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今年の新作は、トロンプルイユ(=だまし絵)をめぐる「だまし絵コメディ」!ヨーロッパ企画にインタビュー!

2017/10/24 15:30

今年の新作は、トロンプルイユ(=だまし絵)をめぐる「だまし絵コメディ」!



テレビゲームを思わせるトリッキーな地形や、SF・ファンタジーめいた世界観に日常会話をつむぐ「群像コメディ」を得意とするヨーロッパ企画。
結成以来、創作のベースを京都に置きながら、さまざまな形で作品を発信し続け、近年では「企画性コメディ」の名のもとに、特殊な劇構造や大がかりな仕掛け、誰もやらなさそうな思いつきで「迷路コメディ」「ゲートコメディ」などをテーマにした作品を発表。
17年には上田誠が「第61回岸田國士戯曲賞を受賞し、ますます注目を集めるヨーロッパ企画の第36回公演は「出てこようとしているトロンプルイユ」。


上田誠(作・演出):今回は“だまし絵コメディ”です。トロンプルイユって、だまし絵のことなんです。前公演「来てけつかるべき新世界が、大阪を舞台に色彩どぎつく、かつSFチックだったので、今回はシック、アナログな感じで行こうと。だからチラシにしても、前回は串カツ屋にみんなが集まっているにぎやかなチラシだったのが、今回は淋し気で、だまし絵一点のトーン。バランス的にそういう気分で。いつもいくつか先の公演がなんとなく頭の中にあって、次はこれやるかな?だとしたらその次はこれだなっていうのはあるんですね。それで今回は1930年代のパリを舞台にした芸術家の話なわけです。

――では、おひとりずつ役柄と、個人的に感じる見どころをお願いします。

永野宗典:今回の舞台は、亡くなった画家の部屋を片付けるという設定なんですけど、僕はその死んだ、だまし絵画家なんです。だからいつもと違って、群像でワイワイというポジションじゃなく、今までやったことのない立ち回りなんです。幽霊の役は経験したことがあるんですけど、新鮮にやらせてもらってますね。ただ、僕の役に関してはちっともコメディをやっている感がない(笑)。でもそれも含めて役者として楽しい役です。後半になったらにぎやかなシーンもありますし、ずっとこの画家のことが舞台上で他の役者の会話に出て来たりするので、感情移入しやすくて、面白いポジション。いい役をいただきました。不思議な劇の仕掛けがあるので、入り込んだり、困惑したりすると思います。そこを楽しみにしてほしいですね。

石田剛太:僕は死んだ画家と同じアトリエ長屋に住んでいて、大家に言われて部屋の掃除に来た若い画家です。その時代はシュルレアリスム(1924年の「シュルレアリスム宣言」から始まる芸術運動・超現実主義)に傾倒する画家が多かったんですが、その内のひとりですね。死んだ画家がいろんな手法を試して面白い絵を描き遺していったので、たくさん絵が登場するんです。その絵にもぜひ注目してほしいですね。

諏訪雅:僕も石田くんと同じ、その当時いた若手の芸術家で群像のひとりです。売れていなくて、芸術論を語るっていう役ですね。見どころはやっぱりちょっとパリに行ったようなトリップ感。そして終盤に仕掛けがあります。

中川晴樹:僕は芸術にはまったく興味がないアトリエ長屋の大家です。家賃を払っていない画家たちに、死んだ画家の部屋を片付けさせようとするんですね。今回はヨーロッパ企画っぽいというか、ヨーロッパ企画が得意な舞台だなと。これまで見てきた人には特に楽しい作品になったと思います。

――客演は、「ビルのゲーツ」「来てけつかるべき新世界に続いての出演となる金丸慎太郎、ヨーロッパ企画の公演は初となる川面千晶、ヨーロッパ企画作品へはイエティ「コテンパン・ラリー2」に続いての出演となる木下出、「建てましにつぐ建てましポルカ以来2度目となる菅原永二ら。

