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「そばにいなくても何千、何万という人を支えることができる魔法、それが音楽の特権」3rd アルバム「fantasia」をリリースしたLAMP IN TERRENの中心人物である松本 大(Vocal & Guitar)にインタビュー

2017/06/20 14:30


「そばにいなくても何千、何万という人を支えることができる魔法、それが音楽の特権」


4ピースロックバンド・LAMP IN TERRENが、劇場2部「亜人-衝突-」主題歌「innocence」、映画「何者」劇中歌「pellucid」などのタイアップ曲が収録されている3rdアルバム「fantasia」をリリースした。このバンドの特筆すべき点は、バンドの中心人物である松本 大(Vocal & Guitar)の歌声とメロディー。そこには多くの人の心に響く力がある。「fantasia」はそれを証明した傑作アルバムであるのだが、このインタビューは「自分が音楽を続けていいのか分からなくなった」という松本の衝撃の告白からはじまった。なぜ、松本はそこまで苦悩したのだろうか。そして、どうやってその暗く長いトンネルを抜けたのだろうか。
松本の「そばにいなくても何千、何万という人を支えることができる魔法、それが音楽の特権」という発言にあるように、インタビューでは彼の音楽とリスナーへ対する真摯な思いが垣間見える瞬間が多々ある。彼の言葉に耳を傾けた上でLAMP IN TERRENの音楽を聴くと、その響き方がきっと変わってくるはずだ。



「取り繕って嘘をついても仕方がないから、正直に話そうと決めました」

――3rd アルバム「fantasia」はLAMP IN TERRENの強みである松本さんの歌声とメロディーの良さが最大限発揮された作品だと感じました。ご自身はこのアルバムをどのように捉えていますか?

「僕はこのアルバムを作っている時も、作り終わってからもずっと悩んでいました。アルバムの土台は作ったけれど、“自分たちだけにあるモノってなんだろう?”とか、“音楽をするのは自分じゃなくても良いんじゃないか?”と思うこともあって、中々難しかったですね。“自分にとって音楽とは一体何か?”、“歌いたいことが今はないな”、と。俺ごときに言えることなんてあるのかなって思っていました」

――まさかそんな苦悩にまみれながら「fantasia」が完成していた事にとても驚きました…。それはバンドがどうこうという事ではなく、自分が音楽をしていて良いのか? という根本的なところで葛藤があったんですか?

「そうですね。自分に対してものすごく自信がなかった時期だったので、“俺が音楽を続けていて良いのかな”と思ってました。何をどうしたらいいか分からないから曲は作ってたんですけど、なんだか冷めてくるというか。ライブをやっていてもバンドの中で自分が機能している感じがしなくて。それまではずっとバンドに対しても自分に対してもポジティブだったんですけど、当時はポジティブでいる事は無理でしたね」


「周りを気にして抑えていた栓を抜いたというか、鍵を開けてみたとか、そういう感覚にすごく近い」

――そこまで自分に対して何かが喪失してしまった状態だったとは…。先ほども言いましたが、今回のアルバムを聞いて改めて松本さんの歌声は稀少だと感じました。1st シングル「innocence / キャラバン」の時にもインタビューさせてもらいましたが、その時はバンドとしてもすごく良い状態だと伺っていたので、やはり驚きを隠せません。

「自分の今の気持ちを包み隠さず喋るとこうなるんです(笑)。やっぱり取り繕って嘘をついても仕方ないので。2ndアルバム『LIFE PROBE』までを作ったことで開けたいという思いが強くなって、その先の自分たちがどうあるべきかを模索していたら、こんな長く暗いトンネルに入ってしまっていて…。開けたいというのは、今作に向けた自分のあり方として“振り切ってみたい”というのがあったんです。あからさまに開けてみたら自分の中の闇の部分も光の部分も強調されるんじゃないかと。周りを気にして抑えていた栓を抜いたというか、鍵を開けてみたとか、そういう感覚にすごく近いです。リミッター解除というか。で、実は今はそういった状態にいます。つまり、この長く暗いトンネルを抜け出せていて。だからこれだけ暗いことも喋れているんです(笑)」

――それは良かった(笑)。本当に安心しました。このアルバムの中にそうした長く暗いトンネルを抜けるきっかけとなった曲はあるんですか?

