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「今の時代はカウンターだらけになっているからこそ、ストレートが逆にカウンターになる」日本の音楽シーンを刺激してくれるヒップホップ・アーティスト、電波少女(でんぱがーる)にインタビュー!

2017/11/06 19:00

「今の時代はカウンターだらけになっているからこそ、

ストレートが逆にカウンターになる」



2009年にインターネット動画サイトにヒップホップ楽曲を投稿したことをきっかけに、注目を浴びるようになったヒップホップ・アーティスト電波少女(でんぱがーる)。現在はMCのハシシとパフォーマンス&ボタンを押す係担当nicecreamの2名で活動をしている。彼らはネットでの活動だけでなく、フィジカルでの音源リリースやライブもしており、その枠に縛られない自由な活動も大きな魅力の1つだ。メジャーデビュー前の2016年には全国をヒッチハイクで移動し、47都道府県をストリートライブをしてまわる武者修行を敢行! LINE LIVEでその様子を生中継すると、ライブランキング1位を獲得しLINE LIVE OF THE YEARにもノミネートされた。彼らがメジャーデビューアルバムとなる「HEALTH」をリリースした。今後、日本の音楽シーンを刺激してくれる電波少女にアーティスト・スタイルの成り立ちから、以前主宰していたレーベルについて、そして今作の内容についてハシシに語ってもらった。



――電波少女はヒップホップ・アーティストでありながら、初期の活動場所はネットが中心でした。ハシシさんは、もともとネットを中心にヒップホップをする構想があったんですか? 一見、すごく離れているフィールドのものを組み合わせていると思います。

一時期ヒップホップのフロウが気持ち悪ければ気持ち悪いほど良いみたいな時代がありまして、その時期にアニメが好きなB-BOYがイケてるみたいな感じだったんです。今じゃ考えられないですけど(笑)。で、僕もその時期にそれにハマってハイブリットだなと思って、やりはじめたのがきっかけですね。なので、ヒップホップをネットでやるというビジョンがあった訳ではないです。それにヒップホップはバンドと違って家で作ったものをそのまま披露できることが魅力だったのと、ネットは自分が所属しているコミュニティーに曲を投稿すれば、たくさんの人が聴いてくれるので便利だなと思ってはじめました。

――初めて人前でパフォーマンスをしたのもラップだったんですか?

そうですね。バンドなどではなく、ラップやDJがはじめてでした。

――電波少女は47都道府県をヒッチハイクでまわるストリートライブをして、その様子をLINE LIVEで放送したりと、ネットとフィジカルを駆使した活動が非常にうまいですよね。

最近はネットの活動があまりできていないので、ネットだからできる取り組みは初期よりだいぶ減ってきていて、CDをリリースしたり、ライブをしたりするフィジカルな活動が目立ってきてはいます。最初はネットラップしかしてなかったのでライブも一切していなかったですし、そう考えると結構ネットとフィジカルのバランスは逆転してきていますね。

――電波少女は以前、自主レーベル「idler Records」を設立して、同じネットラップシーンのアーティストを集めて活動をしていました。現在、「idler Records」は実質ストップしていますが、シーンを作っていくようなこうした活動はとても意味があったと思います。

一組でシーンを打破するのは難しいので、まとまった力というか、コイツらの周りのアーティストは皆ヤバいみたいな見え方になればいいなと。ネットラップシーンは現場から敬遠されがちで、“どうせヲタクでしょ?気持ち悪い”とかヒップホップのマッチョイズムな文化と相反していたので、ネットラップでカッコイイ音楽を作っている人たちとスクラムを組んで、そのシーンがより良く見えるようにと思っていました。囲いグセというか(笑)。

――いやいや(笑)。でも、アーティスト同士がしっかり意思をもって発信していくことはとても大事だと思います。リスナーもアーティストを点で捉えるのではなく、レーベルというチーム感があることで線で捉えるようになるので。

idlerで一番出世しているのはぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)なんですけど、今はもうidler Recordsはないですけど、それぞれが大きくなって活躍していたり、もっと大きなチームを作っていたりするので、お客さんもそうした動きは観ていて楽しいのかなと。idler Recordsの歴史を知っている人なら、より楽しめるような状況だとは思います。それに一組だと強烈な個性がないとキャラが立たなくても、いくつかの比較対象がいると、対してかっこよくないヤツでもその中だとイケメンに見えたりするんですよね(笑)。そういう意味でもチーム感がよりでますし、メンタルの部分でも普通に励みになるのも大きかったです。

――メジャーファーストアルバム「HEALTH」をリリースしましたが、ご自身ではどんなアルバムになっていると思いますか?