上田:川面さんのことは噂で聞いていたんです。僕はそもそも東京でやっている芝居をそんなに見れないので、川面さんの芝居を見てすごいな!と声をかけた…という流れではないんですけど、直接お会いしたら面白い方だったので。実際すごい人でした。事前に見ておかなくて良かったと思うくらい。きっといろんな役が出来る人だから演じているすごい姿を先に見てしまったら、声をかけるのを怖気づいていたかもしれない。上手な方は他にもいらっしゃるけど、上手でコメディーが出来る女優さんって少ないと僕は思うんですよね。

石田:リアクションがすごく面白いんですよ。僕は諏訪さん演出の映像作品で共演したことがあるんです。

諏訪:むちゃくちゃうまかったですね。

永野:最高!って感じです。

石田:ヨーロッパ企画の公演としては今回が初ですけど、初めてとは思えないほど、ぴったりくるというか、シュッとするというか。かつ自分の表現をしているんです。

上田:木下さんも僕は初めてご一緒するんですけど、ヨーロッパ企画イエティの公演に出てもらったりしているんです。元々オペラをされていた方で、でも経歴のわりに気軽にお願いできる感じの人(笑)。川面さんや、菅原さんとはまったく違う道を歩んでこられた面白さがあるんです。

――下手に近づくと地獄の窯が開く、とおっしゃっていたアートの世界はいかがでしたか。

上田:不遇のトロンプルイユ画家の話ですから、舞台上に出てくるアートは名画というわけではないですけど、たとえば今、芸人界ってすごいじゃないですか。海外で活躍している人がいたり、文学賞を獲る人がいる。演劇界は演劇界ですごい人がいて、というようにいろんな世界にすごい人たちがいる。その中でアートは紐解いて来なかった世界なんですね。窯を開けたら、ああやっぱりすごい人たちがいる、と思いましたね。

――アートに対して個人的な想いはありますか?

永野:僕は絵を描くのが好きだったので、芸術に対する憧れみたいなものはありましたね。美術館に行くのも好きだから、確かに“地獄の窯”感はわかるというか。一歩深く入ったらとても自分では手に負えない世界というのは感じていたので、今までどこか一歩引いていたところがありますね。今もあるかな。ただ今回はトロンプルイユっていうところで親近感みたいな、近づきやすさ、とっつきやすさはあったので、あんまり“芸術や!”っていう風には、ビビらずに入れましたけど。

石田:僕は高校の卒業旅行でパリに行ったことがあって、その時ルーブル美術館にも寄ったんですね。教科書に載っている有名な絵を見たんですけど、思っていたより小さかった名画はそれでもすごくて、本物を生で見るっていいなと感じたんですけど、かといってそれから絵を見るようになったわけでもなく。画家の役をやっている今こそもう一度パリに行ってじっくり絵を見たいと思いますね。

諏訪:僕は絵がヘタだし苦手だし興味もあんまりない、そんな感じだったんですけど、今回、勉強したり流れを見ているうちに親近感が湧きましたね。1930年代の絵画の世界でも、これが流行っているとか、この劇団がこういうことをやっているとか、いろんな派閥があったりする。すごく似ているなと共感して、美術や芸術に関心が持てるようになりました。

中川:僕は絵が苦手で、美術の授業では提出物も出さなくて成績も2だったんです。展覧会もあんまり見に行くこともない。浮世絵とか、葛飾北斎は好きだったんですけど、それも自分から出向いて見に行くとかはなかったですね。でも北斎が一日三回引っ越したとか、そういうエピソードは好きなんです。歴史が好きだから、そういうことは知っていて。だから今回この舞台を作るにあたって、いろいろ勉強したんですが、天才ってどこか破綻しているなとか、作品というより作っている人間に興味が湧くんです。人を面白いと思うんですね。

