今までの方法論とは違うものをやろうとすると、インプットすることが多かったですよね?

成田:作っていく過程ではいろんなトラックメーカーの作品を聞いて、ヒントやアイディアを得て作っていきましたね。歌にオートチューンをかけたり、今までだったら絶対使ってないような音使いだったりとか、制限なくやってみようとしたので、大変は大変ですよ。やっぱり感覚じゃなくて、頭を使ってやる割合が増えていくことだと思いましたね。でも苦労というよりかは、一つの経験かなって。僕らの気概を受け取ってほしいですね。またこれを経てどうなっていくのか、どういう作品が生まれていくのかも楽しみです。

――今回のジャケットも印象的で、初めの頃のパスピエを想い起こさせるような絵ですよね。

大胡田:私たち4人の始まりでもあったので、初期にやっていた線画に一回戻って、白地に黒っていうシンプルな形で描き始めようかなと思いまして。“ここからまた始まります”っていうのを、私は絵で証明しました。これからまた色が付いていったり、形が変わったりするかもしれないですけど。

――今のお話にも出ましたが、今作はリスタートという意味で届けていきたいと考えていますか?

成田:音楽をやっている以上、聴いてもらわないと曲が消化されていかないと思うので、まずは聴いてもらいたいです。ただ僕らは8年間やっているので、その8年間の中で新たなパスピエであると捉えてもらってもいいです。でも、今作は4人のパスピエが作ったということよりも、まずこの7曲を聴いてほしい想いが強いので、デビュー当時の感覚に近いのかもしれません。フラットな状態で聴いてもらうことがこの場において一番いいのかなって。もちろんそれを強要するわけじゃないですけど、そういうふうに聴いてもらうことで、今後のパスピエを違った感覚で楽しめるんじゃないかなって思いますね。


「最初と最新を披露する、音で対話できる環境づくりを」


――まもなくツアーが始まりますが、趣のある3会場でのライブが決まっています。

成田:新しいパスピエで始動していくこともあって、近い距離でお客さんと音で対話できる環境づくりをしたいと思っています。「OTONARIさん」の世界観も含めてパスピエは純粋なロックバンドではないと思うので、いろんな要素やエッセンスが付加された面白いハコにしようって、この3会場になりました。今回は場所が絞られてますけど、その分僕らがスタートしていく意味合いで音を共有できたらなと思いますね。

――今回は2ndアルバム「ONOMIMONO」が5周年ということで、この曲たちも披露されますね。

成田:サポートドラマーを迎えたりして、デビュー当時に作った曲を練り直すことは新鮮ですね。また逆に曲の本質というか、この曲はこういうふうに聴かせるべきだなっていうのを新たに発見することもあって、そこはすごく面白いです。

大胡田:どうなっちゃいますかね? 最初と最新ですからね、自分たちも楽しいライブになると思います。リハーサルをしているとデビュー当時を思い出しますけど、当時と同じ気持ちで歌うことにはならなくて。“今だからこう歌う”という、当時とは違うアラサーの「ONOMIMONO」が聴ける(笑)。大人になってるかな?どうだろう? ただ最近は歌詞や音に合わせた歌い方で幅を広げていきたい気持ちがあるので、「ONOMIMONO」の曲にも関係してくるんじゃないかなって思うんですよね。


インタビュー・文/笠原幸乃


MIni Album 「OTONARIさん」 Now on sale


パスピエ Official Site http://passepied.info/
記事の一覧へ
ライブ情報

パスピエ
パスピエ TOUR 2018 “ カムフラージュ “

2018/07/14(土)他
クラブクアトロ
関連情報