「今は逆に覚醒に近いモードですし、前しか向いてないので安心してください。ちみなにそれを抜けるきっかけになった曲は、この中にはないです(笑)。今作が完成してから、ちょっとずつちょっとずつ抜けた感覚です」


「長く暗いトンネルは結果的に自分にとってすごく必要なことだった」

――今作1〜4曲目の「キャラバン」「地球儀」「涙星群の夜」「heartbeat」は、リスナーの背中を無理やり押すのではなく、曲を聴いた人を自然と前向きにさせるような暖かいメッセージのある楽曲が並んでいます。そういった意味では、松本さんが苦しんでいた事とは別ベクトルの性質のある作品なのかなと思いました。

「そうなんですよね。この作品の曲たちと僕の苦しみは別問題でもあるので、その苦しみをわざわざ話さなくても良かったのかなと最初は思っていました。ただあったことは事実だし、このアルバムに対して言えることはこれだけだなと気づいて。だからそこを隠しちゃうと話にならないので、ネガティブに聞こえるかもしれないけど話そうと。さっきも話した通り今はめちゃくちゃポジティブなので、結果的には僕にとってすごく必要なことだったと思います」

――では次作のイメージはなんとなく思い浮かんでいるんですか?

「やりたいことは見えているのでアルバムはできます、作れます」

――おお。それはすごいですね(笑)。

「今、自分の頭の中で鳴っている音はめちゃくちゃカッコイイので期待していてください(笑)」

――リリースをするとインタビューやラジオなど、自分の心情を言う機会が増えると思うのですが、これだけネガティブな過去を話し続けるのは辛くないですか?

「悔しい気持ちも半分ぐらいあるので、忘れないために刻んでいるような感じです(笑)。だからもっといけるだろって思うんですよね」


「世の中で難しいと言われれている計算式や化学を、生活と結びつけて分かりやすく面白い歌詞にしたい」

――「地球儀」と「涙星群の夜」はこのアルバムの核となる曲ですか?

「『涙星群の夜』は聴いてくれている人に向けて書いた鍵になる曲で、『地球儀』はバンドや人の内っかわを描いた、内向きな曲ですね。なので表裏一体感は僕の中であります。タイトルとなっている『fantasia』、“幻想曲”という意味ですけど、そうした部分を象徴する曲でもあると思っています」

――歌詞制作についてはどうでしたか?

「リスナーの皆がこの作品をどの場所で聴こうが良いと思ってるんですけど、中身が空っぽな歌詞だと何にもならないので、今作は1曲ずつ自分の中でテーマを決めました。この曲はなんの為に歌うとか、誰に歌うとか、そうした区切りをちゃんとつけたんです。これまではパッと浮かんだものをガッと書くやり方だったので、最近はそのやり方がちょっとずつ変わってきていますね。自分としてはこのアルバムを作ってもっとできると思ったので、これからのLAMP IN TERRENの大きなきっかけになりました」

――今回の「fantasia」というタイトルに1番近いという意味では、「不死身と七不思議」の歌詞はとても松本さんらしい視点で書かれた歌詞だなと思いました。

「絵本っぽい歌詞ですよね。最初はこうしたファンタンジー感強めの歌詞を書いているつもりはなかったんですけど、気づいたら勝手に手が動きはじめていてお話になっていました」

――この歌詞には自分たちが普段見ている視点を変えて、別の目線でみることの大切さが伝わってきます。

「この曲を書く上での着想は色々と探しましたね。“ガードレールは何の素材で出来ているんだろう?”とか、“誰が作ったんだろう?” “何のために作ったんだろう?”とか。“じゃあアスファルトは?” みたいなことから広げていきましたね、変な話ですけど(笑)」

――この歌詞を読んだ時は他のアーティストの歌詞の質感とは一線を画するものを感じました。

「本当ですか?それは嬉しいです。歌詞は特に面白い読み物でありたくて。世の中で難しいと言われれている計算式や化学を、生活と結びつけて分かりやすく面白い歌詞にするのが1番好きなので、そういう風にできたらいいなと思って作っています。なので言葉の意味をめっちゃ考えますよ」