すごく練って作った曲もあるし、勢いで作らざるおえなくなった曲もあって、製作の最後の方は感覚が訳分かんなくなっていましたね(笑)。果たして良いアルバムなのかどうかの判断ができなくなっていたというか。でも、実際完成したモノを聞いたら良いなと思えて、作品をだすごとに電波少女の信者の中で賛否があるんですよ。今回の方がいいとか、昔の方がいいとか、わりと今回はそうしたリスナーの人たちが素直に褒めていたんです。どうしても初期の1stアルバムと比較されがちなんですけど、それよりも好きと言ってくれる方もいたので嬉しかったですね。リード曲だけを聴いた人は「今回、電波少女大丈夫?」と心配している人もいたんですけど、アルバム全体を通しての意図を伝えることができたので、ちゃんと聴いてくれているんだなと実感できました。「FOOTPRINTZ」をシングルでだした時もザワザワしていたんですけど、自分が結構飽き性なのでやりたいことが変わるんですよね。常に選択肢がある中で活動したいと思っているので、その幅広さを提示しつつ、自分たちの核をしっかりと出せたかなと思います。

――じゃあ、リリース後の精神状態としては今は良い感じなんですね。

けど、自分は叩かれた方が良い曲書けるんで(笑)。お客さんの反応が良かった分、自分で課題点をみつけて、次に繋げていきます。

――電波少女の大きな魅力として、歌詞のリアルさがあると思います。歌詞を読むとハシシさんの感情が手にとるように分かりますし、そのパンチラインに感情移入できるんじゃないのかなと。

歌詞を書く引き出しが少ないので、自分の中の感情がでがちで、それがネガティブな気持ちなんです。電波少女の根本的なテーマにネガティブや反骨精神、諦めといったモノがあるんですけど、そうした負の要素が多くて。それでミニアルバム「パラノイア」をリリースした後に、結局歌っている内容は一緒だなと気づいたんです。その頃はリスナーの気持ちを汲み取りすぎてて、自分がどんな歌詞を書けばいいのか分からなくなっている時期で。例えばファンタジーな曲や元気な曲、背中を押すような曲など、そうした色がハッキリ分かれていた方がいいんじゃないかと思ったんです。だけど「パラノイア」を作っていく中で、1アーティストで喜怒哀楽すべての感情を補う必要はないよなと気づいて。だったら電波少女がネガティブな部分を担ってるなら、楽しい気持ちになりたい時は他のアーティストの曲を聴けばいいしと思って吹っきれたんです。それで全曲“被害妄想”をテーマにミニアルバムを作って、ただそうしたネガティブ一色の部分に対してああだこうだと言っている人はいなくて。そこから自分のネガティブな歌詞に自信をもてるようになりました。

――そこがブレなかったからこそ、今の電波少女があるんでしょうね。今作でもハシシさんの歌詞はバージョンアップしていると感じましたし、電波少女という存在自体が今の音楽シーンにとってはカウンターというか、すごく貴重な存在だと感じました。

今作も自分の中にあるものでしか歌詞が書けないのは共通なんですけど、ネガティブ+ハッピーだったり、ネガティブ+ラブソングだったりと、進化した電波少女を表現できたかなと思っています。カウンターでやろうという気持ちも前はあったんですけど、今の時代って音楽だけじゃなくてカウンターだらけになっていると思ってて。逆にストレートなモノをだした方がカウンターになるんじゃないかと思う瞬間がすごくたくさんあるんです。だから自分が聴く曲はわりと正攻法な人たちが多くて、電波少女はひねくれさもあるんですけど昔と比べるとどんどんストレートになっていっていますね。だけど真っ直ぐ投げながらも手元でブレる玉を投げたい気持ちはありますね(笑)。これからも電波少女らしさを突き詰めながら、自分たちとお客さんが楽しめる音楽をしていきたいですね。


インタビュー・文:菊池嘉人


Major 1st Album 「HEALTH」 Now on sale


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電波少女 Official Site http://denpagirl.com/
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