上田:この舞台に出てくる絵画はもちろん面白いんですけど、絵画の面白さそのものを感じるには、美術館に行くのが一番いい。客席から遠い舞台にある作品だけを見て面白がれるものではないので。だからやっぱりあくまでも「絵画と絡む劇」を愉しんでもらいたいです。中川さんが言ったように、劇場で絵画を扱うには、たとえば画家のエピソードを語りながら、みたいな見せ方の方が面白いんじゃないかと思うんですね。トロンプルイユみたいなものなら実空間と絡んで、役者がそれにだまされるリアクションを含めて面白く出来るから、勝負のしどころがあるんじゃないかという判断はあります。アートの世界は深くて面白いけど、舞台でその面白さがまんま出せるかは別なので、見せ方は考えましたね。

――ヨーロッパ企画の舞台は毎回トリッキーなので、どこにどんな仕掛けがあるのだろうと、開演前から舞台をすみずみまで眺めるのですが、それでも毎回びっくりさせられます。

上田:僕らが“だまし絵コメディーやります”と言うと、“じゃあどうだましてくれるんだ”となりますよね。公演のたびにハードルは上がるかもしれないですけど、最近はそのことにおびえるというのは無いですね。想像の斜め上を行くようなものになってきていると思うので、そこは期待してもらってもいいです。いかにお客さんが想像して来たとしても、僕ほどには考えてないだろうし。とはいえ本気で二か月くらい考えられたら、さすがにわからないですけど。

――あれこれ想像しても、いい意味で裏切られるなら、まっさらな気持ちで見るのが一番楽しめるのかもしれないですね。

上田:ほんと、お客さんはある程度のところまでは読んでこられるので、その感じがイヤですね(笑)。小ワザみたいなものを繰り出していった時に、ハイハイ、まず小ワザをねっていう空気が。それより小ワザに全力で笑ってくれたら、次のやつも用意しているぞ!っていう流れにいっそう面白く乗っていけると思うんですけど、ふんふんって感じを作られるとね。まあ、化かし合いみたいになりすぎるのもなんなので、目先を変えたりしているんですけど、どうか素直に見ていただけたら。

――名古屋公演は11/23(木・祝) 愛知県産業労働センター(ウインクあいち) 大ホールにて。

永野:パリという設定で美術史の勉強になる劇だなとも思うんです。会話を楽しみながら進んでいき、中盤からは、見ている側もやっている側も戸惑う展開が待っている…って言うとまたハードルを上げてしまいますが、そこを大いに楽しんでいただきたい劇です。

石田:だまし絵がたくさん出てきて、どんどんどんどん楽しんでいくうちに、だまし絵を体感しているような、そんな感覚になると思うので、ぜひ味わいに来ていただければと思います。

諏訪:今回は前半は会話劇で、後半がスポーツと言われているんです。スポーツ選手として故障しないように、ツアーを乗り切りたいですね。そのために鍛えたわけではなく、この身体はまあ、趣味なんですけど。髪の色は役作りです。ぜひ見に来て下さい。

中川:今回、名古屋公演は祝日なので、ふだんなかなか来られない人もぜひ来ていただいて、満席になるといいなと思いますね。よろしくお願いします。

上田:前回の公演はバランスを考えながら、いい幕の内弁当になるように盛り付けていった気分があって。でもそういう最適化するような仕事って、コンピューターの方が将来得意になるって書きながら学んで、ちょっと自分の変なところを伸ばさなくちゃって感じたんですね。だから前回と違って今回はいびつな作品になっていると思うんです。稽古場でもこれ変な劇だなっていう感じがあったので、それだけで終わらず楽しめるものにしているんですけど、すごくいびつなデザインのものが出来上がった感じがすごくしているので、それをお客さんにもドキドキしてもらえたらと思いますね。

永野:そうそう、ほんと稽古初日からそういうのはありましたね。見ていて前のめりになりましたもん。なんやこれ、変なスイッチ入った!っていう。まだどんな役になるか決まっていない段階でもう劇が動き出す感じというか。

上田:そこはほんと未体験なところだと思うので、ぜひ奇妙な体験をしにいらしてください。でもコメディです、念のため。


インタビュー・文:早川矢寿子

ヨーロッパ企画 Official Site  http://www.europe-kikaku.com/
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