「リアルにあった事を歌にする事で、音楽に吹き込まれる命がある」

――そうした1つ1つの松本さん独自の視点が、LAMP IN TERRENのオリジナル性にもつながっていると思います。

「全曲を通して言えるのは、鳴っているフレーズだったりシンセの音色1つにも絶対的な意味があるように使っているんです。アーティストとして音にもこだわりたいし、何より歌と言葉が負けちゃいけないと思っていたので、聞き続けると面白さのあるアルバムになったかなと」

――特に歌と言葉の強度が強い楽曲だと感じたのが、最後の「eve」でした。

「この曲はおもいっきり自分の私生活に関わってくることなので、歌にしていいのかな?って思うこともあったんですけど、結果的にはこの曲を皆が大切にしてくれているので分け合うという感覚ですかね。自分が体験したことを分かち合う感覚を信じて良かったなと思います。そうやってリアルにあった事を歌にすることで音楽に吹き込まれる命もあるだろうし、それは受けとってくれる人にもエネルギーが必要で。この曲を聴いて“良かったよ”と言葉をくれる人がいたので、ちゃんと届いているんだなと嬉しい気持ちになりましたね」


「アルバムを聴いてくれたその先で、皆がキラキラしてくれたらそれだけで良い、それだけしか望まない」

――最後に聞かせてほしいのが、松本さんの長く暗いトンネルを抜けられたのは何かきっかけがあったのかという事なんです。もしかしたら松本さんが音楽を辞めていた可能性もあった訳で…。

「きっかけは列伝ツアーですかね。あのツアーで他のバンドの姿をまざまざと見た時に、自分で蓋をしていた部分と向き合うきっかけになって。自分の過去の音楽を認めることができたり、過ぎ去った出来事をずっと持ち越してきていたんですがそれを乗り越えられたんです。それまでは自分の言ってきたことやスタイルはこうだから、自分はこうじゃなきゃいけないとか、未来の自分はこうならなきゃいけないと思っていて。それって自分の中であらかじめ地図を決めるというか、自分の中にある地図に沿う感じになって、結局驚きとかはないんですよね。自分の過去が尾をひく感じになっちゃって、過去にも未来にも振り切れない感覚がずっとあったので。それを全部認めることができるようになって、過去を認めて今を理解できるようになりました。だから今まで決めてきたレールを全部無視して、今行きたい方向だったり、今自分たちが輝ける方向に進んでいけるなと」

――そうした松本さんの思いは必ずリスナーにも伝わるでしょうね。リスナーに「fantasia」をどのように聴いてほしいですか?

「このアルバムを聴き終わったその後の人生で、嫌だなと思っていた事が楽しみになってくれたら1番いいなと思っていて。例えば学校、部活、会社、人間関係となんでも良いんですけど。楽しい時はもっと楽しくしてあげたいし、苦しい時は背中さすってあげたい。聴いてくれる人といつも一緒にいないからこそ、音楽で支えていきたいというか。音楽ってそういう事ができる魔法だと思うんですよね。そばにいなくても何千、何万という人を支えることができる魔法、それが音楽の特権なので。というか、その特権について考えたアルバムでした。アルバムを聴いてくれたその先で、皆がキラキラしてくれたらそれだけで良いです。それだけしか望まないです」

――何度も言いますが、その言葉を聴いて本当に安心しました。松本さんは音楽を作るべき人だし、歌うべき人なのでこれからも松本さんが作る音楽を聴けることが楽しみです。

「だから余計なことを考えずに、僕はただただ良い音楽を作ろうと思っています。今は調子良いです(笑)」


インタビュー・文:菊池嘉人

3rd Album 「fantasia」 Now on sale


LAMP IN TERREN Official Site http://www.lampinterren.com/

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LAMP IN TERREN
LAMP IN TERREN ワンマンツアー2018 「MARCH」

2018/04/14(土)
RADHALL
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